ホースシューズ

ゆとりある記

専用の馬蹄(ホースシュー)を杭に向けて投げる、輪投げに似たゲームです。東京都立川市「国立昭和記念公園」の大会にうかがいました。1キロの重い馬蹄を投げるだけ、なかなかこれが難しい。でも、実に楽しい!「普通、スポーツは人間が頑張ってスポーツを追いかけて競うものですが、我々はいつでも誰でもできる、スポーツの方が人に近づいてくる世界を目指しています」こんなお話を伺いました。

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古代ギリシャで馬の蹄鉄を投げていた競技がやがて、アメリカに伝わり、兵士やカウボーイも楽しんできたゲームとか。日本では珍しいですが、アメリカではホワイトハウスにもコートがあるほどで、競技人口は3000万人と言われるそうです。その専用コートが、国立昭和記念公園の一角にあるのでした。

うかがうと樹々の中で、既にゲームは決勝に近づいていました。ルールは簡単、ホースシューを各人2回ずつ投げて、杭にかかれば「リンガー」と言って3点、杭から15センチ以内なら1点。これを繰り返して点数を競います。馬でも繋ぎそうな木製の柵に囲まれて、なんだか牧場風のコートですね。

「これ、本当に馬がつけるんですか?」「まさか~~~~(笑)」なんて会話。そりゃそうですね、こんな蹄鉄をつけるなんて巨大な馬になってしまう。2つ持つとずっしり、腕が痩せそうです。

ご連絡をいただいた大阪の「NPOフレンドリー情報センター」の吉田正信さん。1990年アトランタで行われた世界ホースシューズ大会に参加、その後、日本での普及に尽力されてきました。1992年に日本ホースシューズ協会が設立され、その後、各地で大会が開かれています。私もかつて、2006年岩手県遠野で行われた大会を見学した記憶があります。

杭の周りは砂になっていて、投げられた重いホースシューはドスッと落ちます。杭に触るとカーンといい音がします。なかなかこの砂の部分までうまく届かない。

さて、休憩時間に「野口さん、やってみれば?」ということになりました。吉田さんの奥様が、丁寧に持ち方から指導してくださいます。「こう持って、力を入れずに素直にふ~っと手を離せばいいんです」とのことなのですが、既に握っている手に汗をかいてしまう私。

投げました~~~。とどきません。投げました~~~~。少し砂のところに近づきました。「後ろから筋はいいよ」なって声がかかります。丸い輪でないし、持ちにくいし、重いし、、、、なのですが、輪投げなんかよりもドスッという重量感がいい。なかなか面白くなってきます。

遊びに来た私に、いろいろな方が次々と少しずつ説明をしてくれます。その中で一番印象深かったお話が、冒頭の言葉。「人がスポーツを追いかけるのではなく、スポーツの方が人に近づいてくる」そんなスポーツがこのホースシューズも含む「ニュースポーツ」というもの、記録や戦いにこだわらないスポーツなのだそうです。

確かに、「惜しい!」「やった!」とか「すごい、リンガーだ!」なんて歓声はあがるのですが、必死に戦っている雰囲気はみじんもありません。なんだか村祭りのようなのどか雰囲気が漂うコートです。

争うばかりのギスギスした世の中にさらにコロナ禍が加わって、ストレスの塊になっている人たちに、こういうスポーツは大事だなあと思いました。スローライフスポーツとでも言いましょうか。