東の街のまちづくり

お仕事で

先週ご紹介した横浜市戸塚区品濃町「東の街」で催された「つながるフェス」。都会のマンションでどんな手順でまちづくりが進み、催しに至ったのか。今回は解説しましょう。始まりは今年1月、コアメンバーの方とゆっくり昼食をいただくことからでした。話すうちに、この人たちと何かをやりたいと私は思いました。3月に第1回目のワークショップ、その後、毎月通うことになります。

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「東の街」はJR東戸塚駅から歩いて5分位。高層マンションではなく、しっとりとした落ち着いた佇まい。駅の開業が1980年、「東の街」は1984年に竣工しています。

すぐ横は「オーロラシティ」という西武やイオンが入った巨大複合施設で、実に便利な立地。敷地の30%が緑で、潤いを感じるマンションです。94年頃の住民の中心は40歳代だったのが、子育てを終え、子どもが離れた今や住んでいる方は70歳代が中心。232世帯がお住まいです。

とはいえ、若い家族もチラホラ目立ち、その方々と高齢の元気な方々がうまく繋がればというのが第一印象でした。

管理組合は任期2年、自治会は任期1年と、それぞれ長期的な課題を検討するには任期が短い。そんなことから任期のない組織が必要と、ソフト面を考える「まちづくり委員会」が発足しました。

この会合に冒頭のお3人からお声がかかり、私は3月にうかがい、「東の街 みんなもっとつながろう!」という話をしました。このとき、「まちづくり、どんなことがしたい?」ということで、参加者の皆さんに具体的に書き出していただきました。短冊に54のアイデアが書きだされました。

4月、その出たアイデアにさらに案を足しながら、分類し、ぜひやりたいことに投票していきます。すぐやりたいこと、少し先、いつかやりたいこと、など取り組む時期についても見渡しました。

<すぐやりたいこと>東戸塚の飲食店を定期的に参加者と巡りたい 。ご近所の歴史ウォーク 。 東の街フリマ開催 。高齢者の不自由解消お助け隊編成。
<少し先にやること> 電気自動車の充電が可能となる設備を作る。イオン⇔東の街の安全横断。集会室のサロン化 。一部屋を集まる場所にリニューアル。
<いつかやること> 集会室を素敵な場所へ。高齢者 がちょっとしたお手伝いを頼めるしくみ作り 。

こんなことがまとめとして見えてきました。こういう時は、「すぐ」やりたいことを本当にすぐやると勢いがつきます。話し合いばかりではつまらない。なので、早速5月はワークショップ前に、歴史散策を実践しました。

ノリのいい委員会代表は、歴史もお詳しく、即対応してくれます。みんなで楽しく歩くことで、参加者がさらに繋がったように思えました。

ウォークの後、5月のワークショップはこれまで出たアイデアの皆のやりたいことを、実際に「いつまでに」「誰が」「どうやるか」を考えます。ここでようやく思いつきが「プロジェクト」に変わっていきます。「催し」「場づくり」「歴史を知る」「助け合いの仕組み作り」という4つのプランが固まってきました。

6月にはさらに深く話し、4つのプロジェクトのうち何かを実際にこの夏やってみよう!ということになります。チャレンジプランを決めました。このあたりから皆さんが一気に、さまざまに走り出します。ほぼ毎日のように誰かが誰かを訪ねたり、集まって打ち合わせをしたり。

まちづくりはつながりづくり。だったら、住民がつながる場をとにかく作ってみよう。ただし、コロナ対策を徹底し、アルコールなしで。こうして走ってみることにしました。

7月のワークショップでは、いよいよチャレンジすることの全容がみえました。テーマは「つながる」、タイトルは「つながるフェス」に決定です。

8月後半に予定しましたがコロナの影響で、予定は9月に延期となります。8月のワークショップでは、細かなところの再確認となりました。

でもこの延期で準備期間があったために、おそろいのTシャツを作ろう、とか。雨天はどうする?とか。担当も割り振って、細やかなことに気配りができたのでした。このあたりでは、もう、私の出番はありません。遠くから応援するのみ。いつしかきれいな案内チラシも出来上がり、皆さんはぐんぐん前のめりになっていきました。

そして9月23日と25日の二回に分けて「つながるフェス」は開催となりました。当日の様子は先回のブログをご覧ください。 ↓ ↓ ↓  私は一参加者として、夫と参加しました。

つながるフェス

当初短冊に書かれたアイデアがこの日には実践され、集会室は皆が集まる素敵な場所になりました。お若い女性たちのセンスが光ります。

フェスのフィナーレのコンサートでは、おじいちゃんの晴れ姿をお孫さんが応援です。この日「東の街」がぐっと若がえりました。

都会のマンションにはいろいろな人が居ます。もと霞が関で活躍した方、海外勤務を長くされた方、セールスで日本国中回った方、ある専門分野の研究家、コンサルタント、声楽家、お菓子作りのプロ、園芸に詳しい方、地域の歴史の研究家、ボランティア歴の長い方、楽器演奏が趣味の方、パッチワークのセミプロ、そば打ち名人、etc。高齢者もいるということは、それだけの経験や知識の蓄積が、マンションの中に眠っている。マンションは宝の山というわけです。

それを活かす場と、活かそうという思いがあれば、いろいろな年代の方がいるマンションほど豊かで輝くはずです。いまの高齢者は皆さん時間があり、まだまだお元気。繋がりさえすればそのパワーは大変なものでしょう。「東の街」のこの始めの一歩の小さなチャレンジで、私は多くの勉強をしました。

最初にお昼ご飯をご一緒した、このお3人からもどれほど学んだことか。とにかく前向きに大きな声で勢いをつけて行動。毎回の内容を緻密に記録し分析し、分かりやすくペーパーにまとめる。写真や動画できっちり記録する。皆がくつろげるお店を探し、毎回のワークショップ後の「一杯」を設営する。ホームページ作りをすすめる、「あんしん電話」について調べる、ほかの視察先を探してくる、などなど。どれもが、私ではなく、このメンバーの方々がされたことです。

3人以外にも、もっともっとたくさんの方々が委員として、その得意技を発揮されていました。頭が下がります。

そういえば、当初出た案の中で一番の人気は「東戸塚の飲食店を定期的に参加者と巡りたい 」でした。毎月、その実践は確実にしてきました。その「一杯会」でどれだけ繋がりが深まったことか・・・。せっかくいろいろなお店に行っているのだから、その案内マップを作ろう、なんて思いが膨らんで、最近はおでんや焼きそばの写真も撮るようになっている皆さんです。

マンションのまちづくり、おもしろいです!