ゆっくり体験

スローライフ運動

NPOスローライフ・ジャパンが応援する奈良県十津川村谷瀬で「ゆっくり体験」が行われました。昨年春整備した「ゆっくり散歩道」を歩き、今年3月にできた水車を眺め、名産の高菜漬けで「めはり寿司」を作り、むらの行事「餅まき」にも参加する1日。

定員20名が30名の参加となり、運営する集落の人たちはうれしいやら、あわてるやら。でも、とってもいい体験ができたと思います。

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4月12日(日)桜はそろそろ散り始めていますが、まだ残っている、そんな時期の催しでした。


前日には、奈良県立大学の学生さんが手伝いも兼ねて参加。集落の産物「高菜」について畑で学びます。


数日前に大きな葉を採って、もう塩漬けにしたそうで、畑には小さな葉しか残っていませんが、この葉もお浸しなどでおいしい。

公会堂では明日の餅まきに向けて、餅つきと餅丸めです。大きなお餅は最後に投げる、縁起の良い物。学生さんの参加であっという間に終了。実はこの後、食べた出来立て草餅きな粉つけがとってもおいしかったのでした。


さあ、「ゆっくり体験」当日です。参加者は、数日前まで17人だったはずが、あれよあれよと増えて子どもも数えると30人を超える人数になりました。まずは日本一の「谷瀬の吊り橋」を渡って。


出席をとって名札をつけて、出発!「ゆっくり散歩道」を展望台まで1.6キロ歩きましょう。この道は昨年春にオープンしたもの。


集落の中の生活道路に道標を立てて歩けるようにしただけですが、吊り橋に来た観光客がずいぶん歩くようになりました。


道のあちこちに桜をはじめ花がきれいです。急いで歩く必要はナシ!普段の暮らしを忘れて、ゆっくり、ゆっくり。


「あれはミツバチを飼っておるんだよ」「わ~~、それじゃ谷瀬ハニーでスイーツ作れますね~」

この道は、集落の人たちで木を伐って展望を確保してあります。ほら、棚田も、キウイ棚も、大きなナシの木も見える。そしてその向こう、写真の左上には谷瀬自慢の手造り水車が。


京都、大阪、奈良、名古屋、和歌山県紀の川市、東京、各地からやってきた人たちが、ゆっくり歩いておしゃべりをして、だんだん友達になっていきます。そして、谷瀬の人から説明を聞いて、どんどん谷瀬が好きになっていきます。


途中、少々急な階段もありますが、最後、森の中を抜けると突然この眺望が!左手に見えるのがさっき渡ってきた「谷瀬の吊り橋」です。「今度、お弁当を持ってまた来ようね」


おなかがすいた~~~。さあ、公会堂で「めはり寿司」作りです。高菜漬けを細かく刻んでご飯に混ぜて、俵型に握り、それを大きな高菜の葉で巻きます。海苔などない山の中、おにぎりといえばこれ、「山に行くにも、学校に行くにもこのめはり寿司だったなあ」と、地元の人。

高菜の甘辛煮も、これは子ども達に好評。こうすれば野菜を食べますね。十津川村特産の肉厚シイタケ入りのお味噌汁もおかわりする人が多く人気でした。


大きなおむすびを、大きな口で、大きく目を開いてガブリと食べる、だから「めはり寿司」なのだそうです。この坊やは本当にガブリ、「おい、大丈夫か?」とお父さん。


少し休んで、水車で記念写真。通りがかりの若いお兄さんたちも一緒に。「この水車、発電し、蓄電した電力で夜は自らをライトアップしているんですよ。いずれここで携帯充電できるようにします」と説明が。


さて、この日のクライマックス、餅まきです。谷瀬ではたくさんのお宮さんがあり、それぞれで餅まきが行われます。この日は2ヶ所の社の合同餅まき。まずは神事の後、いよいよ準備万端で・・。


まずは、袋菓子から~~~~~。それ~~~~~!
続いて、昨日丸めたお餅を、
それ~~~~~~~~~~!
みんな、興奮興奮!

都市部から、それぞれお1人でみえた女性たち。3人とも生まれて初めての餅まき体験とか。その割にはしっかり拾い、地元テレビ局のインタビューにも応じていました。


これにて「ゆっくり体験」の終了です。谷瀬集落、大字の総代さんが深々とご挨拶です。村おこしというと、とかく役場の人がだんどって、住民がそれに従うことが多いのですが、十津川村は、また、谷瀬は特に住民主導。なんといっても、あの吊り橋を自分たちのお金で掛けたという自負があります。

「いろいろ不手際があったとは思いますが、これからもこういう催しを続けていくので、またいらしたください」この言葉には、「そしていつか、人が減るばかりのこの谷瀬に移住してきてください」という想いが込められているのでした。

日本中で、美しい小さな集落が消えつつあります。でも、こうして工夫すれば、他所の人と交流し、むらの可能性も見えてきます。

そして、参加者たちは、都市部では体験できない“ゆっくり”した時間をお土産に、来た時よりもずっと晴々した顔をして「またね~~」と帰路に着いたのでした。