綾部、再び。

お仕事で

昨年5月、「スローライフ・フォーラム」でお世話になった京都府綾部市。このたび、私の仕事として通うことになりました。綾部市では、いわゆる「限界集落」を「水源の里」と呼んでいますが、そのいくつかの里に入ります。昨年は、「綺麗」「気持ちいい」「美味しい」と絶賛しましたが、そうであるならばその「里」を維持するために何か恩返しをと思います。何が出来るかわかりませんが、これからが本当のお付き合いになります。

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昨年5月にうかがった、「水源の里」老富。今回4月にうかがうと、八重桜が美しく出迎えてくれました。NPOスローライフ・ジャパンのメンバーで「ぜんざい」をご馳走になった茶店に、今回は市内にいくつもある「水源の里」のメンバーと立ち寄ります。お互い「里」同士がもっと知り合おうというバスツアー企画、そこに私は混ぜていただきました。

同じ「水源の里」でも、ここは初めてという方々が。近くでもお互い知らないものですね。

老富の自慢は、「ミツマタ」と「シャガ」。ミツマタの花はもう終わり、昨年は鹿に食べられてしまったシャガが、今年は結構咲いていました。強靭な根っこで増えていき、地中で繋がっているシャガ。「水源の里」もこんな風に繋がって花を咲かしていってほしいなあ、と、ホンワカ思います。

昨年は綾部市の、ほんの上っ面しか知りませんでした。蔵をリフォームした本格的讃岐うどん屋

わあ、筍に因んだ占い・お祭りのある神社には、こんな素敵な筍紋が。

蚕から絹織物まで作る、女性にも会いました。この見事なツヤのたて糸を整経するまで、どのくらいの時間がかかっているのでしょう。

かわいいイタリア料理のお店で、夕飯もゆっくりいただいて・・・。

と、綾部で気に入ったことばかりを、Facebookに載せるように、小旅行ブログ風に書くのは心地よいし簡単なのですが、そうはいきません。

きれいな流れの土手を歩いて、巨木を見に行く途中。「綺麗な水ですね、空気も美味しい」と私がつぶやくと、前を歩く高齢の男性がつぶやき返しました。「みんな綺麗、綺麗って言うけど。帰って来やしない!」

本音でしょう。

「綺麗、美味しい」と喜んだ人たちは、またここにやってくるのでしょうか?せめて思い出してくれるのでしょうか?お爺ちゃんの言葉には、子供や孫が帰ってこないという意味もあるのでしょう。

足元を見ながら、私は声が出なくなりました。

その足元には、当たり前のように鹿の糞があります。マムシに注意、クマ出没の看板もあります。「ああ、クマもいるよ。鹿なんか昼間も平気でウロウロしてる」のだそうです。

今年はカメムシが異常に多いとか。ホテルの窓にも挨拶に来てくれます。ちょっと観光に来た他所の人達が、綾部を思い出してくれて、また来てくれて、さらに手を貸してくれて、仲間になってくれて、一緒になる。この地に住む。この地に立ち、守るようになる。

それまでどのくらいの時間と労力がいるのでしょう。爺ちゃんたちは待っていられません。

昼食時、ほかの高齢男性が怒るように話していました。「偉い学者が人口減少だ、自然がどうだ、ああだこうだって言うけどね。理屈なんかより、今、私らが何をやればいいのかを教えてほしいんだよ」

お互いの自己紹介でもこんな声がありました。「移住してくれるのも、地元のことやってくれるのもありがたいけど。草刈り機もチェーンソーも使えない、そんな人にゼロから教えてる」都会で、パソコンを駆使してサラリーマンをやってきて、退職して、里人になっても、即、役に立つ人にはならないわけです。爺ちゃんたちは待っていられません。

漬物が名物の「水源の里」もあります。「美味しいですよね、もっとうまくやればどんどん売れると思う」などと私が言うと、「売れちゃ困るの。今以上作れないもの。工場で大量生産じゃないから。キュウリ育てるんだって、手が足りない」

売れればいい、儲かればいい、ということでもないのです。

「はて、どうしましょう?」と思います。

高齢の女性が、うどんをすすりながらおっしゃっていました。「うちの前に、コウノトリの巣塔があって、そこで雛が育っててね。その様子と、周りで田んぼをやる様子と、両方を見ながらの毎日っていいですよ。ホント、綾部、いいとこですよ」

幸せそうに語る、その笑顔のおすそ分けをいただけないかと、素朴に思う私でした。

ゆっくり一緒に考えて、手早く、ぐんぐん何かしたいものです。ま、私の役目はもっぱら、応援なのですが。