ちびっこ増やし隊

スローライフ運動

奈良県川上村にこんな名前のグループがあります。

子供のいる女性たち、男性たちがゆる~く繋がって「まあ、楽しくやろうよ!」と活動しています。

この人たちに合うと、田舎暮らしは楽しい、子供がいるとさらに楽しい、というのが伝わってきます。

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川上村は、吉野杉を産する林業の村です。日本のほとんどのこうした村がそうであるようにここも人口減。7月末の人口が1605人です。つい約1600人と略してしまいそうですが、この村にはこの5人が大変貴重な人数、そのくらい人口問題は切迫しているのです。

この春に発表された日本創世会議の人口予測では、このままでいくと2040年に457人となり、特に子供を産む中心となる20歳~39歳の女性は8人になってしまうとか。このままでは自治体として成り立たない、消滅してしまう可能性がある、全国でそのワースト2位になってしまいました。

と、無機的に書くと、とても寂しい寒々しいところのように思えますが、とんでもない。実際に村に伺うと、水源地の村だけあってまずは水がおいしい、山の緑が素晴らしい、野菜が美味しい、人が優しい、村中がみずみずしくってキラキラしています。

ここで都会的な幸せを求めようとしたら難しいですが、今までの、東京基準・ファストライフの物差しではなく、田舎基準・スローライフの物差しで幸せ度を測る価値観を持てば、住みたいまちの上位になるでしょう。

そんな可能性を感じさせてくれるのが「ちびっこ増やし隊」というグループです。2012年に設立、今のメンバーは大人が13人。子供はメンバーというより、大人についてくるその時の人数で構成とのこと。

川上村に子供を増やし、子供を楽しく育てようというグループです。

最初に私が会ったのは、一昨年のことです。川上村のダムが完成しこれにあわせて「なんゆう祭」というおおきなイベントが計画されました。

このなんゆう祭をきっかけにむらづくりのプロジェクトを考えようという村民のミーティングに「ちびっこ増やし隊」中平さんと坂本さん、二人のお母さんが出てきてくれたのです。

中平さんは二人、坂本さんは三人の子持ち、30歳代。でも二人とも学生のような雰囲気のある、ファッショナブルな素敵な方々でした。

「私の旦那、木こりで猟師なんです」「子供を育てるなら自然がいっぱいのこの村がいいと思います」こんな自己紹介が忘れられません。

このむらおこしプロジェクトを考える「寄合」を進行・運営するのが私の仕事だったのですが、この二人のおかげでどれだけ助かったか!

どうしてもシニアや男性が多く、硬直しがちなむらづくりの会合が、彼女たちが子連れで参加することで、急に柔らかくのどかな雰囲気になり、出てくるアイディアもしなやかで豊かなものになりました。

「先輩の“川上マダム”から、伝統料理を習いたい。そんな教室には都会から参加したい女性がいるはず」
「水源地がウリの村だから、美味しい水を活かして“水源地スイーツ”を作ろう」
「ダムサイトを使って大宴会をやろう。まずは村人が顔を合わせる場づくりを」
「鹿肉を使ってバーガーを作りたい。起業したい」
「森で結婚式を挙げるってどう?」
「おかいさん(茶がゆ)を3種作って、“おかい3兄弟”で売ったら」

などなど、何度も繰り返した寄合でのアイディアは尽きませんでした。

こうした会合に子連れはダメと言ったら、その村に未来はないでしょう。これからを創る人たちの意見が入らないのですから。私は子連れ大歓迎で、いつも寄合をすすめます。

多少議事進行が泣き声でストップしても、その声が聞こえる村にしたいのですから排除したらそれでおしまいですよね。

参加のお二人もずいぶん大変だったはずです。お母さんは会議で話したくとも、そのうち子供は寝むくなったり、会議室で遊びまわったりですから。

グループのアイディアをまとめて発表する係になった中平さんが、熟睡する子を抱きながら、その重さに絶えながらも笑顔で発表し続けた姿、印象的でした。

さて、いろいろなアイディアが出た中で、皆がやりたいことは「宴」という言葉に集約されてきました。そして「なんゆう祭」の夜、寄合に参加してきたみんなが実行委員になり、他所の人と村の人がくじ引きで席を決め地元の味で宴会をする交流会を実行したのです。

この時、彼女たちは、鹿肉入りの肉まんを披露、大好評でした。大先輩のおばちゃんたちとも仲良く料理など。

そして何よりは、あの全国で大ブームとなった、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」ダンスで地元を紹介する動画を、川上村バージョンを創り上げたのです。

子供と一緒に原生林で撮影、役場や郵便局、学校などでみんなに踊ってもらって撮影など、その行動力とノリの良さは、ヤンママならではのもの。

そして、「スローライフ・フォーラム」のステージで、この動画を使いみんなの「宴」プロジェクトを紹介したのです。村の象徴の龍を型どった「龍のぼり」に子供たちの手形をウロコのように押して、それを持ちながら踊って踊って!のステージでした。

もちろんこれらすべてが彼女たちの「ちびっこ増やし隊」としての活動か、というと違いますが、その活動がきっかけで開花した動きではあります。

このフォーラムが去年の秋のこと、その後どうしているのかこの夏お二人を訪ねました。

中平さんは、鹿肉バーガーや鹿肉まんでの起業はいったんあきらめていました。鹿肉の処理施設が村にはないからです。「個人的にはこれからネットショップを開いて、川上村のいいものを売りたいんです」と燃えています。

しかし、「ちびっこ増やし隊」の代表としていろいろ顔を出すことが多く、「そこでの私の発言がみんなの総意ではないし、悩むことあります」と、確かに組織運営も含め悩んでいました。「スローライフの寄合では自分がすごく学べてよかったんですよ。お世辞じゃなくて」とも。ともに学ぶ機会がないのかもしれませんね。

坂本さんは、もと縫製工場だったところを借りて、「スキノマ」という工房を開いていました。ミシンと沢山集まった布に、これから作りたいものの夢が繋がっています。

「新作ですよ。魚の写真を布にプリントして作ったの」という、ふわふわのストラップをいただきました。かっこいい!川上村の道の駅でこういう面白グッズを売ってもいいのに、、、頑張って~。

でも「場は作ったんだけど、みんな来て、と個人で知らない人に呼び掛けることがなかなかできない。まだまだです」とつぶやきます。「ただ、すごく知り合いが増えて、広がった感じはあります。それは確かです」とも。

「ちびっ子増やし隊」は女性の生き方を考えたり、人口問題を研究したり、村おこしを考えたり、など、少しずつは関係しても、肩に力を入れて全員で同じことをしようというガチガチのグループではありません。

「隊」というゆる~いつながりを保ちながら、そこにかかわる一人一人が方向は同じく、でも違うことを、協力しながら楽しくゆっくりやっているようです。

だから、それぞれが悩み、壁にぶつかります。消滅自治体などと言われた村のグループだけに、期待は大きく、注目も多いでしょう。

いろいろなほかの団体や、近隣のママグループなどと交流しながら、グループとしての厚みや幅を広げる時期に来ていると思いました。

私が、はるか昔、子連れで行けるコンサートを企画したり、女性たちのサロンを開いたり、手探りでずいぶん頑張てやった時代といまは違います。

中平さんも坂本さんもフェイスブックを使いこなし、メンバーとの連絡はライン。スマホママたちは、軽やかに森を駆け抜けています。

「また、相談にのるからね。困ったらメールしてね」と言いながらも、、彼女たちは今流の田舎暮らし術で、悩むことも楽しみながら川上ライフを創って行くんだろうなと思いました。

(「川上村ちびっこ増やし隊」のFBもご覧ください。もちろん夢中で更新などしていませんが、雰囲気が分かります。笑)