府中で食べたもの

美味しい話題

どこかに出かけると、その思い出で一番濃く残るのは食べ物。私が食いしん坊だからでしょう。今回の広島県府中市では、府中味噌入りのアイス、山帰来の葉を使った柏餅、奈良漬けとおむすび、備後府中焼きというお好み焼き。お土産に買った田楽みそ、アスパラ、鶏の佃煮も印象深い味でした。でも実は、それを作った方、一緒に食べた人々の顔も美味しさのひとつ、といつも思います。

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このブログで連続、府中の話で恐縮ですが、書いておかないと次にいけない性分なのでお許しください。府中の街なかには「府中味噌」と胸を張る味噌蔵が3軒もあります。それぞれに趣があり、こだわりがある。本当はすべて回りたかったのですが、一軒だけサッとよらせていただきました。

ここの若奥さんがにこやかに迎えてくれます。昔々の引き出しや棚が健在。発酵商品の店という感じです。ここに容器持参で行けば、量り売りしてくれるとのこと。有機JAS認定の有機材料で作る玄米味噌もある。「マクロビオテックの方々が通販で買ってくださいます」とにっこり。

古いばかりではない、海外にはこのような容器で味噌ディップとして売っている。新しい味噌の可能性を感じました。有機白みそを、今度は量り売りで買いに来たいものです。

地元の人に愛される、「東屋」さんのアイス。その味噌味をここで買いました。奥さんとおしゃべりの間にどんどん溶けましたが、ぱくりと一口で食べると後味に味噌の味が。ひなびた味のアイスキャンディーでした。

府中市上下町矢野でそれはそれは興味深い歴史のお話を伺ったのですが、その終わりのころに講師の携帯が鳴る。「話はもうやめて早く来いって」と講師さんは苦笑い。どうやら待っている人があるらしい。急いで畑の向こうのお宅に伺うと、女性陣が「おやつ」をご用意して待っておいででした。

地元のお米のおむすびと、手作りの奈良漬け、味噌漬けです。暑い日に、こういうセットはたまらなくおいしい。しかも畑の中でほおばる。本当はビールなども欲しくなる。今回は車で移動でしたが、ぶらぶらと歴史の径をたどりながら、あちこちのお家の縁側でこんなおもてなしを受けたくなります。

さらに出てきたのがこれ。柏餅です。東京の柏餅と表情が違います。葉っぱが柏ではなく、山帰来、サルトリイバラとも言いますが、西の方ではこのハッパをよく使いますね。

自分たちが作ったお米を粉に引き、葉っぱを採ってきて包んで蒸して。この手間を考えたら、、、大変なおもてなしです。ぱくりと食べると優しい甘さ、この柏餅を作る体験もしたくなりました。ここで半一は遊べます。学べます。

翌日立ち寄った府中市井永の「法界山直販センター」。小さな施設ですが、ここでこれからいろいろなことが始まるようでした。ジンジャーシロップ作り体験は既に試行済み。

次なるは、特産のアスパラをとことん知る「アスパラスクール」とか。あれ、まだ時間が早いのか?アスパラがない。いえいえ季節的に一番とれるときではないのです。それでも朝取りのものをわしづかみにして買い求めました。安い安い!

いつもアスパラの芽だけとお付き合いしていると、アスパラの全身など見たことがありません。親と呼ばれるふさふさ繁る樹の部分は、夏に涼しい観葉植物のようです。東京のベランダに植えてみたくなりました。たとえ芽が一本の収穫でも、このふさふさだけで楽しめる。育てる毎日が府中市とのお付き合いです。

急いで買ってきたのでアスパラがきちんと包装されていない、と女性たちが気遣ってくれます。「これなら新幹線に乗って帰っても大丈夫」と丁寧に包んでくださいました。

帰る間際に寄ったのが府中街なかの「恋しき」という場所。明治の初めにできた料亭旅館です。ここでなんと、お好み焼きの出前を取っていただきました。

府中のお好み焼きは、広島ですから当然ながらおそばが入ります。ただ、ふつうの広島焼きと違うのはもやしが入らない。そして、バラ肉は使わずひき肉が入る。そしてそのひき肉から出る脂で表面がバリっと焼けている、独特のものでした。これを「備後府中焼き」と言います。街なかだけで40件もの府中焼きの店があるそうです。しかもこうして出前も可能。

この風流な料亭空間で、私も含め視察の面々と市役所の方々が黙々とお好み焼きを食べる。実に不思議な光景なのですが、ここでは当たり前のことらしい。

「昼休みにも、出前とりますよ。だから市役所がソースの香りになる」と自慢げに語る行政マン。府中焼きをほおばる横顔はなかなか素敵なのでした。