雲仙の力

ゆとりある記

雲仙温泉の名物「湯せんぺい」屋さんでは今まで通り、店主がニコニコと手焼き実演を。温泉旅館の料理長は、畑で様々な在来種の野菜、ハーブなどを栽培、これからお客様をご案内できるように、と張り切ります。地域おこし協力隊は方言をイラストやYouTubeで楽しく紹介。8月豪雨で被害はありましたが、温泉同様に、みんなの元気も勢いよく湧いています。さすが雲仙、と思いました。

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雲仙温泉に上がって行くと、ところどころに黒いフレコンバックはあるものの、いつもの温泉街の様子が戻っていました。いいお天気の中、観光客の皆さんがゆったり歩いています。「湯せんぺい」のお店、遠江屋本舗に入ると香ばしい香り。

「さあ、焼き立ての湯せんぺいはいかがですか~、温泉の入ったおいしい湯せんぺいです」と声が聞こえます。2階からはジャガイモのお菓子「じゃが玉」を焼いていた息子さんが下りてきてくれました。

「東京じゃ雲仙が相当やられて、観光は無理と思われているみたいだけど・・・」と。多くは語りませんが、むしろみんなでこれまでの日常を取り戻し、今まで以上に雲仙を盛り上げようとしているのだからそれをわかってよ、という想いをこちらもくみ取ります。ソフトクリームにサクッとした歯触りの湯せんぺいがあいます。今まで通りの味を堪能しました。

「民芸モダンの宿 雲仙福田屋」の草野玲料理長が直近の会合にお出ましくださったので、ご挨拶に寄りました。すると「お時間ありますか?福田屋ファームをご案内しましょう」と、近くの畑に。斜面に作った草野さん手作りのかわいい畑。黒田五寸人参など在来の野菜や、ハバネロ、金時草、花オクラ、菊芋、ナスタチウムなど普通の畑にはないものが植わっています。

ひとつひとつ解説されて、しかも「ちょっと食べてみてください」と。無農薬ですから即口に入れられる。ツルムラサキの花は噛むと葉と同じように粘々する。トウガラシの花は同じく辛い。野菜の花を見る機会が無いうえ、さらに食べるなんて初めてで驚きます。マイクロキュウリという名の小さなウリのようなものは見るのも初めて。かじると酸っぱいキュウリの味。

「雲仙にみえたお客様に、野菜のことをもっと知っていただきたくて。だんだんこの福田屋ファームをご案内するようにしていきたい」と語ります。雲仙は種取農家さんも多く、在来種の野菜が豊富にあります。さらにこうして料理の視点で解説いただけたら、“野菜を知る観光”が可能になりますね。

 

小浜では地域おこし協力隊の堀口治香さんが、「アイアカネ商店」でイラスト展を開催中でした。雲仙の中山間地の魅力を描いた「山間号」というフリーペーパーが展示され、そこで話される方言もイラストで紹介されています。観光に来て、方言を話す人に会うことなく帰ったらもったいない。堀口さんの発信で覚えることもできます。

 


さらに、「こんにちは菊田です」という、雲仙市にこだわったYouTubeチャンネルで方言紹介の番組も始まりました。菊田忠典さんと堀口さんの企画です。方言をリアルに体験できます。バリバリの方言を話す方が登場して実におもしろく、雲仙がますます好きになります。こちらからご覧ください。

老舗の観光地というのはやはり厚みと深みがありますね。何かあっても、よいしょと起き上がってくる力がある。次なる試みが育ってくる。日々新しいことが起きてくる。今回訪れて、これが雲仙の力なんだ、と思ったのでした。