餅まきツーリズム
昔は、家の建前といえば餅をまき、祭りだといえば餅をまく。餅まきが日常的にありました。それがいつしか無くなって、都市部ではほとんど見られません。
「ならば、餅まきに都会の人を混ぜてあげよう」「餅まきだって、観光交流の体験メニューになるのでは?」と、先日、奈良県十津川村谷瀬集落で、大学生が餅まきに参加する試みがありました。これが大成功!おもしろかったですよ。
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おなじみの十津川村です。ここの吊り橋で有名な谷瀬集落にもう3年以上通っています。
ここで先日集落のお宮さんの餅まきに、学生さんが参加しました。
奈良女子大と奈良県立大の学生さんが、「むらの餅まきってどんなんだろう?」とおじゃまにならない範囲で体験したのです。
「昔はしょっちゅう餅まきがあって、各家々でもやってました。集落の家を回って歩いて、一杯拾ったもんです。そのくらいしか楽しみがなかったから」と地元の人の話をうかがいます。学生さんからは「ハローウィーンみたい!」。
さあ、お餅を搗きましょう。昔のように臼と杵ではなかなかもうできません。お手軽に餅つき機です。
それでも若い方々には珍しい光景。「ご飯がどんどんお餅になる!面白い面白い」と歓声が。そう、都市部の家庭では餅をつくこと自体、家ではやらなくなっているのでしょう。
こんな年代物の道具が、現役であるのからしてすごいですね。
つきたてのお餅を丸めます。「熱い、熱い」お餅がこんなに熱いとは、お餅がこんなに柔らかいとは、そしてすぐに固くなることも、みんな初体験のこと。
できたお餅の愛おしいこと。
翌日は雨。お宮さんで神事だけして、餅まきは公会堂で。こうした小さな集落で、年に何度もこういう神事・お祭りがきちんと粛々と行われていることに感動しました。ここに住む人たちの気持ちが美しいのですね。
で、お待ちかねの餅まきです。餅が飛ぶと、突然スイッチがONになったように、いつもは静かな集落の人たちがはしゃぎます。学生さんたちも必死ですが、おばあちゃん達には負けます。
ほんの数分間の出来事ですが、学生さんたちも村の一員になれたような瞬間。
お餅を丸めたあの感触と、飛んできたお餅がコツンと頭にぶつかった痛さは、青春の思い出になったはずです。
集落で普段やっていることに、外部の人を招いてあげる。それで両者が喜ぶ。これは新しいツーリズムです。観光用にわざわざやったことでないから、本当に面白い。
これを機会に、餅まきツーリズムを育てていきましょう。"