ジャガイモライフ倶楽部

美味しい話題

ジャガイモが気になっています。ジャガ農家と知り合ったからかもしれません。ジャガは主役に脇役になり、たっぷり含まれるビタミンCが熱を加えても壊れにくい。種類も豊富で貯蔵もできる、食糧危機には救ってくれるはず。でもあまり注目されない、皆こだわらない。ならばジャガを讃えようとグループを作りました。料理だけでなく生活文化としてのジャガを極めていきたく思います。

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私は素直にジャガイモは偉いと思っているのです。はるか昔から人間を助けてきた。荒地でも寒冷地でも作れて、年に2回くらいも収穫可能。小麦、米、トウモロコシなどと同じように主食になり、ビタミンやカリウムや食物繊維が豊富、長期保存もできる。だから、世界中で栽培されてきた。しかも庶民の間で食べられてきた、支持されてきた。なのに、今はフライドポテトやポテトチップで大量消費。油が原因なのにジャガが悪いようにいわれています。

アイルランドではかつてジャガイモは庶民の主食、なので、ジャガイモに病気が流行したときは一気に飢饉となり、多量の死者が出て、多くの人がアメリカに移住をしています。ひとつの作物に頼りすぎるとこうなるという事例でしょうけれども、それほどジャガイモは作りやすく、それだけを食べても生きられるものだったというわけです。日本の天保の大飢饉もジャガイモが救っていて「お助けイモ」と呼ばれるようになったとか。

私が印象深いのはゴッホの「ジャガイモを食べる人々」という作品です。オランダの農民が主食であるジャガイモを食べているシーン。食卓で湯気をあげているのはジャガイモだけ。こんな暮らしをしている人たちの、ジャガイモを作っている「その手を描きたかった」と後にゴッホが手紙に記したと言われる作品です。

 

北海道で広く作られ、「片栗粉」ともなり、私たちの暮らしには「男爵」と「メークイン」が定着しました。私が小学生の時、家庭科の時間で最初に習った料理が「粉ふきイモ」でした。家の裏の小さな畑では、父がジャガイモを作り、私もその掘りだしを手伝ったりしたものです。

そんな風にジャガイモとごく普通に、興味はあまり持たずに暮らしてきましたが、北海道阿寒湖温泉の仕事をした時に、「いも餅」を知りました。ジャガイモをすりおろし、片栗粉を混ぜ、お餅状にまとめてバターで焼き、砂糖醤油で食べる。実に美味しかったのです。

 

また、奈良県野迫川村の仕事をした時、ここの伝統料理は?とうかがうと「バチイモ」という答え。料理などというものが受け継がれることのないくらい、昔は産物の乏しい寒村。できたジャガイモの保存法は塩漬けでした。一見梅干しのように見える、しわしわのジャガイモは、かじるとバチっと音がする
事からこの名があるとか。姉妹都市のスロバキアの方が、同じようなものがあると語ったそうです。

栃木県足利市では、焼きそばというとジャガイモが入ります。これは当たり前で、今でもそうです。初めて食べたときには驚きましたが、ソバだけでなくゴロゴロ入るジャガイモがアクセントになり美味しいものでした。

北海道帯広の屋台に行ったときです。「インカの目覚めの2年もの」とか言って、ジャガイモを長期保存して糖度をあげて、それを丸ごとこんがり焼いて出してくれました。上手に保存して美味しさをアップして、その味をズバリ味わう。そんなこともできるんだと発見でした。

そしていよいよ長崎県雲仙市です。ジャガイモと言えば北海道と思っていたのが、この地に通うようになり延々と続く段々のジャガイモ畑にびっくり。長崎県は北海道に次ぐ産地で、雲仙市はその代表のようなところだったのです。右も左もジャガ畑のような景色、こんなすごい産地ならジャガイモ料理の専門店があるに違いない。と思ったら、そうでもない。みんないろいろなジャガイモ料理を日常的に食べているのでは。と思ったら、これもそうでもない。

農家さんは、出荷時の値段には興味があっても、食べ方や、ジャガイモ文化にはあまり興味がなかったのでした。これは今まで私が町おこしを手伝った果物産地でも、米粉の産地でも同じ傾向です。

そんななか、ジャガイモ農家さんの話をじっくり伺う機会を作りました。聞けば聞くほど面白い、ジャガイモは奥が深いことが分かります。種類もたくさんあって、それぞれに特色がある。食べ方にも向き不向きがある。私は今まで、ジャガイモとなんて雑な付き合い方をしてきたのか、と反省しました。

農家さんが「種類がいろいろあるのに、東京などではただ“長崎産”とだけの表示でさみしい」とおっしゃったことが心に残りました。いい農家さんが、いい発信者になれるとは限りません。イモを作るので精一杯、情報までなかなか作れないのです。

ならば、と「ジャガイモライフ倶楽部」を作りました。とりあえず、みんなが作っているジャガ料理、知識などを集めていこうと思います。何ができるかわからないのですが、なんとかジャガイモを持ち上げたい。ありがとう、これからもよろしくと奉りたいのであります。

(勝手にグループにお招きしたメンバー作のお料理を文中でご紹介です。上から最初のは私が作った、「サバの水煮缶とジャガのカレー煮」(デジマ使用)、次は丸山さん作の「超簡単ガレット」(デジマ使用)。次は小松崎さん作の「セリとジャガの混ぜご飯」(デストロイヤー使用。醤油・みりん・ゴマ少しで味付けです)。最後は長谷川さんの「ジャガパンケーキ」(デストロイヤー使用。天ぷらやフラをして残った小麦粉・溶き卵・パン粉などとすりおろしたジャガ、ツナ缶を混ぜて焼きます。お味は適当に)

いかがでしょう?あなたもジャガイモライフ倶楽部へどうぞ。(笑)