アセ早寿司作り

ゆとりある記

紀州にはサバなどをアセという植物で巻いた「なれ寿司」があリますが、これは匂いが強烈で時間もかかり、一般家庭ではだんだん作られなくなっています。

ご飯の自然発酵を待たず、最初から酢飯にして押しをし、サッとつくる早寿司の方が今は一般的、売っているお店も多いもの。

今回はこれを作る体験を和歌山県海南市の市民グループ「げんき大崎」の皆さんにご指導いただきました。

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海南市下津町大崎、底引きの船が並ぶ漁業・海運のまち、もう何度目かの訪問です。この日はお隣の紀の川市の方々が「食の体験プログラム」を学びにやってきたのでした。

大崎公民館が会場です。

この土地のまちおこし市民グループ「げんき大崎」の寿司部会のおばちゃんたち、別名“アセ寿司レディス”が今日の先生。平均年齢70?歳の元気レディスです。

若手の“アセ寿司レディス”から段取り説明。そもそもアセ寿司は、「本なれ」と「早寿司」があります。本なれはご飯に酢を入れず乳酸発酵を待ち、作るもの。重しも相当強く占めて、ご飯はカチカチになるとか。

時間がかかり、匂うし固いし、これは素晴らしいスローフードなのではありますが、だんだん作る人も好む人も少なくなった。

一方「早寿司」は酢飯で作り、押しをして翌日には食べる、いわゆる押し寿司、簡単で若い人も好む今的な味。ということでこの地で今でも10月のお祭りには必ず登場するご馳走。で、今日はそれを学ぶわけです。

これがアセです。「本なれ寿司」でも「早寿司」でも、アセは欠かせません。この辺のあちこちにふと見ると茂っています。

実は、ここに来るまで私はしっかり「アセ」について認識していませんでした。そういえばかつて、奈良県南部でアセで巻いた粽を食べたことがある・・?くらいの記憶。

本物の茂り方を見てびっくりです。ダンチク(暖竹)とも言われ、関東南部以西にあるもの。ヨシに似ているけれどもっと葉が大きく背丈も4メートルくらいまでなる、とのことです。

刈れば刈るほど良い葉が出てくるとか。刈った枝をほっておいてもそこから根が張る生命力だそうです。

この葉っぱをはずして使うわけです。

アセをよく洗います。

「アセはいちいち拭かなくていいの。こうしてバッサバッサ振れば。少し濡れてるくらいの方がご飯がつかないからね。バッサバッサ」

レディスが、アセの束を持って踊ります。

サバ登場。塩にして、それから酢にして、皮をむいて、骨を抜いて。ここまででも結構手間がかかってます。

アセ寿司レディスによる、見本切り。

「包丁を寝かしてね、ななめに薄く切ると大きな切り身が何枚もとれるからね」

参加の紀の川市のおじちゃんたちは必死です。サバにいくつもためらい傷ができて・・。

「それじゃ厚いわ」
「もっと刃を寝かせて、ゴキゴキせんと手前に引いて」

レディス、突っ込みます。

そして酢飯をおにぎりに。

「大体60グラムくらいだけど、いいの、大きけりゃへずればいいから」
「小さい方が包みいいよ」
「あたしはご飯がたっぷりの方が好き」

レディスの指導は様々で、これがまたいいのです。

いろいろな人と美味しいものを作っていると、何だかとにかく、楽しい。なんだかとにかく、笑います。

さあ、おにぎりにサバをのせて。生姜ものせて。

アセで巻きます。巻きます。縦に巻いたら横から巻く。葉っぱを少し斜めにすると巻きやすい。それでもはみ出るご飯は押し入れて、巻いて巻いて。だんだんうまくなるのでした。

アセの尻尾は折って、巻いたアセの間に尖っ割り箸で押し込みます。これもまたひと技いるところ。できない私は、輪ゴムの力を借りました。

寿司桶に詰めます、ぎゅぎゅーに、ぎっしりと。お酒も振りながら。

最後にまたアセの葉で整えて。

重しをしてしばし待つ。本当は翌日いただきます。そうすればアセの香りがご飯に移るし、サバとご飯も落ち着きます。

こんなことしている間に、寿司は押されていくのでした。

30分ほど、周りを片づけているうちに、まだ早いけど一応出来上がり。

旨い!

うん、おいしい。

わあ、できた~。

レディスいわく「まあまあだね~」

そして場所をかえて、打ち上げの交流会となりました。


海辺の大崎の人と、海のない果物のまち紀の川市の人が、ギュッと一つに包まれたお寿司のように仲良くなって。

「げんき大崎」のおじちゃんが腕組みしながらいい声で歌いだせば、アセ寿司レディスが踊りだします。

いいなあ~、寿司ひとつでこんなにみんなが仲良くなれるんだ。

「げんき大崎」の「アセ寿司レディス」の皆さん、ありがとう。次は「本なれ寿司」づくりをご指導ください。