「あか牛」

ゆとりある記

北海道池田町、特産の池田牛、毛が赤い「あか牛(あかうし)」を見学しました。霜降りの黒毛和牛がもてはやされますが、あか牛はおとなしく飼いやすく、赤みの肉、脂がさっぱりしていてヘルシー。しかも訪ねた「小原牧場」では、餌は完全に池田産。さらに特産のワイン製造での副産物もあたえてい
るとか。いただいた名刺には「あか牛は、国民的救済牛!」とありました。

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池田町あか毛和牛振興協議会会長、小原秀樹さん(65歳)の牧場です。

「あか毛和牛」の看板とともにお出迎えくださいました。入植して120年、4代目。5代目になる娘さんは獣医さんだそうです。「牛舎もなにも、なるべく手作りですよ。設備にお金がかかるからね。もう酪農やめるなんてとこから引き取って、組み立てなおしたり」

牛舎の方に入っていくと「なあに~?だあれ~?」と「あか牛」が私を見つめます。牛と言えば、白黒と思いこんでいるふしがある。黒毛和牛なんて聞くと、あ、黒いのもいるんだと。そして、今回、本当に赤い牛もいる、と分かったわけです。

子育て中の牛たちは、ゆったり親子で草原や裏山の方へ遊びに行ける仕組みです。小原さんのところには黒もいますが、緑の中ではあか牛の方が映えますね。

「餌はオール池田町産、外国から持ってきた餌じゃないから安心。町のなかでいろいろ循環させる仕組みを考えていかないと」とのこと。牧草と、手前はデントコーン。

そしてこのエサがとっておきのもの。十勝ワイン生産の副産物が混ぜてある。果汁を搾った後の、ブドウの皮、種。そしてワインを造る途中でできる、ワインの澱(おり)。これはネバネバしているそうですが酵母が一杯。こういう物を飼料専門の企業に頼み、牧草と混ぜて特別な餌として作ってもらっているそうです。

袋をめくると強い発酵臭のような、ビールのような匂いがしました。でも腐った嫌な臭いじゃない。なんだかおいしそうです。ちょっとつまみ食いを。ううん!?酸っぱい。発酵しているのがよくわかります。これは牛にとっては健康食品でしょう。こういう餌を食べると、脂がギトギトしない、赤身の肉の旨味が増すのだそうです。だからに人にとっても、ヘルシーな肉になる。

育った牛は風通しのいい、景色もみえる牛舎でのんびりしています。実に大きい!!800キロ、900キロにもなる。山、岩のような雰囲気です。

ここまでくると、可愛い、というより風格があります。私よりずっと大人って感じ。

鼻には粒々の汗。アップでごめんね。

通りかかると小原さんの手をペロリ。本物の牛タンを始めてみました。

黒毛の方がどうしても高く売れるから酪農家はそちらを選ぶ。あか牛を飼う人は増えているもののまだまだ少ない。となると、あか牛の肉は貴重です。パンフレットには「出生から肥育、とちく、部分肉加工まで、すべて池田町内で行っているものだけが、“いけだ牛”を名乗ることができ、トレーサビリティが非常に明確な安全安心な牛肉」とあります。

「町の外に出荷するほど量がないから、池田に食べに来てほしいんです」と小原さん。扱っているところにはこの看板がかかっているそうです。町民もなかなか買えないブランド牛なんですね。

さんざん「あか牛」可愛いとか言っていながら、結局、私食べました!だって、きちんと食べてあげることが私たちのやることでしょう。池田町の象徴「ワイン城」のレストランで、一番小さなステーキを頼みました。肉汁がジュワ、脂っぽくない、柔らかい、噛むほどに旨味の塊のようです。食べきれないかな~?と思っていたのですが、もう一枚食べたくなってしまう。お隣の方に一口差し上げるのも断りたくなるほどおいしい!

日本が豊かになって、皆が牛を求めるようになりました。でもだんだんそれがエスカレートし、ただの牛ではない、霜降りの黒毛和牛というのがとにかく美味しいと追いかけることになる。でも本当にそれが美味しいかというと、私などはいまやダメ。高級すき焼き屋さんなどに連れて行っていただくと、お肉一枚食べればもう結構!あとは漬物の方が良くなる。年齢のせいもあるかもしれませんが、実際そうなのです。

それに、外国からやってきた餌で無理やり太らせて脂ぎった身体にされた牛を食べて、自分を同じ身体にしたくない。地球に負担をかけたものを食べたくないとも思います。そろそろ世の中皆がそんな風に思ってきています。

小原さんから「帯広空港にある看板を見てよ」と言われていました。帰り際、見に行くと「やっと時代は追いついた。」とありました。