母の学び、母の教え。

ちょっとしたこと

施設に入った100歳の母、寝たきりですが頭は元気。自宅にいた時より日々多くの人に会い、社会が広がったようです。「ここのスタッフは誇りをもってオムツ替えしてるよ」「スタッフの男の子、髪を自分で染めるんだって」「ボケてる人を観察すると、もとどんな仕事だったかわかる」「何でも、ありがとうと言うのが大事だね」発見や学びを、毎週通う私に報告してくれます。母の学びは、そのまま母から私への教えでもあります。

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母のことはここで何度も書いてきていますが、最近情報です。

以前のブログ⇒ https://noguchi-tomoko.com/post-10166/

私はいままで「母はもう100歳」と思っていたのですが、この2月で正式?に100歳になったのでした。「99歳も100歳も大して変わらないわよ」とは、本人の弁。

昨年夏に、入院していた病院から老人ホームに入り、半年以上が経って、ようやく腹が座ってきたようです。こちらも、施設への訪ね方に慣れてきました。

切り花は、水替えなどできないので勝手に育つ植物を持って行った方が良い。私はサツマイモの芽を持ち込みました。これは週一回で通う私が水替えでも、平気で育ち緑が持つ。第一、イモの端っこですから安上がり。

何か育つものがあると、母はうれしい。だろう、とこちらも勝手に思い。暮れにはヒヤシンスの水栽培を置きました。香りのよい花が育ち咲き終わるまで、本人は楽しんでいました。季節を感じられるように、ミニお雛様や、雛あられや、こうした物も運びます。

そんな中で、母はだんだん“しっかり”してきました。身体が動かないので“されるまま”だったのが、だんだんいろいろ学習し、寝たきりなりの人格形成を積み、やるべきことを発見しているようです。

「オムツ替えは、こっちも最初は気になってね。臭いでしょう、ごめんなさいね、なんてつい言っていたの。そしたらあるスタッフさんが『臭くないウンチなんてないよ』って。悪がる方が良くなかった、とお母さん気づいたの。彼は自分の仕事にほこりをもって、もちろん臭いけど淡々とやっているわけだからね。よけいなこと言っちゃったなと反省したの。それからは、ありがとう、ってだけ言うようにしたのよ」

これは立派な学習です。私がオムツになったときも、そうしようと思いました。

車いすに座っていれば普通にみえますが、寝がえりできない、身体は自分で上半身を起こせない、下半身は全くダメ、左右の肩が外れかかっているので、肘から手先までを少し動かすだけの暮らしです。口は動くので、しゃべる、食べる、が母のできること。母の楽しみでもあります。

なので、食べられる食べられない関係なく、いろいろ運びます。口に含んで出してもいいから、味わえればいいので。我が夫が作った?(混ぜるだけ)ちらし寿司やカレーなども、美味しい美味しい!です。

出来上がったものを口に入れるより、母は自分も料理に参加したい。人が動くのを見ていても参加した気になる、だろう、と思い、先日はとろろ芋の酢の物を目の前で作りました。スライサーを各種運び、すりおろす?棒切り?超千切り?などオーダーを聞き、目の前で甘酢をかける。これで出来上がり。だからこれまた、美味しい美味しい!です。

わずかに動く手で、リハビリを兼ねて、出来ても出来なくても編み物や生け花をしていただいたり・・・。こういう間のボソボソ話がまたおもしろい。

「ここはほとんどの人がボケてるからね、みていると面白いよ。昔、偉い人だったらしい人は、ボケても威張ってるね。あの、徘徊のおじいさんは、もとはきっと何か職人さんだったんだよ、様子で分かる。この前ね、おしぼりを味噌汁に入れた人がいたの、お母さんがスタッフさんに教えてあげたの」などなど、観察が細かい。

「スタッフさんで髪の色がよく変わる男子がいるの。彼は自分で染めるんだって。時々軽くお化粧もしてるの。ほめてあげると喜ぶよ。お母さんそういうの見てるの好きなのよ」

「スタッフさんの中には乱暴な人もいるよ。同じことやっても、丁寧な人もいるし。オムツやお風呂のやり方で、その人の育った環境や、その日の精神状態までわかるもんだよ」

「お母さんは、何でもありがとうって言うの。ぶっきらぼうな人も、ありがとうって言うと笑顔になるよ、大事だね。」

ハイ、私もそうします。

少々おてんばな母は、最近、新技術を習得しました。身体は起こせないし、手も伸ばせないので洗面所は使えません。でも、自分の入歯くらいは洗いたい。そこで、プラスチックの靴ベラを自分の手の代わりにして、上げ下げ式の蛇口を動かす。出た水に、わずかに手が届くと嬉しい。これを自慢そうに私に見せるのでした。「へへへ、工夫次第だね~」と。

「スタッフさんみんなの血液型を聞きだしたのよ。ここはA型がおおいよ」「さっきのスタッフさんは離婚したんだって、バツイチだって」「あのスタッフさんはジムに通ってるの。マッチョだから、お母さんをお姫様抱っこ出来るんだよ。過去に演劇やっていたスタッフさんもいるよ、身体ができてるね」

そろそろ母に、世のなかには“個人情報”ということがあり、やたら踏み込んじゃいけないこと。母の引き出しから「飴やお菓子を持ってきなさい」とスタッフさんに無理やり配ることは、施設的には困ること。などを学習してもらわなくては・・・、と思うこの頃です。顔がよく似ていると言われる母娘です。まあ、お互い、もう少し元気で仲良くしていきましょう。