市民力のプレ・フルーツ博覧会
“フルーツのまち”づくりを進めている和歌山県紀の川市。「フルーツ博覧会」を来年度計画中ですが、このほど模擬実験的に「プレ・フルーツ博」が開かれました。
市民手作りの、文化祭的な催し。市民が開発した「いちじくカレー」や、フルーツ寿司、フルーツ串揚げが売られたり。市民運営のフルーツ茶会やカルチャースクールも。
いずれも完売・満員御礼。フルーツ市民力に万歳です!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一度おさらいすると・・・。紀の川市に私が通い始めて、3年目になります。フルーツの産地なのですが、市全体で、良質の果物を作っている“だけ”の印象が強く、「もの」だけではなく、「こと」も、もっとフルーツ文化を育てて、フルーツをテーマとしたまちづくりを進めましょう、と当初に提案したのでした。
担当が商工観光課でしたので、「フルーツ・ツーリズム」を育てようということになりました。ツーリズムとは言っても、交流の意味の方が強い動きです。最初から何か組織を作り、やることを行政サイドで決めてしまうのではなく、時間がかかるけれども興味のある市民を公募しアイディアを募ろうと、これまたご提案し、市当局も手間暇かけることを覚悟してくれて、最初に100人の市民が集まりました。
100人!これはある意味感動的なことでした。10代から80代まで、年齢も職業も立場も多様な人たちでした。そこで市民の皆さんがアイディアを出し、500近いアイディアの山ができました。これを「すぐやれること」「少し先ならできること」「いつかやりたいこと」の3段階に整理しました。
そして、「すぐ」のグループの中でも希望の多かったことを昨年やり、さらに今年はやることを加えていきました。市民の皆さんが考え、決めているのですから、当然自分たちでやりたくなります。やらなくては嫌、という感じになります。
で、再来年には一カ月間くらい、市域全体を体験型博覧会会場と捉え、市民が様々なプログラムを実施するのと同時に、大きな会場で、フルーツ文化を発信するメインイベントもやろうと、どえらいことも計画中なわけです。
そのため、それに向けての、今年できることを試して、来年に備える「プレ・フルーツ博覧会」をやったわけです。11月1日からスタートし、約1ヶ月間。その中でもメインになる催しが、紀の川市役所を会場にした11月7日だったのです。
何をやったのか、これから何をやるのかは、こちらを見ていただくとして、↓ここではこの日の市民力を解説しましょう。
http://fruits.oyoyaku.com/
さて、前日に先日まで国体の宣伝が貼られていたところに、タイトルが貼られました。マグネットシートは国体のときの再利用です。トラックに乗って貼っているのは、“背が高いことだけで選ばれた”と本人がいつもおっしゃる、実行委員長。印刷屋さんです。
「覗き看板なんかあるといいねえ」という意見がありましたが、「もう間に合わないよ」と言っていたのに出来ちゃった。誰かがだんどって、誰かが描いて、誰かが切ったのですね。催しが始まる前から市役所に来た親子に人気です。
市役所の一室は風船工場?アーチと、万国旗のようにフルーツイメージの風船が作られていきます。風船隊長はいわゆる土建屋さん。
「風船が萎まないようにするには、無香料のヘアスプレーがいいんだ。しかもセブンイレブンの」とそうとう研究したらしく、たくましい手を繊細に動かしてデリケートな風船を扱っていました。
ドーンとコンテナで届いたキウイ、レモン、ミカン。皆、小さかったり、傷があったり。農家としては売れないけれども、捨てるには忍びない物ばかり。だって、ちゃんと美味しいのですから。
これは、アンケートに答えてくれたお客様への景品になります。これも、誰かが思い付き、メーリングリストが回り、景品提供に次々手が上がり、実現されたもの。
18時、明日の用意のために閉庁した市役所に次々と市民が集まります。仕事を持つ人が、夜、決まった時間に集合するのはなかなか大変です。しかもおなかだって空いている。
でもやりたい「プレ・フルーツ博」だから。「よく間に合ったね~」「へへへ、抜けてきた~」
市役所の一階が、「ふる~つ茶会」の会場に変身です。このグループは何度もこの場所を採寸し、レイアウトや飾りつけについて話し合い、まるで特殊部隊のように、お茶にふさわしい場所をしつらえていきました。
外のステージでは真っ暗の中、司会のお稽古。桃農家の奥さんと、薬剤師さん。台本も手作り、でも暗くて見えない~~。
一応形ができて「あとは明日の朝、7時集合ね。エイエイオー!」巨大な丸いマークは、果物をテーマにした茶道「ふるうつ流」の紋です。もちろん勝手に作ったもの、デザインも。でも素敵でしょう?朝、飾りましょう。
7日当日です。フルーツ風船の万国旗?「飾るよ~~~、何処に縛ろうか?」「テグス糸足りるかな?わああ、こんがらかった、エライこっちゃ~~」
茶会会場の竹も、カラス瓜も、紅葉した柿の葉も、一晩経ったけど元気、OK。
私が会場を見たのは、12時を過ぎてから。驚いたことに人だらけ!あんなに「人が来てくれるかなあ」と心配していたのに・・・。スーパーで友達に合っても、ガソリン入れても、皆が合う人合う人「来てね」を言い続けた効果ですね。
料理研究チームは、紀の川市の学校給食にフルーツ料理が出るように、街のあちこちでフルーツ料理が当たり前に食べられるように、各家で自慢のフルーツ料理がいろいろ作れるように、などを夢見て今回はフルーツ料理コンテストをしました。ステージではその表彰式です。トップになったのはこのお料理です。
料理チームが開発した「イチヂクカレー」。産地ならではの贅沢、B級品のイチヂクをたっぷり入れてトロトロに煮込み、生をトッピング。甘くてスパイシーで、即売り切れになりました。
市役所一階のもう半分は、プチ・カルチャー教室です。テーブルごとに体験メニューが決められていて、500円からいろいろできます。ほっぺにフルーツの絵をペインティング、フルーツの飴でレイ作り、フルーツ色のビーズでアクセサリー、どれもちょっとやってみたいものばかり。
一緒にこうして物作りをすると、参加したみんなが仲良くなります。子どもたちもできるので、親子で参加も多かったですね。市役所でこんなことした思い出は、子どもの心にしっかり残るはず。この日の市役所はフルーツ・シティホールでした。
この先生は元IT企業のキャリアウーマン、アクセサリー作りが大好きで資格も取って、いま、夢を実現中。
さてお茶会は、まったりとしたいい雰囲気です。着席した向かいの人のお茶をたてるという独特のルール。「ええ?」なんて驚きながらも、「生まれて初めてお茶なんてたてたよ」とおじさん達は嬉しそうだったり。向かいの人と、すっかり打ち解けたり。緊張しないお茶が「ふるうつ流」なんですね。
お菓子は、パカッと開く容器に。果物を使った、果物型の生菓子とフルーツと。開けるたびに歓声が上がります。使う楊枝はこのチームの人たちが果物の枝を削ったもの、「これは桃かなあ?」説明しているのはお菓子作りプロの若いお母さん。
普段は子どもたちが遊んでいるスペースが水屋、市役所ロビーで皆が座って大きなテレビなど見ているイスがお茶席。「いつもこういうことをしていてもいいね。これからの市役所はこんなんでないとね」なんて声が。
1日限りのこの日の催しは、早めの夕方で終了。撤収の速いこと。
風船はお客様のおみやげに。
わーー、ステージに敷いたカーペットを固定したガムテープが取れなくなっちゃった~~。これは丁寧にはがすしかない!ずと見物していたおじいちゃんが、飛び入りで手伝ってくれます。金山寺味噌屋さん、ブルーベリー農家、フルーツカッティングアーチスト、みんながはがすはがす。
会費制の打ち上げで、お料理に果物が使われていると歓声が上がります。みんなすっかりフルーツ市民ですから。
この日の催しを作った市民たち、役所の人たちが、全員スピーチをしました。みんな疲れているけどうれしくて、やった感いっぱいで。マイクがズッキーニだったり、おイモだったり、ネギだったり。最後は泣いちゃう人ばかり。
1年少し前、広報の切り抜きを持って「私、この活動に参加したいんですけど」と市役所にやってきた奥さんが、地域おこしなんて全く縁のなかった人が、「楽しくて、楽しくてしょうがない」と泣いています。
「このフルーツのまちおこしに関わって、人生が変わった」と切々と私の手を握る人。お父さんと娘さんがまちおこしで繋がって、仲間として打ち上げに参加している姿。定年して紀の川に移住した方が新しい友達とお酌して。「もっともっと果物食べよう」と演説する人。みんなそれぞれに充実した笑顔でした。
さあ、まだ「プレ・フル博」は様々なプログラムが続きます。楽しんで学んで、企画運営がきちんとできるようになって。その次は、フルーツをテーマに生業おこし、起業も、お稼ぎも、ですよ~~~みんな。
“