空中の村

ゆとりある記

森のなか、樹々の間の空中に丈夫なネットが張られ、ピョンピョンと弾みながら歩けます。高いところでは12m、途中にコーヒーが飲めるエリアや、のんびり絵本を読める場所も。大きなクッションに身を任せ、空中昼寝もできます。地に足がついていない時間が妙に楽しい、知らないうちに運動も出来ている。奈良県十津川村のアスレチック「空中の村」、新しい形の森林利用ですね。

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十津川村の「21世紀の森・紀伊半島森林植物公園」、村役場から車で20分、豊かな森のある公園です。石楠花が咲く時期や、夏休みなどは人が訪れますが、ただの森となるとなかなか人が寄りつけない。フランス人のジョラン・フェレリさん(28歳)が、村に地域おこし協力隊として4年前に着任し、林業に携わりながら、「もっと森を利用できないか?」と思ったのだそうです。

フランスにはこうした森林利用の施設があり、施設を作る技術もある。ジョランさんは十津川村に住み続け、森と親しむ哲学のある大人のためのくつろぎのアスレチックを作ろう、と思ったのでした。これだけ本格的な施設は日本初、だそうです。え?ただ遊ぶんじゃないの?と思いますよね。まずは、彼に案内していただきました。「大事な鍵など落とさないように。森には虫もいます。」諸注意があります。なるほど、森に入ったことのない都会人は無防備ですもの。

普通の吊り橋なら、足を置くところは板。それがここではあくまでネットの道、ネットの壁がうねうねと続きます。ジョランさんは忍者のようにすいすいと歩き、待っていて下さるのですが、こちらは弾む重い身体をどうしていいものやら(笑)。

どうやってロープやネットを取り付けているのだろう?と思うと、さすがです。森を愛するジョランさんです、フランスの技術です。しっかりと樹を守っている。しかも美しい。専門技術者がフランスから12名やってきて、十津川村の温泉宿に6週間滞在しながらジョランさんの設計を形にしていったのだそうです。

そうこうしているうちに高いところまでやってきました。大体、このネットの道は、4メートルから12メートルの高さにあるのだそうです。1ヘクタールの敷地に、14本のネットつり橋が巡っています。

体幹が鍛えられるなあ~。

高さ12メートルの ところにあるカフェ。ここではコーヒーやお菓子など味わえます。私はルイボスティーと地元の方が焼かれたクッキー。森を上から眺めるのが気持ちいい。

歩くだけでなく、「森でゆっくりしてほしい」というのがジョランさんの考え方。そうですね、日本では森に行ってもセカセカと歩いて、はい終わり!なんてことになる。なので、ところどころに、そこでトランポリンをして遊んだり、寝っ転がって絵本を見たり、留まる工夫がされています。

寝っ転がってボーッとする場所の、このクッションのセンスの良さ!にびっくり。河原の石ころみたいな形と色、お洒落です。ファッション誌の撮影などに使いたい空間。森の空気とこのお洒落度がぴたりと合います。子供向けではなく、「大人の遊び場」という考え方がここからも伝わります。

クッションに身を預け、ひっくり返ってふ~~~~~~~~~~~~~~~~~。真上にはこの緑と空。身体から嫌なものがすーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと出ていく気がします。

高いところがダメな方は、地面の上をゆっくりどうぞ。十津川村の杉がチップになって、ふわふわ。

帰りにはオリジナルのマスクをお土産にしました。

「空中の村」とよく名付けたと思いました。私たちが暮らしている普通の村とは違う村。森の空間に抱かれたような場所です。そこに、歩く、話す、食べる、考える、寝る、くつろぐ、鍛える、いろいろな要素がある。単に汗をかいて帰る施設ではない。時々この村を訪ね、いつもとは違う自分にも出会いたい、と思います。