湯船のようなまち
秋田県鹿角市の大湯というところへ行ってきました。名前のとおり800年の歴史ある温泉の地です。共同湯に行くと、入り方から涼み方まで、地元の人が親切に教えてくれます。
湯上りにまちをぶらつくと、おじさんがかわいがっている軍鶏を見せてくれたり、ご夫婦が庭に咲かせたバラを案内してくれたり、お土産に1本くれたり。
心温もる、大きな湯船のようなまち、という印象でした。
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鹿角市(かづの)の中心、花輪から車で30分くらい北へ、十和田湖方面へ行ったところにある大湯温泉。
温泉場という風情や温泉街という賑わいはあまりありません。むしろ普通の田園風景の中に、温泉宿がぽつぽつとあるのどかな温泉地です。
いくつかある共同湯の中のひとつ「荒瀬の湯」に行ってみました。大湯川のほとりにあるジモティー向けのお湯。
残念ながら、川の流れはコンクリートで隠れて見えませんが、とにかく入って見ることにしました。180円という安さがうれしいのですが、うわさではとにかく“熱い”らしい。
中の様子は写真に撮れないので、この絵で・・。畳数枚くらいの湯船、その周りが洗い場のいわゆるよくある共同湯です。
おそるおそる入ると、既に中は熱気。もちろんカランなどからではなく湯船からお湯を汲むのですが、ケロリンの黄色い桶を湯船に入れたとたん、この熱さはただ事ではない!と手が気づきました。
ご一緒の、地元のおばちゃん、おばあちゃんが、うれしそうに笑います。「なれちゃえば、平気」とおっしゃいますが・・。隣では、小さな子供が平気な顔して、この湯をかぶっています。
勇気ある仕事仲間は、先にザブン。熱さで身体が硬直しています。続いて私も、片足を。入れては出しを繰り返し、ようやく身体を沈めました。でも少し動けば熱い、熱い。
「湯船の底に敷いてある石の間から、源泉が湧いて出ているの」「冬はぬるくなるの。雪解けしてくると、お湯の量が多くなってねまた熱くなる」「この湯に入れば、アセモがなおるよ」「肌にいい、湯上りがさらっとしてるよ」
おばさんたちは自分たちのお湯を、解説し、かつ自慢します。が、こちらはただ熱い。熱い。これは相当のぼせたな、と思ったのでしょう。「足を水で冷やしてから出たらのぼせないよ」とアドバイスもいただきました。
脱衣所に移ってもしばらく汗は止まりません。玄関で「窓を開けて風入れて、休憩していくといいよ」と、今度はおじさんまでがアドバイス。
懐かしいハエたたきや団扇が吊るされた、こざっぱりした畳で休ませていただきました。
何度位あるのでしょう?源泉温度は50度とありますが、「ま、45、46度くらいかね。49度でも入る人いるよ」きゃあ~~~~。
「まんず、おやすみなさい」と皆さんご挨拶して出て行かれました。
でも本当に、少し落ち着くと肌はさらっとさわやかです。ホテルで借りた黄色い自転車に乗って、湯上りの帰り道が気持ちいいいこと。
あ??「比内鳥あります」と書かれた看板の向かいのうちで、おじさんがニワトリを抱いています。「ニワトリをつぶすのかな?」とビクビクしたら、軍鶏でした。
おじさんは飼っている闘鶏用の軍鶏の頭の羽を、ていねいにカットしているのでした。“つぶす”どころかペットのお手入れ中でした。
この軍鶏は優秀で、大会で優勝。おじさんは車庫に置いてある、賞品の洗濯機をみせてくれました。
写真の左のダンボールが使わないまま置いてある賞品、右の箱は卵のふか機だそうです。いろいろお話してくれるのですが、鹿角弁がわからず残念。
さて、続いてチリリンと自転車を進めると、バラがたくさん咲いているお家を発見、ちょうどご夫婦が夕方の水やり中です。
どれもこれも美しいバラが多品種コレクションされ、ちょっとしたバラ公園のよう。香りに包まれて休めるベンチもありました。
あんまり見とれていると、「一本どうぞ!」ええええ?感激です。変わった絞り模様のバラをいただきました。
ホテルの部屋に活けると、バラが甘く香ります。熱いお湯でほてった身体に、香りが染みていく感じ。
ベッドにひっくり返ると、共同湯でのおばちゃんたちの会話、
軍鶏のおじさんの鹿角弁が、みんなの笑顔とともによみがえります。
なんて人なつこい土地、なんてあったかな土地なのでしょう。
熱すぎるお湯は少々苦手ですが、この温かな大湯にはまた浸かりたくなりました。
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