谷瀬の新酒に学ぶ

美味しい話題

自粛暮らしでストレスがたまり、家飲みでコロナ太りなんて都市部でのこと。地方の、自然とともに生きる人たちは、粛々と着実に、感染に気をつけながら歩んでいます。そんな様子を遠くからFacebookを通して知り、「すごいなあ」と思っていました。少しずつ交流が復活しつつある今、まずは地方のものを買って応援しましょう。十津川村「純米酒 谷瀬」学ぶこと多い新酒です。

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何年も通っている奈良県十津川村です。「谷瀬の吊り橋」という有名なつり橋の奥にある小さな集落谷瀬、ここに最後にうかがったのが今年の3月でした。この頃は既に新型コロナウィルスの感染は始まっており、今後、私が東京からうかがうのもお互い危険かも?と思える時期でした。それでも、では次回の会合は5月、と決めてきたのでした。その後、世の中はとんでもないことになっていったのです。

3月の春休み時期は、谷瀬の吊り橋には観光客もあり、集落の人たちが整備した「ゆっくり散歩道」も歩く人が多かったものです。集落自慢の花畑にはみんなが植えたチューリップが咲き、手作りの案山子が記念写真ポイントになっていました。

吊り橋横の「つり橋茶屋」が工事中のため、古民家を使った休憩所「こやすば」に臨時の売店を作り谷瀬で採れた高菜を漬けた「高菜漬け」で包んだ名物「めはり寿司」も売っていました。高菜は集落にできた加工所でせっせと漬けられていました。

こうして、この谷瀬では集落に人を呼び地元でできたものを売り、自立していこうとずっと努力してきたのです。なかでも力を注いできたのがお酒です。休耕田に酒米をつくり、その田植え、稲刈りを「谷瀬のゆっくり体験」として他所の人が谷瀬にかかわる体験としてこのプログラムも育ててきました。

当初からここのむらおこしにかかわってきた奈良女子大学・室崎ゼミの学生さんが、本当に熱心に通い、酒米づくりを体験してきました。「吟のさと」という酒米は、学生さんや他所の方、集落の人とで田植えされ、稲刈りをし、はざ掛け天日干しにされ、近くの吉野町にある美吉野醸造株式会社に預け、ここでまた集落の人や学生さんが酵母を混ぜたり、蒸米を運んだりとお手伝いをし、お酒にしてきたのです。この酒造会社は地域おこしに熱心で、こうした協力をしてくださいます。
この冬も、奈良女子大生は汗をかいてお酒の仕込みを手伝いました。

そんな冬を過ごし、春を迎えたときのコロナでした。4月7日に緊急事態宣言が全国に出ました。この時、谷瀬では、もうすぐ今年の新酒ができるな~とワクワクしている時期でした。4月10日には村の公共施設が閉鎖、11日には豊かな源泉かけ流し温泉の公衆浴場が閉鎖。4月12日のFacebookには、「雨なので杉玉を作っています」という記事が載っています。田おこしから始まり、酒米を育て、お酒を学生さんとともに造ってきた集落の人にとって、新酒ができるのは何よりうれしいのです。その気持ちが緑鮮やかな杉玉に集まります。

しかし、緊急事態宣言が出た後も、人気の「谷瀬の吊り橋」には村外の人が押し寄せます。「屋外だし、空中だし、つり橋ならいいだろう」というよそ者の考え方ですが、高齢者が多く、医療体制の脆弱な村にとっては観光客が来ることが恐怖となりました。で、4月17日「谷瀬の吊り橋全面通行止め」となります。3月末から宣伝していた5月末の今年の谷瀬の「田植え体験」も、呼びかけを取り下げました。

いろいろそんな変化はあっても、季節は廻ります。今年の新酒がことのほか美味しく出来上がりました。早く皆さんに飲んでいただきたい。加工場でレッテルを貼り、4月19日には、「純米酒 谷瀬」納品出荷準備完了。酒粕も加工場で真空パックになりました。

ああ、それなのに、村外の人は来ない、いまは来てほしくない。新酒は行き所がなくなります。一方、来年の今、再び新酒の完成を喜ぶためにも、田んぼは始めなければ、酒米の苗を育てなくては。結局、今年の田植えは、集落の人だけで、機械も入れて行われました。いつもなら、学生さんが手植えして、山里に笑顔と歓声があふれるのですが。

そして、ついに6月「谷瀬の吊り橋」の通行止めが解除となりました。温泉にも入れるようになって、これからだんだん外からの人もやって来るでしょう。とはいえ、茶屋はまだ開きません。小さなお店です、働く人は集落の高齢者。もしもというときが怖い。でも新酒は新酒で飲みたい、売りたい、というのがお互いの本音でしょう。

小さな集落も止まってはいられません、自然や季節の移り変わりに合わせて、作業を進め、きちんきちんと前に進んでいます。偉いなあと思います。ステイホームやテレワークなどできない、それが田舎の暮らしですもの。「ずっと家にいて飽きちゃった」なんて恥ずかしくて言えないですね。「純米酒 谷瀬」の新酒を飲みながら、日本中の地方の暮らしに思いを馳せたいと思います。6月末に行くからね~、待っててね~。

※写真は谷瀬の吊り橋のFacebookからお借りしました。

https://www.facebook.com/谷瀬の吊り橋official-720993801353416/

 ※「純米酒 谷瀬」をお買い求めになりたい方は、こちらに記事があります。

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