新逸品をつくろう「逸品物語その3」

お仕事で

「こんなもの作ったら売れるんじゃないか」「おもしろいから売り出してみよう」そんな動機で個店が新しい逸品を作っても商店街全体としてみたらどうなのか、ということがあります。

静岡呉服町名店街の最初の「一店逸品運動」の時、新逸品のアイディアは単純な思いつきのその前に、どんなコンセプトで作るのかを考えました。

今ある、逸品で足りないものは何だろう?これから商店街がどういう方向を目指すのか?それを表現できるものづくりを。

このときは、「伝統」「こだわり」「新時代」「エコロジー」「便利」を体感できる商店街にするために、そんな逸品を作ろうということになりました。こういう根っこを押さえておかないと、きをてらうようなものばかりが出来上がってしまいます。

そして、みんなでアイディアをたくさん書き出しました。自分の店でやりたいこと以外に、無責任にこんなものがあるといいとか、あの店のあの技術を使ってこういうものを作ってほしい、というものも書き出しました。

これは楽しいです。アイディアというのは現実ばかり見ていると行き詰って出てきません。自分の店では、予算がない、失敗できない、無理だ、になります。が、人様のことは平気平気、のびのびといろいろな案が出ました。

「うん、そういうものがあったら静岡の伝統をだせるね」「商店街のスローガンが“五感の幸せ”ならば、聴覚に訴えるこだわりを出そう」「新しい時代を感じてもらえるものを作ろう」

こういう根っこは押さえながら、具体的な、でもけっこう無責任なアイディアも含め山ほどのアイディアカードが出てきました。そしてやってみたいもの・ことについて、みんなで投票しました。

やろうやろうと支持の多い案を、「自分のところでやってみるよ」と言い出す人がいたり、「あの店に頼んでくるよ」と言う人がいたり。

そして、試作などが始まっていきます。実は前から考えていた案が、このとき日の目を見るということも。「みんなから
やれといわれたから」を理由に、かねてからやってみたかったことに大手を振って取り組めるのですから。

そして様々なものが本当に誕生していきました。それまで静岡ではワサビ=ワサビ漬だったのが、ワサビケーキができたり。静岡の産物・桜エビ、シラス、オカカの入ったカリカリスティックパンができたり。

値段、パッケージ、売り方、名前もみんなで決めました。研究会のメンバーが、我が家で奥さんからネーミング案をもらったり、他店で開発中のものを自分の店の従業員に試食してもらったり。

研究会が開発するのですから、新しいパンの名前は洋服屋さんが考えたものが得票数が多く決定、ということになっていったりします。

どこかの店がこっそり一人で考えたものを、みんなが批判する、なんてことが繰り返されていては、みんなに開発力がつかないし、新しい人の繋がりも育ちません。新逸品開発は、みんなの新能力開発であり、新関係開発なのですから。

19年前、当時まだ商店街がエコに取り組むことは新しかったものです。でも全体で取り組む「新逸(すぐれ)サービス」として、簡易包装運動が始まりました。静岡ならではの「茶の実紋」を染めたふろしきまで作ったものです。

また、朝・昼・晩の商店街の音楽をプログラムして流す「サウンドに気配りのある街」の試みも始まりました。もの、だけでない、みんなで取り組むサービスも「新逸品」として具体化されていきました。(つづく)

※“その2”をフェイスブックに上げていて、こちらにアップするのを忘れていました。そのうち上げますね。"