お元気歌声商店街

お仕事で

「おばちゃんストリート」を名乗る愛知県瀬戸市・末広町商店街では、中高年の女性が客層の中心なのに“何やらわからん今の曲”が聞こえているのはしっくりこない、とアーケード全体に流す曲を「唱歌」にしました。

毎日11時にはラジオ体操も流します。お客様はなつかしい歌を歌いながら歩き、寒さに縮こまっていた店主は外に出てお互い汗を流すようになりました。

“おばちゃん”をテーマに商店街活動をしている末広町のことは以前から書いていますが、これは本当にいいアイディアです。

商店街はもちろん、ホテル・旅館、個人店舗など物が売り買いされ、サービスが行われるところで意外に後回しにされるのが音です。音を流すという発想すらないところもあります。

別に選び抜いたこだわりの音楽でなくていいのですが、そこにいる人をどのような音で包んであげるのか意識していないところはダメという話です。

音楽などいらない、威勢のいい呼び声、シズル感ある音で演出、もあるでしょう。ホテルなどで朝、鳥の声を流しているのも一つの選択です。または静寂で包む選択もあります。

地方の商店街で経験するのは、年間同じ有線を流しているだけの無神経さ。クリスマスと年始はどこでも同じ季節物になりますが、他は商店街の現実とかけ離れた音楽の登場となります。

ほとんど人気のない高齢者が利用する商店街に流れる、にぎにぎしいヒットソングほど寒々しいものはありません。音楽とお客さまの現実と距離がありすぎる、そんな曲を平気で流している商店街はお客様に「来るな」と言っているようなものです。

末広町では店のおばちゃんたちが、お客のおばちゃんたちのために考えました。「音楽に敏感な商店街になろうといっても、そんなしょっちゅう音のこと考えてられないよね」「演歌だと趣味が出すぎるし」などなど話しているうちに、唱歌の有線メニューを誰かが探してきました。

「童謡なんかみんなで歌えるからいいよ」「ね、それならラジオ体操も流さない?朝の6時半は無理でも商店街で決まった時間に流せばみんなできるじゃない」というわけで、昨年10月からはじめています。

秋は「め~かくしおにさんて~のなるほうに♪」「かきねのかきねのまがりかど~♪」「か~ら~す~なぜなくの~♪」なんて歌が流れていました。

お客様よりベンチが多いくらいのアーケード、音楽は写真に映りませんが流れる唱歌がガランとした商店街に一休みししていけばと雰囲気作りをしています。八百屋さんが「なつかしくていいね、お客さんと歌のことで話ができるもの」と語っていました。

先日うかがうと「きたかぜ~こぞうのかんたろう~♪」おばあちゃんと子どもが一緒に、歌いながら普通に歩きすぎます。「おうまのおやこはなかよしこよし~♪」カートを押して歩いていたおばあちゃんは歌にあわせて「ぽっくりぽっくり」リズミカルに歩いているようです。

これならきっと末広町から戻ると、今日聞いた曲を家でもつい歌ってくれているはずです。よかったよかった。なにより商店街のおばちゃんが流れる音に気を使えるようになったことが進歩でしょう。

さあ、ラジオ体操の音楽が始まりました。これまたなつかしいラジオ体操第一です。店の中に引っ込んでいる店主や、店番のおばちゃん、買い物に来ていたおばちゃんも「はい、大きく胸を開いて、いち、に、さん、し!」

アーケードを見渡すとそこここで体操中。歩きながら首や肩をまわしている買い物おばちゃんたちも。体操が終わるとああ、すっきり。みんなに一体感が育ち、身体も温まり、いい感じになりました。

これ、いいですよ。全くお金のかからない商店街活性化手法、おばちゃんの知恵です。

下の写真は「おばちゃんストリート」で売り出した、おばちゃんハンカチタオル。