梅ジャム

ちょっとしたこと

実家の梅を採りに行きました。放りっぱなしの樹なので小さいし傷だらけです。私が脚立に乗っていると、病と闘う姉がフラフラきて手伝います。初めて姉妹で梅を収穫、そしてこれが最後になるだろうことは二人ともわかっています。でも、なんだかんだ収穫は楽しいもの、笑い声がでました。その様子を高齢の母が、家から窓越しに見守ります。張り切ってジャムに煮ました。

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ぼさぼさの梅の樹。大きな実のなる樹と、小さな方と。いずれも野放し状態です。でも、ぽつぽつと実をつけてくれていました。4~5年前までは、母と姉は梅を本気で収穫し、梅酒、ジャム、シロップに。私のところにも完成品が届いていたのです。いつしか母は97歳になり、室内で歩くのがやっと。姉は2年半前に病が見つかり、闘病中。さんざんいろいろな治療を行って、いま、緩和治療の段階となっています。

「めまいがするんだから家の中にいれば」と言っても、出てくる姉です。ひとつ、また二つと、手を伸ばしての収穫がうれしいのか、「ほんとにわたしたちは食いしん坊」「食べたいための意地だね」なんて冗談を飛ばします。「あっちにもあるよ」「届かない~~」「お腹が邪魔」「智子は太りすぎ」「もういいにしようか」「あと10個」なんて様子を、母が覗いて微笑んでいました。

千葉からリュックに背負って新宿・四ツ谷まで梅を運び、水に漬けます。まだ青いのが多く、本当は収穫はもっと後の方が良かったのですが、私の予定が合いません。ま、よしとしましょう。

「へたをとるには竹串がいいからね」と母がわざわざ竹串を3本持たせてくれました。私に時間があれば、一緒に作業もできたでしょうが・・・。母と姉からの忠告を思い出しながら一人で梅仕事です。「へたの周りの汚れも丁寧にとるのよ」「水には2~3時間漬けないと」「グラニュー糖がいいよ」「ゆでこぼすこと。3回はね」「あくをとってね」

ちゃんとやっているのに、「どう?」と電話がかかってきたり、ラインがきたり。自分でできなくなった女たちは、遠くでの梅仕事の様子が気になるようです。種をとるのは面倒なので、種入りジャムですが、母と姉が煮たものと同じ味に仕上がりました。

色は悪いですが、いい味です。これをもって、またお見舞いに行きましょう。舐めると甘酸っぱくて、なんだかホロホロと涙が出ました。