「とろうで!猪とミニトマト」

お仕事で

こんな名前の小さな催しがありました。雲仙市のミニトマト農家の青年が、猪も獲っている。そのお話を聞き、最後にはミニトマトの収穫もというわけです。猪猟の罠の説明や、良いミニトマトの見分け方など、とにかく専門的な話が興味深く、オンライン参加の方からも質問がたくさん!実験的な試みでしたが、農家さんのお話が交流資源になる、ということがよくわかりました。

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雲仙市千々石町、赤土の入った畑にはマルチがはられ、春ジャガの種が植えられています。右はすぐ美しい砂浜、左は緩やかな丘陵で棚田が重なる、リゾート地と言ってもいいほどの穏やかな地です。

こんなところで無農薬で有機肥料で育つミニトマトなのですから、美味しいに決まっていますね。去年の8月に植えた苗が10メートル近くにも伸び、グルグルと何重にも支柱を巻いています。ミニトマトってこういう風に育つんですね。それだけでびっくり、感動的。

トマトは房の上から赤く熟れてくる。この車輪付きの椅子に座って畝に沿って移動しながら収穫するそうです。暖かくてトマトの強い香りに包まれて、ここでトマトをつまみ食いしながら働けたらいいなあ、なんて思ってしまいます。

「小鈴」という名のミニトマト、お日様に均等に当たると全体が赤くなり、食べたときに中から酸っぱい汁がでて、皮の部分が甘い。新鮮なトマトはヘタの部分が緑でピンとしているのだそうです。東京のスーパーで売っているのと、とれたては色つやが違います。

今日の主役は山﨑太志さん33歳。最初は農業をする気はなかった、むしろ農業機械が好きでそのメーカーの販売をしていたとか。それが、機械も農作物も「人が喜んでくれることがうれしい」ということに気づき、故郷の農業を継ぎます。自分だったらこのように経営する、という志で今頑張り中です。

もう一人の役どころは、堀口治香さん。雲仙市地域おこし協力隊で東京から雲仙に移住。この日初めて本格的に催しを進行・コーディネートすることになりました。スマホで撮影やインタビューも初めて。山崎さんが落ち着いて話してくれるので、堀口さんも安心して進行です。

ハウスにはハチが飛んでいて、受粉のお手伝いをしています。トマトの小さな黄色い花にハチが触り受粉すると、花の先が茶色くなるそうです。この日オンラインで、東京・岡山・大阪などからの参加者も。直接声で、チャットで、次々と質問が届きます。すっかり山﨑さんと仲良くなりました。

さて、温室の外はいきなりワイルドな世界。山崎さんは農業に就いてから猪の被害と、猪猟をする人の高齢化を知り、それじゃ自分が!と決意。罠猟の免許を取りました。アナグマ?ってどんなのだろう?と思ってしまう私です。檻は大小、これを被害の出ているところに運んで仕掛けるんですね。

檻の中にワイヤーが張ってあり、それが隠れるようにたっぷりと米ぬかを入れます。猪が入っていフガフガたべていると、ワイヤーにひっかかり、上からガシャーンと戸が下りるという罠。

こちらは土の中に、落とし穴のような仕組みの塩ビ管の仕掛を埋めて、そこを猪が踏むと足がワイヤーに縛り上げられるという罠。山﨑さんの発明、手作りです。山の中で深夜こういう作業をしているんですね。不審者に間違えられることもあるそうです。こうして年間80頭位を獲っているそうです。

暴れる猪の長い鼻を抑え、ワイヤーで縛り上げる道具。こちらもお手製。聞いているうちに猪が一瞬かわいそうにもなってきますが、年間2500万円にも上る被害があるとのこと。誰かが獲らなくてはならないのです。猪猟を始めて、山﨑さんは食べ物に対する考え方が変わったそうです。「命をいただいている」と実感して、好き嫌いがなくなった、食べ残すこともなくなった。

私も命をいただきました。房から採って、丸々がぶりと口に入れれば、プシューとジュースが口いっぱいに。そして噛むほどに甘い。ひとつ食べただけで、今日の健康を保証されたような気持ちになります。ホイホイと摘んで、合計4キロ。現地価格で分けていただきました。

こういう農家さんの話を伺い収穫を体験する、現地に行かなくてもオンラインで深く知り、品物を送っていただく。こういうトリップがうれしい時代です。観光旅行ではなく、人の考え、生き方に触れ、その人の技術や知識を学ぶ時間。今回は猪とミニトマトでしたが、いろいろな人を訪ねるツーリズムが企画できそうです。

次回はこの美しいトマトの房や、力強い葉を使って、コサージュづくりなどしてみたいなあ~。

話の進行とオンライン配信のお稽古もさせていただき、山﨑さんありがとうございました。