阿寒湖温泉のこれから
かつて年間97万人の観光客が訪れていた北海道・阿寒湖温泉が、昨年は48万人になってしまったそうです。
大型ホテルが閉まり、その跡地をどう利用するかという話し合いに出ました。
観光業の方は大変だとは思いますが、清らかな場所に行って人ごみを体験するのはもう嫌です。
大勢が一泊で帰るのではなく、ほどほどの数の人が連泊する観光地にしましょう。人数より宿泊数ですよね。
そんなことは分かっているけど、死活問題だから!という声が聞こえてきますが、だからここで腹ぐくりです。
大きなホテルがなくなると、建物で近寄りにくかった湖に行きやすくなります。湖を前に、ゆっくりできるといいところだなあと思います。
夕方大型バスで到着し、バタバタ温泉に入り、ワシワシ食事をして、同じような木彫りのみやげ物が並ぶ通りでお土産を買い、翌朝、バイキングをたらふく食べて、とっとと帰る、そんな観光地でいいのか?そんなお客様をずっと相手にしていていいのか?
答えは分かっているのですから、この、しんどいときに変わりましょう。
今回うかがった日は、東京は30℃を越えているのに、阿寒湖は16℃という涼しさ。炎天下ではないので、まちを歩く気になります。
お店の前のベンチの花がきれい、“手湯”のまわりのお花も。業者が仕事で整備した花ではなく、ご近所が世話をしているお花を眺めると心から癒されます。
昔、幼い頃、北海道出張に行った父が必ず買ってきてくれた「まりも羊羹」が健在です。あの、楊枝でプチッと刺すとつるんと剥ける、緑の羊羹。造っている「北海まりも製菓」さんで、お話をうかがいました。
今は自動の機械がピースと呼ぶゴムの袋状のものに羊羹を詰めますが、昔は手作業だったそうです。「自転車の空気入れみたいなので一つずつ詰めてね。輪ゴムで口を止めてハサミで切って」ここの大おばあちゃんが説明してくれました。
お若いおばあちゃんと、マリモのようなお孫さん。この笑顔からいいお菓子が生まれます。
「まりも茶ん」という昆布茶。縛ったトロロ昆布がお湯を注ぐとマリモのように膨らみます。この開発が大変だったというお話も、お店の方から初めて聞きました。
長年のお付き合いの地元のまちおこしグループ「まりも倶楽部」の皆さんとお茶。レモンバームとレモングラス、マロー、新鮮なハーブを摘んできてくれました。暑さ焼けしていない元気なハーブでお茶。
これもまた冷涼な気候を好むルバーブ(茎の赤い酸っぱい味のある栄養野菜)の手作りジャムも。阿寒湖温泉のこれからに、女性たちはたくさんのアイディアと意見を持っていました。なんと元気な、いいお茶会!
いつの間にやら完成した新しい施設「阿寒湖アイヌシアター イコロ」、撮影は禁止なので建物だけですがここでの人形劇が良かった~。アイヌの熊神様のお話。
地元の方々が大きなお人形を操って、それが上手で、格好良くって。そう、地域の村歌舞伎を見せてもらっているような和やかさです。
ああ、おひねりを投げればよかった・・・。終了後、人形を操っていた女性と少し会話して、彼女の汗を見たとき「また見に来たい」と心から思いました。
帰り際に寄ったホテルのバーラウンジ。夕方からは火が入り、ここでマシュマロをあぶって食べられます。
私もいくつか食べましたが、同じ中年の女性2人が、一つまた一つと焼いて食べています。少女のように楽しそうに、はしゃいでいます。
そう、観光地って、こういう時間が大切なんですよね。何も、すごい景色や大げさな料理はもういい。印象深い時間を過ごせることが大事。
マシュマロをあぶる彼女たちに、まちのお花や、マリモ羊羹工場も見せたあげたいな~。
トロロ昆布が丸く膨れる開発話や、阿寒湖での暮らしの話をフレッシュハーブティーを飲みながら、「まりも倶楽部」の女性たちと女同士語りあったらいいな~。
人形劇にもちょっぴり参加できたら、喜ぶだろうな~。木彫りをただ買って帰るだけでない、お土産話が山ほどできるだろうな~。
ね、そうすれば、一泊でなく彼女たちは何泊もして行くのでは?と思いませんか。"