シルキーライフ

ちょっとしたこと

絹のようにしなやかで、自然で、強く輝く生き方。絹の産地群馬県富岡市からそんな発信をしませんか?全国に、蚕を育てるキットを配る、お蚕さんプロジチェト。養蚕という産業ではなく、生き物から糸をいただくことに向き合い、哲学をしてもらう。そして、絹のようなライフスタイルに変化を・・・。」と、そんなことを話した翌日、偶然「上州 絹の風」という写真展をみました。

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以前に同じようなことを書いたかと思います。が、あえてまた書きましょう。富岡市へは市役所の会議にもう何回も通っています。ご存知の通り、世界遺産富岡製糸場のあるところです。絹の街、そして富岡付近は養蚕の地です。ただ、だからといって、今も養蚕が盛んかというとそうではありません。「養蚕では食えない」というのが現実です。第一、今の私たちの暮らしに、絹などはわずかしか存在しない。私たちは化学繊維の中で生きているわけです。

だから、シルクといっても、「それが何?洗濯機で洗えないんじゃね~」なんて野暮な話になる。新たな養蚕家は出てこない。若い人を養蚕に導こうにも、なかなか・・・。なので、養蚕という技術や、「お蚕さん」と蚕を呼ぶその生活文化は大事にしながら、ズバリ養蚕を普及するのではなく、蚕から何かを学ぶ、蚕を繭にして糸をいただくことを通して、何かを考える、そんな動きを起こし、そのずっと先に新たな養蚕業に従事する人が出てくるという、すそ野を広げることが得策なのでは!と私は思ったわけです。で、冒頭の話になります。

このコロナ禍、都会でペットも飼えないマンションで、それでも蚕は飼えるなら、育ててみよう。繭になるまで見守ろう。そしてできた繭は富岡に送ろう。上質の糸にはならないかもしれないですが、みんなで作った小さな織物ができるかもしれない。蚕の営みから、自然と人間との関係や、歴史を知る。そして、蚕から何かのメッセージを受け取るはずです。

蚕の世話をする間、繭が布になるまで、それを動画で「今日のお蚕さん」なんてアップする人も出てくるでしょう。これは、遠く離れていても、富岡市といつも繋がっている関係が築けます。

そしていつしか、ライフスタイルも変わってくる。

こんなことを会議で話し、帰りも考えながら東京に戻ってきた翌日。近くで「上州 絹の風」という写真展を見ました。小柄で笑顔のやさしい、写真家・志摩悦子さんの力作です。群馬県内のあちこちを何回も撮影に訪れ撮った写真は、養蚕について、そして蚕と人の関係、民俗についても深く取材されていて、このまま博物館の資料になるのではと思うほどでした。

大量生産の衣服が当たり前になった現代からは、気が遠くなるほどの作業と時間がかかる絹の道。でも、この写真展を見ていると、お蚕さんが身近にある暮らしが、なんだかやさしくほっこりとして、それでいて力強い。「絹の風」は暖かいのでした。こういう暮らしを私たちは少しでも取り戻さなくては、と思います。10月28日まで。新宿御苑近くアイデムフォトギャラリー「シリウス」で開催中です。