智頭で杉玉作り

ゆとりある記

杉玉、そう、新酒ができたとき酒屋にぶら下がる杉の葉でできた球形の吊るしもの。鳥取県智頭町、旧街道の道沿いの家々には、その杉玉がぶら下がります。

智頭は杉の産地、その象徴なのでしょう。杉玉を作る道場まであります。ここで杉玉作りの体験をしました。緑の葉をぎっしり詰める力技。完成なった杉玉は、今、東京・新宿の事務所で智頭の香りを放っています。

「杉玉道場」の藤井裕高先生にご指導いただきました。作業は簡単といえば簡単、要は杉の葉を針金の間に詰めるだけなのですが、これがなかなかの作業でした。

餅網を球形にしたようなこぶし大のもの、これが芯になります。この網の目に押し込めるだけの杉の葉を、パンパンにギュウギュウに入れるわけです。

‘ナンチャッテ杉玉’なら、杉の枝を束ねて、ただ、球状にするだけでいいのですが、本格的なものとなるとやはりそれなりに、です。

「わ~、杉のいい香り。森林浴しながら作業するんですね」なんて最初はご機嫌だった私ですが、だんだん寡黙になります。職人技にはまる、というか没頭するというか。

詰め込む量が少なくてゆるゆるだと葉が抜けてきます。したがって、針金が切れないかしら、と思うほど詰め込みます。

押し込む道具は杉の枝、このヘラのような棒のようなものをテコのように使ってギュウギュウと。ギュウギュウと。写真の私の太い腕をもってしても、力がいる作業です。

葉は、先生が手際よく10センチほどの長さのものを枝からむしり、細い糸で数本ずつ束ねてくれます。この手助けがなかったら、押し込む作業は永遠に続く感じ。

それでも1時間ほどやると、弟子はくたびれてきて電車の時間も気になりギブアップ。ああ、情けない。

結局、先生に「あとはよろしく」と頼んで、スタコラと帰ってきたのでした。本当は自分で1日がかりでゆっくり作るべきものですね。

数日後、荷物が届きました。大きなまん丸は杉玉、小さな丸は先生がおまけに入れてくださった鳥取の梨でした。

荷造りクッション代わりに、杉玉を丸くするときに出た葉くずがありました。葉くずは早速、トイレの芳香剤代わりに置きます。

まあ、見事に杉玉は完成されていました。四方八方からギュウギュウに詰めた後、美しいまん丸、球にカットされています。巨大なマリモにもみえます。さすが!

私のNPOの事務所、筑紫哲也さんの大きな写真の横につるしました。まあるい緑の玉がぶら下がっただけで、事務所の雰囲気が和みました。筑紫さんも笑っているみたい。

風が入ると、杉玉が香りました。山のまち智頭町と共に暮らす、実感です。