移住者の力

ゆとりある記

奈良県東吉野村のシェアオフィス、川上村の高齢者支援施設を見学しました。そこで、若い移住者の方々にお会いしました。

自然のなかでデザインをしたい、水のきれいな土地で子育てしたい、などの理由で移住し、新しい施設や仕組みの中できちんと暮らしを創っています。

「移住したからには」という彼らの覚悟が地元にも伝わり、地域の変化の原動力になっているように思いました。
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「オフィスキャンプ東吉野」、築70年の古民家を改修してシェアオフィスにしています。川を隔てた向うが役場。


仕事と遊びが同居しているような空間、「オフィスキャンプ」の名が納得いきます。巨大な木のテーブルと、カラフルな椅子がここの象徴のようです。


1・2階で和室が4つ。お風呂やトイレは今様に機能的にできています。そしてオフィス設備では、プリンタ複合機、wifi環境も。


滞在するなら台所や食器もあります。なんとなく昔の台所風でいい感じ。


うかがったときには漫画家さんが、ペットのインコとお仕事中でした。数週間の滞在。ネット環境があればどこででもできる仕事、それなら環境の良い自然の中で仕事したい。わかります!

家の持ち主がこの家を壊そうとして、家具などをゴミとして出しているときに、「それ、いただけませんか」と今の運営者・菅野大門さん(33歳)が声をかけた。そこから家具も家もまだまだ使えると、リノベーションが始まったそうです。

今回、お会いできませんでしたが、菅野さんの先輩かくのデザイナーが先に東吉野村に移住し、その方のご縁で管野さんはじめ様々な人が村を訪れ、移住することになったとか。

このシェアオフイスが2015年3月にオープン、ここがきっかけで、6組14名が移住しているとのことです。

ここでいただいた水の美味しかったこと。川音の優しかったこと。住んでいると気付かないことを、移住者は発見できる。村の当たり前の魅力を、特別な価値として磨いていける。

移住しなくとも、漫画家、デザイナー、一流企業のプチ合宿などで、村にとっては珍しい人たちが滞在すると、刺激や提案を受けることになるでしょう。


続いて川上村です。ここはもちろん高齢化が著しい。しかもその高齢者の家が、川の支流をたどったその先に数軒ずつ、という具合の住まい方。


買い物は移動販売が頼り。でも、こうした3トン車となると、村の奥までは入れない。そこで、村が中心となり、この8月に「一般社団法人かわかみらいふ」という法人を立ち上げ、高齢者の生活支援を始めたのです。

この車よりずっと小さな車が、村の奥まで物品を届けて買い物できるようにするのだそうです。


その移動スーパー運転手さんとして働き始めているのが嶋谷 元さん(41歳)。

子どもができたのをきっかけに、水のきれいなところに住みたいと、吉野川・紀の川の源流である川上村目指して移住されたそうです。

緑のTシャツが嶋谷さん、写真撮影が趣味。移動販売車で回りながら、高齢者のいい写真を撮りたいとのこと。

もと公民館の建物ホールに、いずれ川上村の元気なお年寄りのポートレートなどが飾られることになるかも。

玄関にはそろそろ出番の看板が立てかけられていました。さすが林業の村、立派な木製です。

ここは、健康チェックできる出張診療所にもなります。高齢者がサークル活動をしたり、趣味広げたり、カフェでおしゃべりしたりの拠点にもなっていきます。


村を知らない移住者が、こうした高齢者ふれあい活動を担当していくと、知らないからいろいろ昔話を聞くことになる。

村の風習や郷土料理を教えてもらうかもしれない。そうなると、お年寄りは世話をされるだけでなく、世話をしてあげる側に立つ。ここが大事だと思います。

移住者の奥さんが茶がゆの作り方を知らないなら、「どーれ今度教えてやるか」「観光客の人も知りたいなら一緒にどうぞ」なんてことになる。

おじいちゃん・おばあちゃんの写真と一緒に得意技も紹介があれば、このおじいちゃんから今度竹細工を教わろう、子どもたちと一緒に学ぼう、とプログラムも出来上がる。

知らない人がつなぎ役になって、高齢者がますます元気になっていく。夢は膨らみます。

移住者の皆さんのパワーを借りて、ご一緒に、むらづくりしていきたいものです。