「風の島」ってなに

お仕事で

鳥羽市菅島のことは、何度も書いてきました。伊勢海老の干物を初めて作った時のこと、その干物に行きつく、島のもともとの「干す文化」のこと。
http://noguchi-tomoko.com/modules/yutoriaruki/details.php?blog_id=229&date=201310

そして、一昨日、島に伺った時は、みんなで「風の島」であることについて考えました。

風があるから干す、だから究極の伊勢海老干物も作ったわけですが・・・。「で、どんなふうに風の島なの?」と問うと、島の人は???だったのです。

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菅島のパンフレットにはこうあります。「風の島 この島の干物には旨い理由があります。豊饒な海で育った島の幸 伊勢神宮が鎮座する西から吹く潮風 降り注ぐお天道様の恵み いにしえより受け継がれる島人の知恵 天地和合の理 本物はどれが欠けても完成しない。旨さの極みがここにあります。」

名文です、確かにその通りで、ここで伊勢海老の開き干しが完成したのも理に適ってのことでしょう。

伊勢海老を干物にしたのは、ここの旅館組合が中心でした。そして、今は漁協青壮年部が古くからのここの伝統の味「サメのタレ」を商品化すべく動いています。

この3月までの年度の中で、菅島は大忙しでした。伊勢海老の開き干しができてから、マスコミの取材は半端でなく、月に数本の新聞・雑誌・テレビが報道しています。

「風の島」「干す文化」「究極の干物」→「伊勢海老の開き干し」というストーリーがわかりやすかったのでしょう。

助成金をいただけたこともあり、波に乗って伊勢海老は「1000匹干し」という歴史上初?!の事業が展開され、その伊勢海老は東京・六本木ヒルズで焼かれお客様にお振舞となったのでした。

取材の対応やイベントや、小さな島で少人数で対応するのですから、みんなクタクタ。事業報告をまとめる今頃には、旅館の方々は力尽きた感じも見受けました。

でも、「サメのタレ」はまだまだこれからで、青壮年部も漁協に所属しながらも、電気屋さんだったり整骨院だったり、いろいろな人がかなり集まっているので、発想やマンパワーも余裕がある感じです。

まあ、いずれにしても、縦割りでなく、旅館や漁協が一緒になっていろいろやることはいいことで、助成金がきっかけで挑戦できたことは皆の栄養になったはず。

新年度からが、本当の地に足のついた活動ということになります。そこで、です。少し意地悪な質問をしてみました。

「風の島、とパンフレットなどにもあるけど、どのくらい風が強いの?それはどんな風なの?」

車座になった日焼けした男性たちが、「う~~~~ん」と口ごもりました。どうも、どのくらい風が強いのか、いつどのくらいの風がどう吹くか、菅島の風データがないようです。

漁師さんたちは、命がけですから、いつも風向きや風の強さは気にはしていても、他に比較して、菅島の風がどうなのか?は答えきれません。「確かに、強いよ他よりは」という程度の答えです。

「それじゃ風の島って胸を張って言えないじゃない」と意地悪おばさんは詰め寄ります。他よりもこう違うから風の島、住んでいる人がこれだけ風に敏感だから風の島、風を利用しきっているから風の島、と胸の張り方はいろいろあるはずでしょう。

「秋から冬にかけての西からの風は、いい干物を作る」これは満場一致でみんなが納得していること。それがたまたま「お伊勢さんの方角からの風」であることで、神がかった干物ができるという物語も仕立てられるのですが。

それならばもう少しというか、かなり、風についてこだわったり調べたりしたっていいんじゃないの、というのが野次馬としての私の意見なわけです。

「風速は漁の時に毎日見てるから、誰か記録しろや」「船着き場に風速計でも置くか」「かつて、島の特色として、マイナスのこととして風のことを言ったら、コンサルタントの人からそれを売りにしたらといわれたんです」などなど、ようやく風話がで始めます。

この1年、事業を追いかけてきて、根本的なコンセプトのところはみんなでじっくり話す時間が持てなかったんだよね。

例えば、北海道江差に行ったとき「この辺の春の強い風、ほっぺたを拳固で殴られるような風を“馬糞風”という」という話を聞きました。菅島では、風の呼び名はないのでしょうか?雪国では、雪の呼び方が細分化され、微妙な違いを表現しています。

風の島なら、風の呼び名も細分化されてもいいのでは?季節ごとの素敵な呼び名があってもいいでしょう。なければ作りましょうよ。菜の花風とか若芽風、海苔風、拳固風、糸風、いろいろできそうですね。

この時期にはこんな風が吹くからこの辺りではこんなものをこう干すとか、風と干す文化が組み合わさった絵で見るかわいい「風暦・干し暦」など作りましょうよ。

そして、風の研究の極みとして今度は食べ物ではなくて「海風浴」の島にしましょう。

水に浸からなくても、海風に吹かれるだけで、身体はミネラルを浴びて元気になり免疫が高まるとか。それを、観光メニューにしていきましょう。つまり、人間も干せばいいのです。

風速?メートル以上の強い風なら、都会のストレス3か月分は吹き飛ぶとか、風速??メートルなら、大失恋の悲しさはきれいさっぱり飛んでいくとか、多少そんなお遊びのある海風浴もいいですね。

人は、時おり無性に海を見たくなる。それは、実は見るだけでなく、海風浴をして身体をリフレッシュしているのだとか。それなら、島に海風浴ポイントも作ってあげましょう。風が吹けば嫌、じゃなく、ラッキーとみんなが思えるように。

私のように、はっぱをかけて演説して帰ってくるのは簡単ですが、菅島のみなさん、しんどくてもこの4月からは「風の島」と「干す文化」を本当に自分たちのものとして語れるように
なりましょうね。

そうしないと、せっかくの「サメのタレ」も、ただのサメの甘辛い干物。風の島の伝統の「サメダレ」と名乗れませんよ。

頑張れ、菅島。おばちゃんは応援してますよ。

あ、そうだ、菅島はもっと女性がむらおこし、しまおこしに参加できるような体質にしないとダメ。男性だけが集まる会合には未来がないもの。と、また風当たり強くしてしまった・・・。"