ネギ坊主に教えられ
久しぶりにネギ坊主の畑を見ました。ネギといっても玉ネギ畑、種を採るために白いコロコロ丸い坊主頭が整列です。
綺麗でかわいい農の景色、地元の人にはなんでもない風景が私には感激でした。
ネギの茎は固く根元の玉ネギからそびえています、アップで見るネギ坊主の花は星のよう。後ろの小屋では静かに玉ネギが乾いています。
和歌山県紀の川市の畑にいた1時間半、たくさんのことを観察し学びました。
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確かこの光景は淡路島でも見ましたっけ・・・。産地ならどこでもそうなのかもしれませんね、いま、紀の川市の玉ネギ小屋が鈴なりです。
ぎっしりとずっしりと。玉ネギの収穫が終わると、玉ネギ畑は田んぼに代わり、田植えが始まるのでした。
丸々と太った玉ネギを抜いて運んで縛って吊るす、なかなかの重労働。
「玉ネギは大変だから、だんだんやる人が少なくなったね」と、土地のひとから聞きました。
しかしながら、よそ者にはこの小屋が珍しくてたまらない、観察したくなります。
小屋に首を突っ込むと、何重にも何段にも玉ネギが下がっています。
「なるほどこうして丸太を組んでいるのか~~」お隣には、鉄骨の近代的な玉ネギ小屋も並んでいます。
サーッと風が吹き抜けます。こうして玉ネギたちは静かに静かに乾いていくのでしょう。
ところどころに、玉ネギを収穫せずに、種を採るためにネギ坊主を育てている畑がありました。これが本当に美しい。
独得の白みがかった薄緑色の畑。沢山の人の整列にも見えます。こんな景色が何よりうれしい。知り合いに頼んで、ここで車から降ろしてもらいました。
車から降りてびっくり!こんなにかわいい影法師がお出迎えです。
ネギ坊主の歌の音符にもみえますね♪ ポンポンポンと、かわいいまんまる影が道に遊んでいました。
近くで見ると、ネギ坊主の身体、茎の方は、思った以上に頑丈で固い。とても食べられるようなものではなく、木のような、物干しざおのような印象です。
長いもので1メートル以上、これならかくれんぼもできちゃいます。
風で揺れると、お互いが触ってボーンボーンと緩い音が鳴る。録音したくなりました。
その立派な茎の下には、玉ネギがすっかり痩せて、それでもその伸びる茎を支えています。ここから養分をしっかりあげて花を咲かせ種を作る。
自分は痩せながら子どもを育てる、親の姿に見えてきます。
栄養をもらい、花はまんまるく咲いていました。白いマリモのようですね。
誰が教えたわけでもないのに、自然ってすごい!小さな花がそろって丸く形作って。もうすぐここに、黒光りする種が実るはずです。
ふと気が付くと、頭の上でヒバリが鳴いています。ピッピラパ ピッピラパ♪
空中でとどまりながら、さえずるさえずる。ああ、そうか、このネギ坊主畑のどこかに巣があるのでしょう。とんでもない侵入者に、ヒバリはあわてたのに違いありません。
我が家の玄関に育った、ツバメの雛の様子を思い出しました。「ごめんごめん、もう少し写真を撮ったらいなくなるからね~」
私はヒバリに遠慮しているのですが、同行の家人はネギ坊主の美しさに夢中。
夕方のいい光線の中のネギ坊主から、離れそうもありません。
あらあら、私の近くにミツバチの巣も置かれていました。さっきから、ネギ坊主にブンブン飛んでいたのは、日本ミツバチだったのです。今度は蜂を眺めていましょうか。
玉ネギ畑には、私の知らない時間が流れていました。静かに乾いていく玉ネギたち、ぐんぐん伸びて坊主を実らす太い茎、その下の親、坊主が遊ぶ楽しい影、ヒバリの声、蜂の動き。
東京の時間とは違う、ネギ臭くも美しく学んだ午後のひとときでした。
「今回の紀の川市、どうだった?」と聞かれたら、わが夫婦は「玉ネギ畑が最高だった」と必ず答えるでしょう!
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