アルテピアッツァ美唄
アルテピアッツァはイタリア語で芸術広場の意味、北海道美唄市の彫刻美術館です。
廃校となった小学校を活用し、美唄出身の彫刻家・安田 侃(かん)氏の作品約40点を常設展示しています。
雪のなかにそびえる巨大彫刻、古い校舎に置かれた真っ白なツルリとした大理石の作品。
その形や感触が、眠っていた私の美意識を呼び覚ましたようで、帰る頃には「美」に敏感になっていました。
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かつて炭鉱町として栄えた美唄には、約10万人もの人が暮らしたことがあるそうです。
1950年に開校した栄小学校は最盛期には1200人の児童が学んだとか、閉山とともにやがて1981年には閉校しました。
その校舎と体育館がギャラリーになっています。
どうやってこの大きな作品を運んだんだろう?という大作が、芝生のあちこちに、森の中に立っています。
今回は雪が深くて、森の奥に入るのは諦めました。
私のような年代には懐かしい限りの校舎です。
こういう教室で、木の机椅子で学びました。雑巾がけもしたっけ。
古い木の床と、大理石作品がピタリと似合います。
触ってみると、ピタリと手が吸い付くような滑らかさ。石でしょうか?
石なのに、温かい。そう感じるのはなぜ?
午後の陽がさすと、作品に新しい表情が出ます。
影が伸びて、動いて、何か語っているみたい。
いいえ、何か唄っているみたい。
もとの体育館にも作品が。
なんとなく、まだゴムのボールや、体操マットの匂いが残っているような空間。
いくつかの作品がお互いに力を発し、そこにいる人までを作品にしてしまう。
そんなふうに見えてきました。
これは?
作品ではありません。校舎の階段の手すりです。
青銅の作品のようです。
お借りした長靴に付いた雪。
これまた美しい。
少し解けると、表情が変わる。
ずっと眺めていたくなる。
葉っぱもきれい。
こんな一枚が、こんな面白い形だったんだ。
雪の上で、清らかになっていくようです。
私も雪の上で、寒ざらしになったみたいに、心のアクが抜けていきます。
わあ~、君もアートだね。
きれいだよ。
生きてるね。
体験工房に入ると、石を削るノミがずらり。
これで私も何か作りたくなりました。
大理石を削って、磨いて、丸く丸くしている女性がいました。
聞けば、東京からわざわざもう数回通っているとか。
駅前のビジネスホテルに泊まって、有給休暇を使って1週間。自分自身に向き合っているようです。
私たちがドタバタと視察している間も、女性一人で屋外展示をていねいに鑑賞している人が居ます。
ふと見ると寄せ書きに、「心の充電中」の言葉が。
さっきの方が書いたのでしょうか?いえいえ少し前のようです。
同じような人たちが、静かにじんわりと訪れるそんな公園なんですね。
地元の方にうかがうと、「わがまちの自慢はアルテ」と皆さんがおっしゃいます。
一方、「敷居が高くって」「好きに遊べない」「市の税金がかかるばかり」などの意見も。
「地元住民は民度が低いから芸術なんてわからないから」とも。
いろんな声が聞こえます。
そりゃ私も、ここにある「幼稚園」はぜひ存続させてほしいし、入場料をとってもっと自立すべき、地域とともになれる施設に、市民が「美」にもっと敏感になろう、などなど言いたいことはありますが。
ふと見ると、空は青く、雪は白く。
何をつべこべ言うのやら、、、、と。
空と雪と同じ顔をして、作品は在ったのでした。
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