世田谷線に乗って

ゆとりある記

東京・世田谷区内、三軒茶屋から下高井戸まで10駅を結ぶ世田谷線。都内の貴重な路面電車。

とはいえ、全5キロのほとんどは専用軌道を走り、車両もスマートで現代的。一見高速で走りそうなのですが、駅間1キロ未満とならばスピードも出せません。最高でも40キロとか。

窓の向こう、都会の庶民の暮らしが、妙にのどかに見えます。あ、銭湯も発見!17分間、エコ・スローな旅です。

「世田谷線散策きっぷ」320円を買いました。1日乗り放題のお得な切符です。ほかにもお仲間がちらほら。世田谷線は京王線・小田急線・東急田園都市線を結んでいるので平日通勤時はかなり混むそうです。でも休日はレジャー気分で乗れる緩やかさ、カラフルな2両の電車です。

同行の夫が先ず言ったこと、「駅員さんの感じがいいね」。それは私も同感。切符を買ったりパンフレットをいただいたり様々質問したり、その間の、制服のおじ様たちの笑顔が素敵です。

こんな愛くるしい電車を走らせている人たちが、ギスギスしていたらのどかな気分になどなれません。パンフレットを読んで納得、世田谷線では全従業員が「サービス介助士」の資格を持っているのだそうです。

成人式の日です、とにかく下高井戸まで行ってみよう。車内では晴れ着の女の子たちがはしゃいでます。それをニコニコ座席からおばさんたちがながめています。

窓の外は、と見ると普通の東京のまち。特に観光地ではないのですからそれはそうなのですが、いやいやそれが新鮮に見えるのはスピードのせいでしょうか。

歩くといろいろなことが見えてくる、といわれますが、それと同じ感じ。遅いというのは観察できること、小さなことに気づきます。

「あのうちは、休日洗濯大会。こっちのうちは、布団干し大会だわ~」沿線の木や花もじっくり見れます。「わあ、夏みかんが見事だね。ピラカンサの実にメジロがいるよ」なんでもない景色が、楽しくて楽しくて。線路際にはスイセンが満開!

「おい、電車が信号待ちだよ」これまた夫が喜びました。環状七号線と交わるところでは、信号で電車が止まり、車が横断するのをジッと待っています。世田谷線、偉い。

「松陰神社前」駅で降りてみました。商店街を歩いた先に吉田松陰を祭った神社があります。こんなところに歴史の一場面が・・・、松陰さんの坐像を見ながら、様々考えてしまいます。

駅に戻ろうとすると煙突です。私の大好きな銭湯を発見です。「ここはちゃんと来て、ゆっくり入ろうっと」だから今回は入り口だけ。

車をブイブイ飛ばさなくとも、遠くに行かなくとも、いい休日になりました。270㌔、300㌔なんてスピードの新幹線で走り回って乗り継いで、という普段の時間に追われる1日と、全く違う自分になれます。

都会人は、月に一度くらいは、エコでスローなライフスタイルを世田谷線から教えてもらわなければ、と思います。