ある集落のGW

お仕事で

古い空き家を掃除して、むらの四季の写真を飾り、パッチワーク小物を売り、鉄道模型を走らせ、お茶摘み体験も実施。

ぶらりと遊びに来てくれる人たちを、自分たちのできることでもてなそうという、十津川村谷瀬集落の取り組みです。

忙しいゴールデンウィークでしたが、こうして交流おこしをしたその先には、いつか集落に新住民が・・・という期待が込められています。

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谷瀬は生活道として日本一の吊り橋のあるところ。ここでは「ゆっくり」をテーマにむらおこしを進めています。

ここの活動を、奈良女子大学と奈良県立大学の先生・学生さんが応援に入り、昨年は休耕田を田んぼにし、酒米を作り、近くの酒造会社でお酒にするところまでこぎつけました。

純米酒「谷瀬」として売り出したのが4月のこと、このゴールデンウィークにはもはや一升瓶は売り切れ。吊り橋茶屋でもうれしい悲鳴でした。

茶屋限定で、吊り橋の長さから採った「谷瀬297」という小瓶もあります。奈良女子大の学生さんが何本も買い求めていました。

自分たちがお米作りから汗を流したお酒ですものね。友達に配りたいですよね。

さて、この吊り橋茶屋から先に延びる、集落の小道がここのメインストリート「ゆっくり散歩道」と呼ばれています。

ここにある「こやすば」という休憩所で、このゴールデンウィークにちょっとした催しがありました。

茶屋にも宣伝のポスターが。いままで観光客は橋を渡って買い物して帰るだけでしたが、散歩道が出来て歩くようになりました。

休憩所ができてそこで何か?「パッチワーク展」などやっているらしいとならば、ぶらぶら歩いていきましょうと足を進めることになります。

田舎の集落、ただの普通の風景なのですが、のんびり歩くのはいいものです。手作りの水車がゆっくり回り、その先には手作り展望台もあります。

「ゆっくり散歩道」にはトイレや自販機がありません。それならばと、道沿いにある古民家を皆で掃除し、「こやすば」にしました。

「こやすば」とは、山仕事で一休みする場所の事だそうです。このことは以前にもいろいろ書きましたね。

で、掃除して、トイレには立ち寄れるようにしたのですが、実はその先の活用がまだでした。いろいろ酒造り等で忙しく、しばらく「こやすば」は手付けずだったのです。

こういう場合、誰かが「何時から、何を、誰がやるの?」ときつく迫らないと動きません。そういう役回りは私の出番です。

ほぼ毎月ある寄合で「で、どうするの?」とわめいておりました。

ここでは茶屋も集落の人が交代で入ります。ゴールデンウィークです、茶屋当番はそれだけでクタクタです。

そのうえさらに何をやるか?って~~~!?と嘆かれても、せっかく掃除した空き家をそのままではもったいない。

「何とかGWには、“こやすば”起動!」と言い放ち、寄合を終えて東京に戻るときは、誰もできなかったらたくさんある写真をプリンターで出して貼るだけでもいいなあ、私がやるか~?なんて考えていました。

ところが、いよいよGW間近になった寄合に行くと・・・。「対岸の集落にパッチワークの先生が居るのでその作品を飾ったり販売を」

「絵葉書を描くワークショップを」「短時間のマッサージを」
「うちの息子が鉄道模型をやっているので、走らせましょう」など、具体的なプランがどんどん出たのです。

「谷瀬の暮らしを伝える写真展は、学生がやりそうです」と奈良女の先生も。

「それなら“こやすば”で今日何をやっているかわかるような掲示板を私が立てよう」

「トイレに行く人の動きを察知して電気がつくようにしよう」

「縁側に上がる台を間に合わせて作ろう」と、物事はドドドッと動きました。

私が谷瀬に行けたのは、5月7日のこと。GWも後半です。その間に写真展がスタートし、掲示板は立ち、鉄道模型は大人気で飲み物などとても売れたそうです。

この日はパッチワーク展。「こやすば」は素敵な展示場になり、カフェのようでもありました。

いつも寄合に来ているむらの女性たちが、かいがいしく商品を並べています。

茶屋で売っている漬物などとは違う手作り手芸品、アート小物は、女性たちには見ているだけでもわくわくするものでしょう。

なによりよかったのは、来訪者にむらの話をいろいろと語る場ができたこと。

いきなり語りましょう、と構えても、観光客は嫌ですし、集落の人も恥ずかしい。

パッチワークを見ながら、ついついむらの暮らしについて聞く。すると、ここに写真があるけれど、と写真を見ながら深い話が自然にわき出す、という風なことが起きていきます。

パラソルの下では、ちょっとした谷瀬の歴史教室が行われていました。

予定にない「苔玉」の展示もテーブルで。そうなると、「今度この苔玉づくりの教室やろうよ」という話が出てきます。

この翌日は、茶畑で茶摘みをし、釜炒り茶にしたてて持ち帰るという「ゆっくり体験」も同時並行で行われました。

無理無理と思ったけれど、なあんだ、できたじゃない!という実感です。

ならば、これからどんどん「こやすば」を使いましょう。「こやすばスクール」で、昔話をとっぷり聞いてもいい。

ぶらりと寄られた地元のお年寄りから「昔はこの間取りのこの辺りで蚕を飼っていたもんだ」なんて話が出ます。この特色ある建物についての解説など、ぜひ聞きたいところです。

地元のおばあちゃんから草鞋作りを教わりたい、という希望が集落の女性からも出てきました。

お酒を造る集落らしく、杉玉作りもできるでしょう。

画家もおいでです。ここで個展もできそうですね。コンサートなども、夏にしましょうか。

パッチワーク展を仕切った「こやすばガールズ」4人組は、なんとも楽しそうでした。家以外の、自由に使える場があることは可能性を手にしたことになります。

人口減少だから、この過疎のむらに移住してきませんか?などと最初から迫るより、のびやかに地元の暮らしを楽しんでいる姿を、よその方に見てもらうことの方が正解でしょう。

女性たちの女学生のような笑顔を見ていて、私がここに住みたくなりました。

このゴールデンウィークで、谷瀬集落はまたもう一つ、前に進んだように思います。