コロナに負けない女将さん

お仕事で

小さな旅館は、コロナ禍の影響をもろに受けました。予約は皆取り消し、電話が鳴らない日々。そんななかでも「東京、大丈夫ですか?」と心配してくださっていた、雲仙市国見町、同じ町内の宿三軒に泊まってきました。お弁当を作り隣の市まで売りに行っている、この際Facebookを始めた、YouTubeで宿の魅力を発信してみた、三軒協力してチラシを作った、などなど。女将さんたち、へこたれてはいませんでした。

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よく伺う三軒のお宿ですが、しばらくご遠慮していました。そろそろいいかと伺うと、女将さん達にはたくさんの話がたまっていました。

「旅館末廣」さん、ご主人がとても素敵なお料理を作ってくださる木をふんだんに使った宿です。この日も米ナスが上手に焼かれて・・。

ここではそのお料理を活かして、お弁当を作り、となりの島原まで売りに行っているとのこと。女将さん曰く「だってね、何もしないでいると、おかしくなりそうなの。こんなにお客様がなくて、コロナで、今後が全く見えなくて」

お弁当が売れる売れないというよりも、“何かしていたい”という思いだったそうです。「知り合いの人が声をかけてくださったり、『ここのお弁当、本当にやさしい味でまた買いに来た』と来てくださったり」で、思いがけず繋がりができたのだそうです。

「本当に本当に大変なの」といいながらも、ファイスシールドをつけてポーズをとってくれました。

 

「旅館松栄」さん。手作りで「野菜ぷりん」やお菓子まで作られる女将さんです。「果実酒、漬けたので召し上がってください」とずらりと並べてくださいます。「時間があるので、レモンをいただきに行ったり、地元のイチゴを使って。まだ味は若いかもしれないけど」と。

彼女はFacebookを始めました。「今までSNSの怖い部分ばかり気にしてやらなかったんです。でも、今回はそんなこと言っていられない」この時期だけの割引を発信したところ、予約が入りました。「Facebookをやって助かりました。お客様をお迎え出来て、本当にうれしかったんです」

とはいえまだまだ「野口さん、スタンプってどうやるの?シェアの仕方は?」と迷うことばかり。「小さな字は見えないし、指は太いし、スマホでやるの大変なのよ~」と笑います。

「割烹旅館観月荘」さん。「今日は、煮魚にしましたよ~~。なかなか東京じゃ食べられないでしょ~~」と女将さん。地物の魚をいつも出してくださいます。低温スチームで料理した地元の野菜は朝の定番、私の好物です。

女将さん、大きな声で元気ではありますが、ふと見ると足にけが!「ごめんなさい、こんな格好で。階段から落ちちゃったのよ~、もう踏んだり蹴ったり。ようやくお客様が戻りつつあるのにね~~」

彼女は高齢の両親の面倒を見ながら、ひとりで宿を切り盛りしています。「コロナの間に何か新しいことしなくちゃと思っても、なかなかできなくてね~」とぼやきますが、「近々大きな宴会が入ったから頑張らないと」と張り切っていました。

どうしているかと心配でしたが、三軒のお宿で地元向けのチラシを作ったり、YouTubeで動画をアップする勉強会をしたり、なかなかの動きをされていました。同じ町内のこじんまりしたお宿、仲間であり、ある意味ライバルでもあります。でもこんな危機の時に、お互い連携できるのは、女将力かと思います。

チラシにはこうあります、「家事から離れて何もしたくな~いという方、上げ膳据え膳でゆっくりゴロゴロしませんか」。宿を旅行の宿泊先というよりも、近くの人が一休みするところに使う。女将さん達とおしゃべりしに行く。そんな風な宿の使い方を女将さん達が考え提案。これは、新しい動きの始まりになると思いました。