観光施設だって・・。
16年前に開業の昔体験ができるミニテーマパーク、お城の形をしたお菓子がズラリのドライブイン・・・。このような少し前の体質を引きずった観光施設は、団体バスはともかく、個人客がわざわざ立ち寄るところではなくなりつつあります。
日本中のこういう施設を、お金をかけずに何とかうまくリニューアルできないでしょうか。大変ではあっても、まだまだやりようはありそうです。
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この冬から南信州の地域観光をみんなで考えるワークショップをやっておりますが、“従来の観光施設をどう活用するか”というのも課題でした。「もう、時代遅れだよ」といってしまえばそれまでです。
がんばって営業すれば観光バスは来てくれるのでそれなりの売り上げはある、でもこの先はと考えると、このままではいけないのは分かっている。でもやり直すようなお金はない、やめてしまったら地元の職場も減る、などなど、抱える問題は山盛りです。
今すぐできることはないか、好いところを伸ばして、少しでも良くならないか。それをみんなの目で探そうと、観光客気分でうかがいました。
飯田市内の「かぶちゃん村」という施設。パンフレットを見るかぎり、ここが何なのか?分かりません。経営者が変わったりして施設名も変わり、地元の人にもつかみにくいところになっているように思えます。
でも、入ってみると先ずは「ヒトガタ」で厄払いする装置が。
地元のお祭りのしつらえを模したものです。暑い日でしたが、これは炎天下でもやってみたい。
施設内にある神様に、水引を縛って歩くと願いが叶うという仕かけもありました。いい季節なら、なかなか楽しいメニューです。普段触れることのない、地元飯田の産物・水引に触ることにもなります。
もともとこの辺では養蚕が盛んで、紬も織られていたとか。その体験もできます。「前から織ってみたかったの」というお仲間が、集中して織っていました。
出来上がったコースターはナチュラルな色。バックの深い緑が桑の葉です。
繭もどっさり展示されていました。これだけの繭から生糸を紡ぎ、初めて着物一着分の布ができるそうです。
繭を使って人形作りも。道具が揃っているのでサッとできます。私は、我家のハムスターを作ってみました。
広い施設でみんなが勝手に遊んだ後、集合場所で待っていると突然“じゃんけんおばさん”登場!カラフルコスチュームがすごい。
じゃんけんに勝つと粗品がもらえ、負けるとハグハグ。楽しい楽しい!
ああ、おもしろかった。こうして遊べば結構いい施設です。と思えますが、ここで紹介した部分は、私の印象に残ったことを集めてある訳で、おそらく広い施設の中ではこのポイントが分かりにくいのではと感じました。
「ヒトガタ」厄除けをした後に、その場に少しまどろむところがあれば、次に来た人と会話ができますね。体験し終わってハイ終わりではもったいない。
ここに、地域のおじいさんなどが居て、昔の厄除けの話など
してくれたら、ここだけで30分は居たくなります。この「厄除けじいさん」は、時々、釜のお湯などを回りに撒けば打ち水効果で涼しくもなる。
水引を結ぶのも、これまたそれでおしまい。結んだ形でまた何か占えれば、さらにおもしろくなる。それぞれの神様に違う色の水引があってそれを集めてきて、最後に数色で縛るとか、それを編んで何か作って帰れるとか。これも「水引ばあさん」が編み方指導や水引の話をしてくれたら、いいなあ。。
「機織り」を前からしてみたかった、という人が参加者の中に何人かいました。それなら、ここに通うパスポートを作り、紬に限らず、マフラーやショールも織れるようにしてあげれば。
太い毛糸のものなら2日間くらいでできるはず。地域のカルチャースクール的な場にもできます。
養蚕が盛んだった地なら、数本の見本桑だけでなく、たくさん桑の木を植えましょう。ガーデニングはやったことがなくとも、地域の高齢者は桑の手入れは出きるはず。「桑爺」「蚕婆」はご近所に健在なはずです。日本初の“桑の木庭園”にしてもいい。ここの木・花をもっと考えるといいでしょう。
繭を使った動物作りは見本があって、マニュアルどおりにやるシステムでした。「こんな見本どおりにやりたくない」という、私のようなひねくれ者に対応するノウハウがありません。
「この台はいりません」「この切ってあるパーツもいりません」「指導もいりません」こういうお客をどう扱うか?上手に放っておくことも、もてなしの一つでしょう。
“じゃんけんおばさん”の迫力には負けました。人はじゃんけん一つでこれだけ楽しめると教えてもらった感じです。
「かぶちゃん村」さん、がんばれ!先ずは、近くの地域の高齢者に自分の場として通ってもらえる、村になったらどうでしょう。
お年寄りを雇うのではなく、ここで過ごしてもらう、そして何か役割を楽しんで担ってもらう、そんなつながりを起こしましょう。帰りに温泉に入ってもらえば、喜んで通ってくれるはず。
観光施設は、先ずはご近所に愛され、地元の自慢くらいにならないと。
続いて「お菓子の里 飯田城」に行きました。入るといきなりたくさんの店員さんが試食をすすめてくる、そういう施設です。一応、製造工程の見学もできますが、なんとなくここに居ると「やれ買え、それ買え」といわれている感じで、居心地悪くなってきます。
店員さんの笑顔はすばらしく、とてもいい感じ。なので、なおさら試食した以上買わねばならないという感じに追いやられて行きます。
でも今回、地域観光を考えるグループが来るということで、お店はチャレンジしてくれました。“水比べ”、正確には“水当て”です。
飯田市内には「猿庫(さるくら)の泉」という泉があって、
お茶の世界では有名な名水です。その泉の水を汲んできて、
「さあ、飯田の水道水と、泉の水と、AとBどちらがどっち?」という出題を用意してくれました。
紙コップに各人汲んで座ります。みんなかなり真剣です。
自分で汲むひと手間が、またいい・・・。
意見は半々くらいに分かれました。「こっちは味がある、こっちはさっぱりしている」「これはいつも飲んでいる味、こっちはおいしい」など、論評もいろいろ。
この間、お店の方が、飯田のお菓子の歴史について話してくれました。ミニ講座です。そして、最後に水の正解を発表!当たった人は大喜び、私は見事にはずしました。
この“水当て”は早朝に水を汲みに行く苦労はありますが、きっとこのお店の名物になりますね。名水の歴史・いわれや飯田のお菓子文化の話をうかがいながら、ここでお水と共に試食もあれば、試食はひとつのカルチャーとして味わうことができます。そして、その後はじめてお財布が開くのではないでしょうか。
売り場では無理でも、ここの場所だけは季節の花を美しく飾り、「物と金のやり取りだけ」の世界にならないように工夫する。
「水話」や「お菓子話」を毎日従業員の方が交代ですれば、お客様との関係が、売り買いだけではない質の高いものになるはずです。
お菓子というのは、そもそもそうした「くつろぎ」や「人の繋がり」「季節の鑑賞」などの世界にあるものなのではないでしょうか。
「飯田城」さん、がんばれ!泉を汲んできたお店の方の心意気と店員さんの笑顔は素敵です。毎日誰かが語る「お菓子講座」を、そして毎日やっている「名水当て」をリクエストです。行けば、必ず「猿庫の泉」が飲める、というだけでも話題になるでしょう。
今回はこのあと、参加者でミーティングし山ほどの意見を出しました。単なるお客様からのクレームではなく、同じ仲間からのあたたかいアドバイスは参考になることばかり。
こういう磨き合いがこれまでなく、同じ地域の観光業者同士が
敵だと思ってきたならば、地域ごと良くなっていくことは無理です。
お互いが良いところをほめあって、利用しあって連携して行きましょう。従来型の観光施設だって、まだまだ、なんのなんの、可能性は無限ですよ。"