智頭で雑巾がけ

ゆとりある記

鳥取県智頭町、人口9000人弱、93%が森林。いずこも同じで子供が減り、来春5つの小学校がなくなります。そのひとつ山形小学校に行きました。

驚いたのは85mの廊下がピカピカ。山奥のもう閉まりゆく学校の廊下を、毎日27人の生徒がぬか雑巾で磨いているのだそうです。

東京ものの胸はキュンとします。都会人は、ここで「人生雑巾がけから始める」体験学習をすべきだと思いました。

木の階段、大宴会ができそうな畳敷きの教室、昔の空気がそのまま残っているような木造校舎は国の有形文化財。古いガラスのはまった窓からの柔らかい陽に、廊下が光ります。

先生が説明してくれます。「27人の生徒が、1階と2階の廊下を半分ずつ、1人が往復2回ずつ毎日拭いて磨いています。学期ごとに、子供たちが家から持ってくるんですよ」
ぬかが詰まったこの木綿の袋状の雑巾が廊下を上品に光らせているのです。

そういえば私も小さい頃、こういう廊下を雑巾がけしたっけ。古布を縫った雑巾は使っているうちに擦り切れて、穴が開いてぼろぼろのワカメみたいになって、それでも使って。

競争も。短いスカートで、パンツが丸見えでも平気で「ヨーイドン!」。水を含ませてゆるく絞った雑巾だと、スピードが出たものです。

いたずらな男の子が立たされたのも、こんな廊下でした。運動場も裸足でかけっこしたなあ。運動会には足袋で走ったこともあったっけ。階段の手すりにまたがってすべり降りておこられたなあ・・。

山形小学校、昔は子供がたくさんいたのでしょう。空き教室がいくつも、ガランとしています。教壇のある黒板、小さな机とイス。ここに留まって、また学びなおしたくなりました。

古い校舎が、私を子供の心に戻してくれるようです。素直にゼロから学べそうです。この校舎を何とかこのまま残して、大人の学校にできないでしょうか?

地元のおじいちゃんから山のことを学ぶ。おばあちゃんから漬物を学ぶ。あらためて薪割りや焚き火をしてみる。絵本や昔話を読む。泊りがけで、いろんな大人が語り合う。

智頭の人も、都会からの人も一緒に学ぶ場。そうだ、そんなスクールを開校しよう!

というわけで、雑巾がけをしている私の姿でございます。