磨きましょう!

お仕事で

先日、十津川村の役場で会合がありました。地元の良いものに気づき、みんなでアイデアを出して磨いていこう、新しいものも考えようという集まりです。正式名称は「特産品と人材の開発&ブラッシュアップ事業」、村が「ふるさと財団」というところの助成を受けて始めた動き。私は外部専門家として関わりますが、アドバイスというより、こちらが磨かれる、勉強の場になりました。

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十津川村とはもう長いお付き合いです。自分の仕事で、NPOの活動のなかで、もう10年近くになるでしょうか。その時その時の課題を乗り越えながら、ずいぶん村も変わってきたと思います。でも、日本一大きな面積の村であり、近鉄大和八木駅で電車をおりたら、あとはずっと4時間ぐらいはバスに乗り続ける、という地の利は変わりません。

険しい山だらけで、平地はほとんどなく、大雨の災害の後も未だそのまま。なおかつ、大雨が降るたびに、がけ崩れがあって、車が通れなくなったり、片側通行になったり。ちょっとした買い物も、近くの街まで車を飛ばさないとダメ、ガソリンスタンドもどんどんなくなって。人口ももはや2,815人になってしまいました。

でもこの村は、温泉が豊かで、全国に先駆けて、「源泉かけ流し宣言」をしたところ。民宿に泊まっても、水増しナシの源泉に、何度も何度もゆっくり浸かれるのです。(相当熱いので、水を入れて冷ましますが・・・)

不便なところですが、だからこその抜群の景色と、ひなびた暮らしが今もあり、朝、学校に行く子どもたちの声を湯上りに聞いていると、心も癒され元気になってくるのが分かります。こういうところは、変に観光化されずにこのままで、と思うのですが、たまに来る方はそうでも暮らしている人たちはそれなりに大変。お金だっているわけだし、働き口も探さなくては、各地の山村と同じ悩みを抱えています。

「こういう人口の少ない村を応援したい」と訪れた方々はおっしゃるのですが、では、どうやって応援するの?といつも思うわけです。即ふるさと納税、となりますが、ほかになにか、具体的な応援をしないと・・・。都会人のただの無責任な言葉でしかありません。で、勉強会が始まりました。正式名称はかなり固いですが、読んでそのままの内容です。特産品開発とか、逸品づくりは、かつて私が各地で取り組んできたことですが、今回は「物」だけではない、「人」そしてその先には、「体験型観光」もと、ハードからソフトまで開発していこうという欲張りなもくろみです。

とはいえ、まずは「物」からです。自分の作っているものや、いいなあと思うものをもってきて~~とおふれを出すと、いろいろなものと一緒に9人の村民が集まりました。東京23区と同じ広さですから、役場に来てください、と言っても車をとばして1時間くらいかけてという方もあります。人数だって、この位が集まれば大したものです。

もの紹介と自己紹介がたっぷりありました。温泉を練り込んだパンやケーキを毎日焼く人。山の麓で鶏をていねいに育てて高級卵をとっているいる人。山でできる日本ミツバチの蜜を、素敵なパッケージで包もうと考えている人。豊富な森林からアロマオイルを抽出して、キャンドルにしようとしている人。花びらで染物を試みす人。物も人も、お互い、知っているようで知らない。そんな出会いの場になりました。

せっかくだからこの集まりに呼びやすい名前も付けよう。つまり、これはネーミングという作業です。わかりやすい、一回で覚えられる、意味のある、「今日、○○に行ってきたよ」と家族にサッといえる名前、、、。いろいろ例が上がってきました。

人気投票をしてだんだん絞られて、「暮らし」「みがく」などというキイワードが人気です。そう、ここは、物だけでなく、自然、人、暮らしが一体となってその魅力が「物」に込められている感じなのですから。ただの品物開発とは違うわけです。

「え?こんなものが村にあったんだ」「え?こんな人が居たんだ」まだそんな段階ですが、皆の中に「磨きましょう!」という気持ちが湧いてきたことは確かです。

特産

ただ、急にECサイトなど作ったところで物は売れないことは皆が承知です。それに年中同じものを多量に作る力は皆にありません。そこをどうしていくのか?考えていかなくては。広い畑があって、豊富なの農産物があるならそれを活かして、などということもありますが、ここは違う。険しい山の中の清らかな小さな暮らし、それが産物なのですから。

さらに時代は多様性や、エシカル消費なども念頭に置かねば。そもそも私たちは物に囲まれていて、本当に欲しいものなどないのでは?とも思えてきます。

なので「十津川村を好き」と思ってくれる人を増やして、その人たちが、結果、物まで手を出す、という仕組みを考えていかなくては。通りがかりの人がパッと買うような環境はないのですから。ま、こういうことをしていくうちに、皆がいろんな発想をできるようになり、今あるものを磨き、新しいものやことを考えられるようになれば万歳と、気長に思っております。ご期待ください。