母が転んだ

ちょっとしたこと

姉夫婦と同居している96歳の母です。昔と違って、ラインでその様子が随時わかります。先日姉から連絡、「おばあちゃんが仰向けにひっくり返って起き上がれない」。とはいえ、姉も今、闘病中、母を起こす力がありません。結局、孫やひ孫が連携して、母は起き上がったようです。骨も異常なし。早速、部屋につかまり棒が立ったとのこと、うれしそうな母の写真が先ほど届きました。

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どこのお家も、どなたかが高齢やご病気で手助けが必要な状態かと思います。それを少人数や、1人で介護、看病となると本当に大変でしょう。その点、スマホやラインなどITの活用は役に立ちます。以前、義母と同居しているときの何度もの手術や看病には、まだラインなどもちろん世の中になく、パソコンもボチボチという時代。夫と2人てんてこ舞いでした。今や、病人の姉が高齢の母のことを写真付きで私にレポートしてくれる日々。あるときは動画で、あるときはオンラインで顔を見ながら会話して、という具合。ありがたいものです。

転んだ母、本人は、起き上がればもう元気で口は達者です。補聴器をしているときは固定電話よりスマホの方が話しやすいのだそうで(彼女なりの理屈です)、転んだ話を延々とおしゃべり。「ベッドの足元にあるマットがいけなかったのよ、ずるっと行っちゃって。もうママ(姉)がこれが原因だって言って片づけちゃったわ」そのマットは気に入っていたのにと愚痴をこぼします。「でも、ママがいてよかったの。○○ちゃん(先日亡くなった母の従弟)なんて、1人暮らしだから起き上がれないまま3時時間くらいジタバタしたってよ」母は足の力は早くから衰えていましたが、コロナ禍でデイサービスに行けなくなり、この一年で一気に弱りました。

「最近はおばあちゃん、歩くの5センチずつくらいだからね。老けたよね~」と母。「でも転んだだけでけがや骨折がなくてよかったね」と私。「そう、△△ちゃん(ほかの従弟)など、この前家の中で椅子に座っていてなんだかそのまま倒れて、顎を4針縫ったんだって」だんだん聞いているうちに、私はため息が出てきます。でも母は軽い転び方で済んだことが自慢のようです。さらに「早速ママが、ネットで探して介護業者さんにつかまり棒を頼んでくれたの。いい人でね、400人もお得意さんがいるんだって。今はああいう商売が儲けてるね。まだ独身なのよ」縁談など世話しそうな気に入り方です。

とにかくよかったじゃない、と長電話を切りましたが。そのスマホも、最近は手が震えるので「押したくないところを押しちゃうのよ。それが困るのよ。ちょっと触れただけでかかっちゃうからね、便利すぎるのも良くない」」とのことでした。救助した姉はというと熱を出し、寝込んだとのラインが届きます。つかまり棒をもってニコニコしている母の方が元気そうです。

姉が今まで母のお風呂を助けていましたが、体力的に無理で、今は専門の方に入浴介助をお願いしています。「あんた、やっぱり専門家はすごいよ。力の入れどころが違う」母は、最初は恥ずかしがっていたのに、今やお気に入りです。でも、しっかりお風呂に入るのは介助のある日、あとはザクッととなります。私と同じ汗かきなので、本当は毎日シャンプーしたい。なので、このたび私はドライシャンプーを送りました。すると、そのポンプ式のプッシュボタンが力がなくて押せないのだそうです。姉もやっとだとか。そういことか・・・。

義兄は毎日会社、となると、平日昼間は母と姉だけの暮らし。だんだんローテーションで、母の世話だけでも孫・ひ孫が担当になりそうです。わが実家の母のケースは大変恵まれています。家があり、周りに人がいる。姉夫婦、孫、ひ孫が飛んでこれる距離にいる。コロナがなければ私も行ける、最高のいいケースでしょう。

遠く離れた田舎の老夫婦の様子を、ライブカメラで見ているという友人もいました。見てくれる人がいるのはまだいい。一人暮らしの高齢者は転ぶなんて小さなこと、それどころか日々の暮らしを老化と病気と必死に戦い寄り添いながら送っているはずです。「心配かけて悪いね」という母に言いました。「もうすぐ、私も転ぶようになるんだから、先にお手本を見せておいてくれるとありがたいわよ」と。