逸品ってな~に?「いっぴん物語その2」

お仕事で

※「いっぴん物語その3」を先にアップしてしまいました。
後から「その2」で失礼します。

最近は都内で電車に乗っていると「このお店の逸品は?」なんてCMが流れ、ほんの数十秒の間に「逸品」(いっぴん)という言葉を何度も見聞きすることになります。

テレビ番組でも、「究めつけの逸品は~」なんて、大食いのタレントが叫んでいるわけで、品だらけの世の中になってしまいました。

静岡で19年前に「一店逸品運動」が始まった時、「逸品」という字が読めないくらい、「逸品」という言葉はポピュラーなものではありませんでした。

というか、そもそも「逸品」なんて言葉は、そうそう使うものではない、自分からなど恐れ多くて恥ずかしくてよほどのことがないと言えない、そんな重みがありました。

だからこそ「各お店に一つぐらい逸品があるはず、なくちゃおかしい、なければ作ろう」と張り切れたわけです。

そういう意味では“一店逸品運動が本当の逸品をなくした”と自戒する部分もあります。が、当初の想いはかなり決意をもって「逸品」という言葉に挑んだことは確かです。

各店の逸品を探し出し、それらを一同に紹介するフェアをやろう、ということは早々に決まり、商店街が手すきになり、皆の時間が取れる1月20日からの4週間と期間も決めました。

呉服町名店街理事会の中に、ソフト整備として「逸品フェア」をやるための委員会ができ、その傘下に特に逸品を研究開発する「逸品研究会」が有志で作られました。

以来、5月から翌年の3月まで、この研究会は27回の会合をすることになります。先ずは「逸品ってな~に」と、各人が自分のお気に入りのものや、最近買ったもの、出会ったサービスなどを紹介しました。

愛用している手ぬぐい、手ぬぐいそのものがそもそも使いやすくタオルより逸品だ。しかも、○○店のこの染め・デザインはすばらしい。など、現物を持ってきての逸品談義です。

自分の思う逸品を披露すると、そこにある普遍的な“逸品の要件”が見えてきます。それを言葉に書いて皆で整理します。

例えば、逸品とは「愛着がもてる」「安かろう悪かろうではない」「店主のこだわりが伝わる」「専門性がある」「環境にやさいい」もの、こと、など。この整理の仕方は、今も、どの土地でも逸品運動の始めに私はやることにしています。

逸品とは「○○な、もの・ことである」という決まりごとは、一定ではありません。時代や土地によっても違うでしょう、第一、答えが最初からあってはいけません。「逸品ってな~に」の答えはそこに集まったみんなで発見することです。

で、いくつかの要件が見えてきたら、それを“逸品のものさし”にして、今度は我が商店街の中での、逸品をカードに書き出していきます。

ここで大事なのは、逸品は“もの”だけでない“こと”もあること、を強く意識すること。ともすると品という言葉から形のないサービスのようなことは見落とされがちですが、仕入れたものを売る商売ではこの“すぐれたこと”が大切になってきます。

「あそこの看板は江戸時代からのもの、あれは逸品だ」「あそこのおじさんの刃物の知識はすごいね」というようなことごとです。

さあ、ワークショップで参加者は一人いくつかの逸品を書き出します。え?自分の商店街なのに、そのくらいしか知らないの?などと私に嫌味を言われながら。知っているようで知らなかった我が商店街、その現実を知ることになります。

一方、自分の知らないことを書いた人からは、その逸品を教えてもらうことになります。「へえ~、あの店にそんなものあるの」という繰り返しで、参加者は全員の逸品情報を共有することになります。

先の各店の自慢調査の内容も含め、今の商店街にどんな“逸品”があるのか、とことん洗い出しました。さあ、これを整理してみましょう。真ん中に道路があると設定し、逸品カードをそのお店の位置においていきます。

おやおや、商店街のなかに、逸品が多いエリアと少ないエリアがあります。やたら食べ物の逸品が集中しているところがあります。こんな商店街なんだ~と分ってきます。こうして、商店街の逸品マップがみんなの頭にすりこまれました。

「結構いいものあるじゃない」「知らなかったな~」などと商店主達からの感想が出てきます。「でも一番知らないできたのは、お客様、消費者なのかも知れない」そのとおり、この商店街の逸品リスト、しいて言えば底力をこれまで伝えてこなかったのでは?!とんだ発見になっていきました。(つづく)