散居の地「砺波」

ゆとりある記

あなたは、散居(さんきょ)について説明できて、砺波(となみ)の字をサッと書けますか?私はついこの間まで×でした。

ところが11月12~14日、富山県‘となみ野’で開催するフォーラムの準備で通っているうちに、散居はすごい砺波はすごいとつくづく思ったのです。

都会のコンクリートの小さな箱ではなく、自然とともに広々と暮らす散居村。ここに本物の「住まい」を見ました。

昔から富山は住まいの面積が、日本で一番広いといわれます。そして、砺波の家はさらに広いとは聞いていました。
それが、実際訪ねると、広い田んぼの中に、ポーンポーンと離れて家があって、家を屋敷林が囲っている。

遠目には一軒の家が、まるで田の海にこんもりと浮かぶ緑の島のように思えます。近づくと旅館のような大きさ、社寺のような荘厳さ。一体いくつの部屋といくつの畳があることやら・・。

実際散居に住んでいる人からも話をうかがった時に「隣が遠いから回覧板は大変。でも人間関係は濃い」とか「家族が減って今や使う部屋は一部で、あとの部屋は何が入っているかわからない」などの話を聞いたことがあります。う~ん、さぞかし掃除は大変でしょう。

最近は、この屋敷林も手入れができずに無くしてしまったり、古い家を一気に建て直してコンパクトな今風の家にする傾向も強いとか。モッタイナイとは思うのですが、実際に住んでいる方は大変だと思います。

庄川の氾濫を避けて、少し高いところに家を建て、周りに水田をつくった。数百年前からこの景観があり、220平方キロメートルに7000戸が散って在る。アズマダチという独特の形の家。

周囲に家がないため、カイニョと呼ばれる屋敷林で家を囲む。この屋敷林は‘多徳があるという。防風、防雪、防火、燃料、用材、肥料など。と、散居についての説明は、「となみ散居村ミュージアム」の展示に詳しいです。
http://www.city.tonami.toyama.jp/shisetsu/sankyo/paneru/panerutop.html

本当の家には入っていませんが、「となみ散居村ミュージアム」にある、アズマダチの民家を、そのよさを活かしながら現代的にアレンジした建物を覗きました。フォーラム分科会ではここで交流夜なべ談義をやります。

広い座敷、高い天井は入っただけで心が広がります。そして、屋敷林の杉の葉を昔は焚きつけにしたのですが、ここでは固形燃料にしてストーブを燃す提案をしていました。昔のままの家では日々の暮らしが大変だと思いますが、こんなフローリング空間までに改造でできるのなら今様の暮らしにもマッチするかもしれません。

と、実に客観的に書きながら、今このブログを書いている私の住まいはといえば・・。30平方メートルに満たない小マンション。ここに夫と2人。ハンドバック一つ、靴一足、本一冊置くにも、置き場がない暮らしです。

緑はベランダのプランターが二つ。これが我が家の屋敷林。上下隣に人が居ても、会話や交流はなく、人に囲まれているのに人恋しくなる。なるべく深呼吸はしない、空気が悪いから。屋上から見渡せば、そびえるのは東京タワーと六本木ヒルズという環境です。

おそらく私は散居に憧れ、となみ野の方は都会のマンションにあこがれるのでしょう。でも、人と地球にどちらが優しいかといえば、もちろん散居。この住まいの違いは、おそらく生身の身体や心に違いをつくると思います。

外から見るだけで、まだ中まで入っていませんが、今度のフォーラムの分科会では中を見学できる予定。都会人が「保存してよ、観光にもいかせるし」「これが本当の住まいだ」というのは簡単ですが、この散居村をどうやって守り生かしていけるのか・・・。知恵を出し合いたいものです。

フォーラムの詳細はこのパンフレットから。
http://www.slowlife-japan.jp/modules/katudou/details.php?blog_id=101