お醤油育て

ちょっとしたこと

醤油発祥地・和歌山県湯浅町で、醤油工場を見学しました。巨大な樽のモロミを櫂という道具で混ぜ続ける、手間暇かけて本当の美味しさが育つとのこと。

ここで「マイ醤油」作りに挑戦しました。以来、我が家に持ち帰った材料入りのペットボトルを、ゆっくり大事に混ぜています。

1年がかりの気の長い作業、一カ月過ぎて、香りが醤油になってきました。最近は揺する作業が、赤ちゃんをあやすような気分です。
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もともと、湯浅あたりで作られていた、今も作られている「金山寺味噌」の漬けこみの際に、上に浮いた液体から醤油が発見されたとか。

その金山寺味噌には、湯浅の地域野菜「湯浅ナス」というのが使われてきたのですが、最近はこのナスを作る人が居なくなり、今、復活の運動が起きています。

その運動の仕掛け人でもある方が経営する、その名も湯浅醤油(有)にうかがいました。

店先にはさっそく湯浅ナスが植えられていたのですが、ああ、写真を撮るのを忘れました。で、この会社の親会社は金山寺味噌やお味噌が主だったのですが、あえて若い五代目さんが別会社を起こし、昔ながらのやり方の醤油に挑んだのだそうです。

盛んな時は、湯浅に醤油屋さんは90軒を超えていたとか。今は数軒だそうです。大量生産の大手が、日本の醤油を牛耳るようになってしまったわけです。

ここでは作り方は醤油がその大量生産になる以前の、古来の作り方。工場という雰囲気はあまりありません。醤油蔵という感じ、しかし、考え方や経営は実に新しい。わざわざ古来のやり方を選ぶこと自体が、最新ということでしょう。新しく、古くしている、そんな印象です。

さて、ナスで地域おこしをという活動もしている会社ですから、製造を地域に、外部にもオープンにしてくれています。醤油を知ってほしい、ということでしょう。1人からでも、予約すれば見学できます。

味噌ソムリエの資格をお持ちの女性が、100年以上も経つという杉樽の前で、一斗樽を振り振り説明を始めてくれます。まあ、とにかくそこらじゅうがいい匂い。味噌というか醤油というか、それ系の匂いは何ともホッとさせてくれますね。

醤油の材料はな~~んだ?とっさに答えられないつさ・・・。「これです、大豆、麦、塩、麹菌ですね」


これに水を加えて混ぜて、1年以上。モロミというものに変化して、それを絞るとお醤油に。

と、いうのは簡単ですが、つまり本当のお醤油作りは、時間がかかり、手間もかかる。ドンドン、ジャンジャン、出荷するわけにはいかないのです。数年に一回採れる、作物みたい。自然の影響で味も決まるし、です。

しかも樽の中のモロミは生きているので、静かにしていると、プツ、プツ、とつぶやく。音がする。小さな泡がはぜている。聞いていると、「そんなに早く早くと言いなさんな」と諭されているように思えてきます。

職人さんが「櫂」という道具を持ってきて、混ぜます、空気を入れます。サラサラの水ではないので力もいりますコツもいる。これの繰り返し、だそうです。もちろん、気候やモロミの様子を見ながら回数もタイミングも変化する。少々やらせていただきましたが、しんどい。即やめました。

ファストフードのように画一化されたオートメーションでというわけにはいかない、出来上がるのを待つしかない、美味しさはそこからようやく生まれることが見学するとよく分かります。

ここで作られる醤油を試飲?試し舐め?できるコーナーでは、それぞれ、香りや味わいが違うことにさらにびっくり。スーパーで特売を追いかけている自分が恥ずかしく、もっと醤油に興味を持たなくては、と思いました。

この会社、面白いのはあちこちに社員さんの顔がある。作っている人たちがポップになって現れます。こんなところが、今風。

さらに今風は、カフェにある携帯充電器。醤油ソフトを食べながら充電できる、心遣いですね。

そして、いよいよ醤油作り体験です。その前に、2011年6月という日付のあるものを舐めさせてもらいます。もうすっかり醤油色、コーヒーフィルターでゆっくりと濾過。舐めさせていただくと本当にお醤油でした。

さて作りましょう。と言っても、仕込み?は簡単。もう、材料が混ざっているのでそれをペットボトルに入れる、水を注ぐ、混ぜるだけ、です。身近なペットボトルが醤油製造器になるのが面白い。これもこの会社のアイディアですね。

あとは、時を共にし、混ぜるというお世話をするだけ。やがてだんだん醤油が育って行くのです。最初のうちは日に1回、だんだん二日に1回、三ヶ月もしたら週に2回くらい、ゆるりと混ぜる、ゆったりと混ぜる。

これは、我が家に来たばかりのお醤油さん、正確に言うとそれ以前の物。

そして、一か月後の姿です。一見、あまり変わりませんが、生きています。2日もすると、冷蔵庫の中でもペットボトルがパンパンに膨張して中の空気を出してあげなくてはなりません。

その時にシューと出る空気の美味しい香り。もう、このままご飯にかけてもいいのでは?と思えるほどです。半年したら、絞れるとのことですが、1年位の方が美味しいとうかがいました。

待ちますよ、待ちますよ~~~。あなたが大人になるまで。

ヨシヨシとあやしながら、育てましょう。なんといっても、発祥地・湯浅から来た子なんですから、ね。