千々石休み13「棚田です」

ゆとりある記

棚田へ行こう!と夕方近くに出かけました。「ちぢわもん」という名の、地元の農産物や加工品を売っている店に寄ると、ここに来ていたおじさんが「案内してやる」と車に乗り込みました。由利さんはちょっと道を聞いただけなのですが、おじさんは棚田が自慢でしょうがないようで、棚田語りをしながら道案内です。

「千々石の人は、浜の石を一つずつ運んで積み上げて、これだけの棚田を造ったんだからね・・・」「この細長い田は120メートルあるよ」「ほら、この辺りから見てごらん、すごいよ~」おじさんが自慢するのも十分納得できる風景です。

一通り説明を受けた後、車には帰っていただき夫と私で棚田時間を過ごしました。この棚田を前には声も出ません、ただ惚れ惚れするだけです。お米を作るための装置なのではありますが、計算し尽した庭園のようでもあります。

足元には緑の波に飲み込まれそうな集落、向こうにはきらめく海。日が動くとその緑の田が、少しずつ色を変えていきます。金色に輝きながら動き回るのはおびただしい数のトンボ、写真でちゃんと撮れたでしょうか。墓場での撮影と同様、夫はここから動きません。

で、私はまた“のんびり”をします。棚田の脇の農道にゴロン!夕方でもう涼しいのですが、コンクリに残る熱が背中の汗を乾かします。坂に寝転がって見る棚田、チョロチョロと耳元に水路の音。時々、海のほうから風が吹き、稲の1本1本をお辞儀させながら私のところに届きます。なんてきれい、なんてきもちいい。この風に吹かれるために、私たちは東京からやってきたのでしょう。

棚田から降りて、帰る田んぼ道。バックを振りながら歩く私の影が稲に伸びます。はるか向こうにはこの前ドライブした山、そして雲。またくるからね、来させてね~と呼びかけました。