大人の遊び場

ゆとりある記

まちづくりでは、よく「集まれる拠点がほしい」ということになります。でも都市部で場を持つのはお金との戦い。先日訪ねた雲仙市の「竹添ハウス」は、‘大人の遊び場’をキャッチフレーズに、田の中の空き家をごく小額で借り、みんなで改装し、地元野菜のピザを焼く石窯まで整備しました。会合やイベントなどに、田舎の強みを活かして、真面目な遊び場として機能しています。

千々石(ちぢわ)という地区に仙台からIターンでやってきた松本由利さんが、「TEAM GEAR」(チームギア)という名の地域おこしグループをつくり、その活動拠点としてもとお医者さんがいた家を整備し「竹添ハウス」としました。竹添さんというお医者さんだったのでこの名があります。私のブログでは何度か登場している場所です。

なのですが、先日久しぶりに行くと、また、つくずく「いいなあ」と思ったわけです。庭には草やらシソやらが茂り(広くて手が回らない)、門に鍵がかかっているわけでもなく、猫はのんきに遊び歩き、みんなで造ったピザ窯は「今日はお休み~」とトロンとしている。ガツガツ感がなくゆるいゆるい空間です。

8~9部屋あるでしょうか、まだ使っていないスペースも。人がいない日は全部屋を猫1匹が使用という贅沢さ。私が行った日は、毎月行われる「まんぷく友の会」の日。19時くらいからポツリポツリと人が集まってきました。何かしらの食べ物を持って。満腹の名はついていますが、山ほど食べ物を用意するわけではありません。

自分がいつも食べるものを食べる分だけ持ち寄る。それを少しずつ分ければ、余らずにいろいろ食べられてちょうど良い量になります。誰でも参加できるのではなく、そこはメンバーはちゃんとセレクトされています。だからいい会話が膨らんでいきます。

この日私が持ち込んだのは、近所の店にあったカマスの干物(100円という安さ)と、長崎県では当たり前に使われるカラフルなチャンポンかまぼこ。これをつまみにビールです。松本さんが持ち込んだ炊き込みご飯をいただきながら。私のように泊まる人以外は皆、車なのでノンアルコールでした。大真面目な話題から大笑いの話題まで、話は尽きずに23時。ここでお開き。

これを都市部でやったらどうなるのか?まずは家賃が数十万。それを払うために庭を整備し、窯フル回転で商売にするでしょう。持ち込み禁止で一人5000円くらいの晩餐にしないと。悪い大人も受け入れて、悪い遊びもしなくては儲からない。そうなると会話はいつも「経営」の話。「夢」は語らずじまいで結局、資金難で拠点は閉鎖になります。

人口のとことん少ない千々石だから、もともと店なんて無理、ということもあるかも知れませんが、この「竹添ハウス」のゆるさには大人を感じます。「そんなにあせったり、力まなくても、この程度でいいじゃない」とみんながなんとなく思っている、そんな人たちが使う場でゆっくり何かが動いています。

「この間は近くの子供たちが集まって、土地のおばあちゃんから地元の料理の作り方を教えてもらうワークショップやったの。子供がおもしろがったけど、お母さんたちもおもしろがって。学校と違う付き合いや繋がりだからね」と松本さん。広い台所とたくさんの食器、地元の採れたれ野菜、湧水、暖炉も窯もある。子供も大人もののびのびでしょう。今度その催しに参加したくなりました。

大きな家に一人泊まった夜は、猫のタケゾーが私を守ってくれます。朝、座敷から縁側越しに見える田んぼとその向こうの海。大人でいることは大変ですが「優雅だなあ」とも思ったわけです。