安心するということ

ゆとりある記

山奥の民宿での厳重なコロナ対策。こんなところまで、と正直思います。別の土地のホテルでは「短時間入浴、人との距離を、会話なしで」と大浴場に貼り紙。安全だけれど、心は安らかではありません。でも、民宿家族の笑顔に会い、子どもたちが大声で「バイバイ」と手を振ってくれたり。移動途中で駅員さんの親切に触れて、すっと心が安らぎました。安心は人が作ってくれるのですね。

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コロナ禍で、外部の人を受け入れていなかった民宿です。仕事の都合で無理無理泊めていただきました。こちらは当然PCR検査をしていくのですが、迎える側はまだまだひやひやでしょう。それでも都会並みの感染対策です。

洗面所に手洗いや消毒、トイレはふたをして流しましょう、食事はアクリル板で仕切りが。こんな澄んだ空気の山に囲まれた美しい地で、素朴な民宿で、こんなことに気を使い、マスク会食してなんて・・・。窓の外を飛び交う燕が笑っているようです。

私たちお客がいなくなれば、この民宿の家族はマスクなしで、清々と暮らしているのかもしれません。それを嫌がらずに迎えてくれてありがたい。おばあちゃんも、おじいちゃんもご夫婦も、チビちゃんたちも、ホットに接待してくださいました。

ちょうど帰路についた日が豪雨の翌日、新幹線が停まった日です。夜遅く、三島駅で乗客は降りることになりました。「安全が確認されませんので」と放送、仕方がありません。熱海の土砂崩れを知っている乗客は、仕方なく払い戻しの列に並びながら近くのホテルを探します。でも、あっという間にどこも満室。思い切って高額のところに電話しても満室。みんな安全に眠れるところを探すのに必死なのです。在来線も走らず、タクシーも出払い、これは駅で一夜を過ごさなくてはならないのかと思っていたところ、伊豆箱根鉄道がまだ動いている、これだ!と伊豆で宿をとることにしました。

こちらはパニック状態です。JRから抜け出て、伊豆箱根鉄道三島駅の駅員さんに相談。「ど、どこか、駅の近くに深夜でも泊めてくれる宿はないでしょうか?」駅の近くの宿を若い駅員さんが探してくれます。電話をかけますが三島駅に近いと満室、電話に出ないところも、そのうち終電時間が近づきます。「あそこなら24時間大丈夫だな」と駅員さん同士が見つけてくれたところ、連絡するとホテルの守衛さんが「もう、客室係が帰っていないので、私が布団を敷くんで、そんなでよければ・・」と泣きそうなおばちゃん一人客を受け入れてくれました。

 

たどり着いた温泉ホテルはまたコロナ対策。安全な寝場所が確保された私は、急にそれが気になります。しょうがないのですが、お客は安らげないでしょうね。温泉には長くつかりたいし、湯船で出会った人と言葉も交わしたい。それが旅ですもの。宿側だって、こんな表示は貼りたくないでしょう。安全ではあるのですが、、、。

今回親切にしてくださった、民宿家族、駅員さん、守衛さん、この方たちのおかげで、安全の上にさらに安心がありました。逆に、人との交わりや親切に出会わなかったら、安全だけれど安らがない時間となったのだと思います。非常時こそ、人にやさしく、人が安心できるように、そんなことが出来る自分でありたい。感謝とともに、学ぶこと多い出張でした。