96歳で
小川ゆきよさんという方の写真展「笑顔」をみました。実際に笑顔の人物写真は少なく、抽象的な作品も。視点がしなやかで瑞々しく、96歳という年齢を感じさせません。お知り合いに作品の説明をされている小柄なご本人の姿は、凛々しくもあります。きっと写真を撮っているときの彼女が、いつも笑顔なのでしょう。私は96歳で何を伝え発信できるのか、突き付けられました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
場所は汐留の共同通信のビルです。こんな近代的な空間で96歳の方が?私も含め、新聞記事を見てきた方が多いかと思います。
いらした方に立ちっぱなしでずっと説明をする小川さん。隠し撮りみたいで失礼なのですが、ご挨拶も出来ないほど熱心に語っておいでです。
撮っている場所は、原宿や浅草や都会ばかり。そうしたなかにカメラを下げて出かけるだけでも大変かと思います。そして、その作品のお洒落なこと。力強いこと。
プロフィールでは70歳半ばから写真を始めたとか。私の母が同年配ですが、全く生き方が違います。どんなきっかけで、どんな努力があったのでしょうか。
一枚の写真から素敵な物語が出来そうな。音楽が聞こえてきそうな作品が並びます。この美意識が素晴らしい。
ちょうど一階ロビーには、報道の歴史展のような常設展がありました。なんと、伝書鳩についての展示があります。1947年の国体の開会式の写真フィルムを鳩が初めて運んだとか。そして1959年に伝書鳩はその役目を終えたとか。マッカーサーの来日、三島由紀夫の事件、昭和の東京オリンピック、浅間山荘事件。1926年生まれの小川さんは、こんな歴史をすべてご存知なのでしょう。
仕事をし、子育てをし、そして今、90歳代でこんなにお洒落な写真を撮る。私にできるかしら・・・。ただ長生きしても意味がないといつも思うのですが、表現し発信することまでできるだろうか?と自問します。さて、帰ろうとしたとき、小川さんは、まだまだ説明をされている、語り続けているのでした。