『君の名は。』階段

ちょっとしたこと

事務所の近所にある小さな神社。その階段が、アニメ映画『君の名は。』の名場面に出てくるということを知ったのは、去年のことです。意識してみていると、日本の若者はもちろんのこと、外国からの観光客と見受けられる人たちが、いつも階段周りにたむろしています。初詣に出かけても、やはり!世界から人が訪ねる聖地ならば、先ず、この映画を観なくては、と思う、新年の私です。

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私は四ツ谷に住んでいます。正確には、住まいが丸ノ内線四ツ谷三丁目駅近く、JR四ツ谷駅近くのシェアオフィスに事務所があります。四ツ谷が生活圏。四ツ谷駅前のスーパーで買い物をし、四ツ谷駅で人と待ち合わせをし、駅近くの眼医者や眼鏡屋さんに行き、駅前で宝くじを買い、駅近くの土手でお花見をし、駅近くの鯛焼き屋で並んで熱々の鯛焼きも買います。一昨年のオリンピックの時、ブルーインパルスが空に描いた五輪を眺めたのも四ツ谷駅でした。そして、近くの須賀神社には何かというとお参りに行きます。

事務所から早足で歩いて5~6分なので、昼食後の散歩がてらほぼ毎日行く神社です。急階段の上り下りが結構いい運動になるのと、財布にたまった小銭をお賽銭にして、いろいろ山ほど欲深くお願いするのにちょうどよい神社。

コロナ禍のここ2~3年は、ひっそりしていたのですが、観光が復活し、インバウンドも再来してから、にわかに来訪者が増えています。新宿通りからこの須賀神社へ向かう道に、やたら若い人たちがカメラを持ったり、スマホを掲げたりしてウロウロしているのです。

普通に歩いている私のようなおばさんは、撮影にちょっと邪魔のようで、いなくなるのを待っている雰囲気がひしひしと感じられます。でも、みんな割合おとなしい感じの若者たち。なんだか景色や階段を眺めながら、しみじみしているのです。

そしてこの度、いったいどんな風にアニメに出てくるのか、しっかと確かめるために、ようやくこのお正月休みの時間にアニメ『君の名は。』を観ました。するとなんと、びっくり、神社以前に、四ツ谷駅、駅前のビルの看板、駅前の道など、いつもの風景がそのままそっくり出てきます。新宿の高層ビルや都庁や新宿御苑の緑も。もしかしたら、私まで描かれているのでは?とさえ思えてきます。

そして、ラストの名場面、主人公たちがすれ違いそうになる階段が、須賀神社のこの赤い手すりの階段です。「私が昼休みにいつも上り下りしているところだ~!」

上ったところにはいつもこのように若者がウロウロ。この名場面と同じ位置に立ち、同じように振り向いて写真を撮ろうとしています。割合的には男の子が多い。しかも、東洋系の外国人が多い。たま~に、女子二人連れや、カップルも。先日は日本人の男の子たちへ、外国からの男の子たちが「キ・ミ・ノ・ナ・ワ?」と話しかけ、日本人の子たちが「イエス、イエス」そして「セイム、セイム」と。ま、つまり、同じだよ、『君の名は。』の聖地に撮影に来たんだよ、という会話なのでしょう。そして、「どうぞお先に」と日本の男の子たちが身振り。「サンキュー」と外国の男の子たち。ちょっとした国際交流ですね。

写真を撮ったとならば、早速、SNSに投稿しているようです。そして、ベンチに座って感慨深げにしている。外国からわざわざ訪ねて来たのなら、感動し、いい加減長く滞在したくなるの、わかります。私にしてみれば、この階段の下、まっすぐに伸びる道の右が事務所なのでいつもお弁当を持って歩く道、左がコロナのワクチンを打ったり、血圧の薬を処方いただくかかりつけ医なので普段から歩くエリアなのですが・・・。

 

 

神社もこのような絵馬を売り、お土産に買っている子もあれば、ちゃんとメッセージを添えて吊るす子もいる。最近は、この絵馬に書かれた一文を読むのが、私の散歩の楽しみになってきました。4ケ国語で印刷されたおみくじも皆さん楽しんでいます。

思いがけず、若い方の世界に仲間入りした気分です。これがタダの神社で、ふつうのお参りや散歩だとしたら、私はとうの昔に飽きてしまっていたでしょう。「今日はどんな人たちが、どんな風にいるのかしら?」という覗き見的な気持ちで、まるで自分の庭のような、自分の階段のような、少々自慢気分で上り、ヒューマンウォッチングしているのです。

 

息を弾ませて上ったとしても、「君の名は?」と振り向いてくれる人はいませんが、今年もこの階段にお世話になって、足腰を鍛えようではありませんか!ヨイショ、ヨイショ。