いい店の条件
観光地や商店街のコンサルタントなどやっていますと、「全国のいいお店をご存知でしょう」といわれます。相手がどんな“いい”を求めているかは様々ですが、この前行った諏訪市にはこんないいお店がありました。
「イケメンがいて、ひとつ学べて、長く居られて、心あたたまるお店」、私なりの基準では最近は地方の方がいいお店が多いように思えます。
漬物文化の諏訪ですが、こんな素敵なお兄さんが漬物を漬けているとなると、ますます食べたくなるし買いたくなっちゃいます。ね、イケメンでしょう?「漬物は身体にいい、うちの漬物は旨い、この仕事が好きだ」彼の漬物に対する想いが、自然にお顔に繁栄されます。
「こんなところで、こんな商売で・・」といじけていたら、それは必ず顔に出ます。走りよって腕を組みたいイケメンかどうか、造作よりも輝きの問題。ここのセロリの浅漬など、数日後、麻布の私の通う合気道道場で若い女性たちに絶賛でした。
居酒屋で遭遇した「利き酒セット」。地酒の蔵が多い諏訪の、各種お酒を利き酒できます。「辛い」とか「甘い」とか、一応判断基準のアンチョコは渡されるのですが、これがワカラン。でも、地元の人は「あ、これはアレだよ」とぴぴっと分るようです。
全正解して名前が貼り出されている人などは結構自慢げで、にわか酒講座が始まります。「この蔵とこっちとは、こう違う」などご指導を受けお酒を学べば学ぶほどに酔っていくのですが・・。
諏訪は味噌の産地でもあります。この味噌屋さんは味噌を売るだけでなく、味噌料理のレストランもやっています。ここのお花が素敵でした。天井から流れる餅花、入り口に小さくいけられた珍しい仏手柑、床の間の巨大な南天とコケのついた梅。
何も買わず、何も食べずに店をウロウロしているだけなのですが、古い民家と古い調度品にすばらしい生け花の映えること。外には味噌樽を使った足湯、どなたでもど~ぞ。このお店から「もっと、ゆっくりしていけばいいのに」といわれている感じでした。
店というより、諏訪で泊ったホテルでのことです。ふと見ると「大切なお知らせ」というのが貼り出されていました。お客としては「うん?」と近寄って見ます。
要はこういうことでした、ここのホテルの石庭に一羽の孔雀が時々やってきて、お客様に人気だったとか。その孔雀が怪我をして今入院中、しばらくゴメンナサイ、というお触書です。大腿部骨折だそうで、獣医さんの診断書も貼り出されていました。
読んだこちらは思わず微笑みます。なんともいい話です。どこかで怪我をした孔雀はかわいそうですが、ホテルの人が孔雀を抱いてすわ一大事と獣医さんに駆け込む姿が目に浮かびました。温泉と同様、心がほのぼのと温まりました。
こういう店やホテルに出会うと、ああ、諏訪っていいところだなあ、と思います。また買い物したい、また泊りたいと思います。豪華なハードよりも、こうしたことが今の時代の“いい”、なんじゃないかな~。"