この夏の贈り物

ちょっとしたこと

印象深かったのは佐賀でいただいた「レモングラス」と、岩手県遠野から届いた「夕顔」です。

ススキのように元気なレモングラスはハーブティーとして味わい、根元は植えると、今や再びススキのように育ちました。

巨大な夕顔は皆で分け、指示通りに調理すると素朴な一品となりました。

いずれもプレゼントしてくださった方の心が伝わるもの、出来合いのお土産よりずっと素敵です。
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佐賀の市民団体「オリザジャポニカクラブ」(地域が誇る食材、農業をテーマに食文化の発信や食育活動を通じて、地域を元気にするという集まり)から招かれ、この夏お邪魔しました。

その際に、メンバーのお一人の畑に「レモングラスが茂っているから持って行っていいよ」という情報を聞いたのです。

レモングラスといえば佐賀県武雄市が市の名物として育て上げたもの。もちろん暖かい地方どこででもできるのですが、同じ佐賀県で、武雄のご近所でレモングラスをいただければ、何だか満足した気分です。

でも暑いし、その畑のあるところに行くのは遠回りになるし、で、いいそびれていたのですがその私の気配を察したこのクラブの代表が、「レモングラス採りに行きますか」と言い出してくれたのです。

心のなかでラッキーと叫びながら車に乗せてもらうと、着いた畑は、あらま~草むらでした。

大学の先生が借りている畑、夏の間手を入れられずにいるうちに草が茂り(今はきれいな畑になっているそうですが)、とても入っていく環境ではありません。

しかし、果敢にもご案内のクラブ代表は草むらに分け入ってくれたのでした。どう見ても、ススキです。お嬢様(私)はただ見ているだけ、です。

代表は汗だくです、しかも、ススキのようなレモングラスで腕は切り傷だらけです。(すまん!)でも、切っている端から香ります。真夏の炎天下が香りでさわやかになっていきます。

こうしてこのススキ、いや、レモングラスを大事に抱えて飛行機に乗ったのでした。

佐賀市内の飲み屋さんでは最後のお茶にレモングラスが混ざっていました。すっきりします。それを思い出し、帰宅後、我が家では麦茶を沸かすときに少し入れました。

レモングラスの、フレッシュハーブ入りの贅沢麦茶が完成。飲むほどにさわやかです。何人もで分けましたが、それでも多い。残りはベランダで乾します。

「根元の茎の太いところは、魚を煮るときにいれれば臭い消しに。ご飯を炊くときオリーブオイル少しと茎を入れればエスニックライスに」とご指導もいただいたのですが。

結局やらずにコップに活けておくと、まあ強い!さすがハーブ。どんどん根が出ます。それを鉢に植えたら、今や事務所のベランダにススキの風情に成長しました。

お土産のお菓子ならその時食べて消えますが、こういうお土産はずっと生き残る。眺めるたびに、暑さの中で採ってくれた方のことを想うわけです。

一方、こちらは夕顔です。ある日、事務所に巨大な段ボールがドデンと届きました。岩手県遠野市商工会の知り合いの女性からです。かなり重い、中のものにあわせて段ボールを変形して梱包してくれたようで、送ってくださった方の努力の跡が。

「なんだろう?」空けてびっくり、中からはヒスイ色の「夕顔」がこんにちは~と出てきたのです。

メッセージもありました。「シーチキンと炒めて麺つゆで味付けるといいです」贈ってくれた彼女の笑顔が浮かびます。「青南蛮で辛味をつけるといいです」という指導もあり、夕顔は家来のように、青唐辛子を従えていました。どれどれやってみよう、うれしい~~。

でもその前に、この巨体を眺めたい、さすりたい、抱きたい衝動にかられます。畑に、どんな格好でこの巨体があったのか。スーパーにはどうやってゴロンゴロンしているのでしょう。考えただけで笑えます。

以前、この夕顔を他の土地で見つけたときに、知り合いの旅館に送り、夏の間、その旅館のロビーテーブルに飾ってもらいましたっけ。

そんな思い出のある夕顔です。今まで、ただサッと煮るだけでしたが、今回はお教えの通りチャレンジしました柔らかい、穏やかな、夏の味となりました。

遠野の家庭でもこのおかずが夕飯に並ぶのでしょう、夕顔をたっぷり口に含んでご飯と食べると心が落ち着く美味しさです。なぜかビールにもあいます。

「使い切れないと思うので、切って冷凍して置くといいですよ」アドバイス通り、保存しておきました。最後の少しが残っています。さあ、これを料理して、この夏の終わりとしましょうか?

ベランダには佐賀、食卓には遠野、いい人たちからのいい贈り物、感謝です。