栃の実物語

美味しい話題

栃の木、栃の実をご存知でしょうか?あくぬきが大変ですが食べられます。私が通っている京都府綾部市ではその「栃餅」が名物。水源の里・老富(おいとみ)集落では餅と栃大福をおばあちゃんたちが作っています。同じく古屋(こや)という集落でもかつては作られましたが、今や住民は1人。集落に伝わる「栃神伝説」の絵本、紙芝居が残ります。わずかにほろ苦く、独特の風味のある栃餅。支えるにはどうすれば良いか、考えどころです。

これが栃の実です。栗のようですが、小ぶりです。これを良く乾かして保存、戻して灰汁を抜き、皮をむき、使えるようにするには大変な手間がかかるそうです。

老富では、そこまでした栃の実を買い付け、冷凍保存し、もち米と一緒に蒸して、機械で餅にしていました。地元のお婆ちゃんたちがローテーションを組んで、今日は餅の日、今日は大福の日という具合に作って、販売する市内各所に届けています。

お餅で餡子の丸めたものを包む早わざにびっくり!出来立てをパクリといただくと、まあ、美味しいこと。白いお餅とは違う、ほろ苦さと香ばしいような香りがあります。餡子の甘さとそれが合います。

早朝からの手際よい作業はあっという間に終わり、またねと見送ってくれました。

私の関わる「スローライフの会」の前身「NPOスローライフ・ジャパン」が、数年前に綾部市でスローライフ・フォーラムをさせていただいたとき、老富のシャガの花を見学し、栃餅の入ったぜんざいをいただきました。花より栃餅と、今でもその美味しさは会員の中で語られます。その節はお世話になりました、変わらないお婆ちゃんたちの笑顔です。

さて、こちらは古屋の話題です。古屋の集落でも、かつては栃餅を作り、特産としていました。いつしか人が減り、中心になって作っていたお婆ちゃんたちも亡くなられたり、集落を離れたり。いま住民は渡邉和重さんという方が、お1人です。渡邉さんは栃の実を使う食文化を伝えようと、絵本を作り、それを紙芝居にしました。写真は、その紙芝居を地元の学校で披露しているところです。

飢えに苦しんでいたむらで、心の美しい娘に、「栃神様」がその食べ方を教えるという話です。栃神伝説です。先日その古屋で話し合いがあったときに、紙芝居を集落支援員の方が読み上げてくださいました。なんともいいお話です。

その後、ごちそうになった栃餅のぜんざい。これがまたなんとも美味しい、窓の外ではジキタリスの花が揺れ、いい午後となりました。古屋は今も栃の実がたくさん採れるとかで、老富のものより色が濃く思えます。実はあっても採る人がいない、採ったところで餅を作る人がいない、ここは決定的なマンパワー不足です。

実を拾う方々がボランティアで入られることがこれまでありましたが、それも一時ほど盛り上がっていないようです。

ならば、栃の実をすぐ近くの老富に分けてあげたらどうでしょう。老富には高齢ながら、餅を作る人がいる。古屋には栃の木が豊富で実ができる。これでうまく連携すれば、綾部市山奥の栃の実食文化は守れるはずです。そのうち、若い後継者が出てくるかもしれません。渡邉さんの紙芝居をみた子ども達から、跡継ぎが現れるかもしれません。

自分の集落だけのことを考えずに、仲良くして、足りないものを補い合う、そんな繋がりがまず先ですね。2つの集落だけでなく、同じ水源の里の集落として、ほかの集落もサポーターとして動く、知り合いにも呼び掛ける、そんなことを始めましょう。

頑固にならないこと、執着せずに柔軟な発想を持つこと、広い視野から考えること。そうしないと「栃神様」に怒られちゃいますね。