野点と流星群と

お仕事で

ペルセウス流星群を観望できるという夜、紀の川市の「平池緑地公園」では、「フルーツ宵のだて」という催しがありました。

フルーツでまちおこしをしている市民たちが考えた茶会です。

真夏の夕暮れ、池のほとりで味わう冷茶と季節の果物。草むらに寝そべって眺めた星空。いずれも東京では体験できない贅沢な時間でした。

流星は見逃しましたが、市民力を確かに見た思いです。

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8月12日、夕日を追いかけるように紀の川市貴志川へお出かけ。普通は帰路に着く時刻、宵の野点ですから、これからなのです。


平池は深さ2メートル、ぐるりと回ると1.5キロ。池のなかに古墳が4つもある、ため池です。ま、古墳が先で、あとからため池ができたわけですが。

貴志川流域には古墳が多く、「紀州の飛鳥」とも呼ばれるとか。遥か昔から、人の住みやすい環境だったのでしょう。

貴志川にはプラネタリウムがあり、市民天文サークルの活動が盛ん。流星群がここ数日見られると、観望会とコンサートが企画されていました。

そこに、今回、「フルーツ・ツーリズム研究会」がご一緒させていただき、茶会となったのです。

夕暮れの池のほとりをずいぶんたくさんの人が散歩しています。今夜の催しの人だけではありません、普段からこの池にはご近所の方が集まってくるのです。

暑い日だったのに、水面を渡る風が気持ちいい。身近にこういうところがあると、暮らしが豊かになりますね。


定員50名の茶会に、60名近くが申し込んで満員御礼とか。企画した市民グループ、お手伝いのスタッフ、みんなお客様が多いのでうれしそうです。

ご案内のチラシと、受付でいただいたしおり。

野点とは、という説明。紀の川市のフルーツについて。フルーツを使った茶道「ふるうつ流」について。などなどひと学びできるようになっています。こういう紙一枚で、ずいぶん助かりますね。

池のほとりに置かれたテーブルに座ると、浴衣姿のメンバーがお菓子を運んでくれました。

今宵のお菓子、テーマは“星空とフルーツのコラボ”。

しおりの文面には・・・
【星屑】ぷるんと冷たい水まんじゅうにブルーベリー果実と小豆こしあんを入れました。
【大人の羊羹】フルーツとちょっぴり洋酒入り
【みずみずしい旬のフルーツ】いちじく、巨峰、梨。いずれも紀の川市で採れたフルーツです。・・・・

青竹の器が涼し気、これも市民の方々の手作り。お菓子も手作り!


お琴の演奏などが始まりました。辺りはどんどん暗くなります。聴きたいのですが、暗くなる前にお菓子やフルーツを食べちゃいたい。

色や形が分からなくなる~~~~~。闇鍋状態?!でも、美味しい。


お茶が運ばれてきました。?水の中に、緑色が?

これが「ふるうつ流」の特色。仰々しいお手前などせずに、リラックスした茶会に、と、自分のお茶は自分で点てる。


カシャカシャカシャ~~、隣で夫が茶筅を回しています。「もういいかな?」「もういいんじゃない?」

暗いからわからない、でも、だから面白い。


役立つのは携帯の灯り、そして周囲のろうそくの灯り。昔はこのくらいの明るさのなかで、十分いろんなことができたのでしょうね。

暗い中では、味覚も嗅覚も敏感になります。巨峰の香りがいつもより強い、いちじくの甘味がお菓子のよう。

そんな美味しさが喉に絡みついているところに、冷たいお抹茶がストンと落ちる。

急にさわやかになり、落ち着く。これが宵野点のだいご味なのでしょう。

茶席を出て、近くの芝生にあおむけになりました。あっちにも、こっちにも、家族やカップルが寝転んでいます。

月夜です。星が一杯です。でも、写真には写りません。

と、何人かが「ああーーー!」と声をあげました。「見た?」「見た!」流れ星です。

そうだ、おしゃべりしていちゃダメ。静かに視野広く待ちかまえよう。

「ああーーー!」左の方から声。私は、ちょうど首を右に向けていました。

「おおーーー!」と夫。「え?」「今、流れたじゃない。見なかった?」「うん」

こんなことが繰り返されて、結局21時半、そろそろお開きとなりました。


星を見るには、おしゃべりで落ち着きのない私は体質が向かないのでしょう。

ガッカリしながら歩きだすと、茶会を運営したグループが今頃ようやく、お握りを食べたり、お茶を飲んだりひと落ち着きしたいます。

炎天下に竹を切りだし器にした人、夜なべしてお菓子を作った人、水屋でお茶碗を洗い続けた人、不安定な芝生の上を慣れない浴衣でお運びし続けた人、自分たちが食べるはずだったお菓子をお客様に譲った人、みんながいい笑顔をしています。

この人たちが紀の川の「星」だ!そう思った夜でした。