高齢者百貨店

ゆとりある記

東京・大田区の大森駅近くにある「ダイシン百貨店」。地域高齢者の味方として話題に。ついに行って来ました。高齢者に便利なサービスでは刺身売り場の少量コーナー、在宅高齢者向け出前弁当、当日配達も。懐かしいものでは食堂でのスパゲティ・ナポリタン、歯磨き売り場の粉歯磨き。きめ細かい心遣いを各所に感じます。自分の居場所のように、お年寄りがくつろいでいました。

この百貨店は只者ではない!というのを、身を運ぶと実感します。今、2012年完成を目指して、建て替え工事中なのですが、「工事中でも平常営業」という看板が屋上に掲げられています。店を閉めて工事すれば効率的なのに、お客様に迷惑がかかると、わざわざ半分ずつ壊して建てているのだとか。一体この非効率は何なのでしょう。

売り場面積が減って、フロアにはゆったり感はありませんが、それでもこの店をいつも利用している人には「閉まったら困るよ」という気持ちがあるのでしょう。店内あちこちには完成予想図や模型が飾られて、店も客も「私のダイシンが着々とできている。それまで皆で多少不便でもがんばろう」と思っている雰囲気。店とお客が恋人のように愛の絆で結ばれている印象です。

だからなのでしょう、日曜の昼なのに店頭は自転車で一杯。普通のスーパーなら夕方の混み方です。こうして早い時間に買い物すれば自宅まで届けてくれるのだから、お互いが愛し合う、わかります。

高齢者に的を絞っているだけあって、フロアごとが昭和の博物館的ムード。こんな昔のアイテムを今、どこから探してきたの?というくらい懐かしいものが新品で現役で並んでいます。着物の襟拭き剤などは普通置いてないし、あっても1種類なのが、ここには何種か。付け襟なども普通1種なのが2種。という風に、若者主体の物差しでははじき飛ばされたような商品が、胸を張って並んでいます。

食堂もにぎわっていました。500~600円くらいで食事ができるので、高齢者だけではありません。子ども連れの家族も陣取っています。枝豆をつまみながら、ビール大瓶をゆっくり飲んでいるおじいさん。車椅子のおばあさんも。合い席はあたり前です。

皆が手慣れていて、セルフの食堂を上手に使っています。辛子やタバスコの位置、爪楊枝のありかも知り尽くしているようです。ウロウロしている私に、おじいさんが「水はそこだよ」と教えてくれました。一人で飲んで一人で食べても、ここならさみしくありません。なんだか皆がダイシン家族みたいなのですから。

帰りに生鮮食品フロアを覗くと「○○の△△さんが今朝の□時に起きて採ったトウモロコシだよ~、試食して~」と茹でたてを勧められます。シャキシャキ甘くておいしい、と食べながら行くと「多量・新鮮・安い」の売り場内に「少量コーナー」もありました。肉も魚も少しずつ、一人暮らしのお年寄りにはほんの少しのお刺身など助かるでしょう。

私の自宅近くのこ洒落た店では買えない、オバサン仕様のジーンズとオジサン仕様の夏下着を買って、おもわず「大森に引っ越したくなっちゃう」とつぶやく私でした。