おひっこし
8年住んだ麻布を離れることにしました。いつも我が家の引っ越しは急に決まりますので、この数日は荷物づくり。というより、物との決別です。都会暮らしはハンドバック一つ捨てるにも大変です。
物だけではありません、世話してきた花壇はどうなるのだろう?大好きなスーパーの朝市にもう来れなくなる。
物以外、関係の訣別もあるんですね。“断捨離”して、また出直しますか・・。
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●写真は冬の「勝手花壇」※後述
実家を出てから、このたびで18回目の引っ越しです。いろいろ事情があるというよりもむしろ引っ越しが好きという部類ですね。
私が好きということに加えて、さらに夫が引っ越し好き。家を持つなどという概念は二人とも全くなく、その時の、自分たちの暮らし方に一番ぴったりの場所や家を決めてきました。
「窓を開けると山が見えて、少し行けば富士山が仰げるところに住みたい」「水の美味しいところに住みたい」「ぶらりと海に歩いて行けるところ」「田舎の空き家を借りて住みたい」「大型犬・シェパードを飼いたい」「畑をやったり、花を咲かせたい」「焼きたてパンが買えるところ」等の私の希望。
ここに、写真をやっている夫の希望が加わります。「暗室用に、昼でも真っ暗にできる部屋がほしい」「写真集のそろっている本屋が近くにあること」「喫茶店が近くにあるといい」「古いネガやパネルが置けるところ」
さらに、というより、このことの方が大きな要因にはなりますが、現実的な理由も。夫の母との同居(かつては)、事務所に近い、家賃は極力安くなど。
掛け算で引っ越し条件は増えていきますが、結局五分の一くらいは我慢して、その時の「ここぞ」というところに暮らしてきました。
私は仕事がら出かけていることが多いので、家さがしは当然夫が主になります。しかも、私は、最終的にはどんなところでも暮らせます。で、夫はぴぴっと来たら決めてしまいます。
最もひどいのは、モンゴルに私が出かけて戻ってくると、家が替わっていて、引っ越しも終わっていたたことがありました。
「今日から、あんたの家はここだよ」と言われて、さすがの私も唖然としました。
この時は「一応、必要そうなものは運んだけど、まだどうしても欲しいものがあったら、あと1週間の間にもとの家からタクシーで運びなさい」というのが指令。
1週間後には、すべてゴミとして処分と決まっている物の中から、私は必死で様々なお宝を救い出したものです。
タカアシガニという数メートルのカニの甲羅。これは魔除けになるとのこと。各地で拾った、面白い形の流木。クリスマス時期になると売り出される、お菓子の入った真っ赤な長靴のコレクション。などなど。
こういうのは夫から見たら、ただのかさばるゴミなのです。この時は大変な思いをしました。
麻布への引っ越しも「六本木ヒルズ入口の本屋に世界の写真集が集まっている。行けば1日中いろんな写真家の作品が勉強できる」というのが理由。その本屋に2分で行ける環境という条件で、決まったのでした。
で、今回は・・・・。
私の仕事は各地ですが、たまたま和歌山県紀の川市へたっぷり通うことになりました。宿に長逗留など嫌なので、現地に家を借りたわけです。
空気のいい、果物の美味しい、田舎でいて交通は便利、駅前で車がなくてもあちこちに行ける、快適な2階家が借りられました。
そうなると東京の住まいはコンパクトでいい。夫が一人で居る、私が戻ったらただ寝られればいいくらい。2地域居住です。
今回は「どんなに狭くてもいいから、電車に乗らずに仕事場に行ける」を条件にしました。
私の個人事務所「ゆとり研究所」は自宅兼ただの連絡先だけです。東京にいるときは皆と仕事をするNPOの事務所にいることが多い、ならば、歩いて行けるところということに。
で、先日、紀の川市から戻ると、もはや引越し屋さんの段ボールが届いていたわけです。
今回、「物」で一番の苦戦は着物です。数年前は毎日着ていたのですから、量がすごい!帯も帯締めも帯揚げもコートも・・・。
紀の川に運ぶ、人にあげる、捨てる、それを丁寧にやればいいのですが~~~時間がない。
一方、「事」にも決別です。こじんまりして使いやすかった図書館。コーヒーを頼めば、どの雑誌も本もソファで自由に読めた本屋さん。ご近所遊びには麻布は最適でしたもの。↓↓
http://noguchi-tomoko.com/modules/yutoriaruki/details.php?blog_id=283&cat_id=4
スーパーのお弁当と缶ビールを持って夕涼みに行った、ヒルズのテラス。行けば必ず何かやっていて楽しかった、ミッドタウンの芝生。桜坂での毎年のお花見散歩。大使館巡りのウォーキング。
いろんな種類の豆菓子のある、老舗の豆屋さん。同じく行列のできる、かりんとう屋さん。4種類のチーズののったピザを蜂蜜で食べる、石窯ピザのお店。大みそかにテレビ中継が必ずある、蕎麦屋。アンコ一杯の鯛焼き屋。16時に行っても席の取れない焼き鳥屋。
20時にはお刺身半額になるスーパー。木曜日は朝9時に卵100円で売るスーパー。朝どりレタスが日曜日にあるスーパー。
「ふふ」っと笑うペットショップのお姉さん。粉をジーンズの腰をたたいて払うかっこいいピザ職人。毎朝元気挨拶の文房具屋のお兄ちゃん。横断歩道で旗を持って立つおじいちゃん。いつまでも不愛想な帽子屋のおばちゃん。
みんな、みんなお別れです。
なかでも一番さみしいのは“勝手花壇”とのお別れ。詳しくはこちらから。
http://noguchi-tomoko.com/modules/yutoriaruki/details.php?blog_id=111&cat_id=4
引っ越してきたときにドクダミが茂り、ゴミ置き場になっていた花壇を勝手に手入れして、ゼラニウムを咲かせてきました。咲き誇る時期には、道を行く人々が写真を撮るほどでした。
今後は誰が面倒を見るのでしょう。またゴミが集まるのでしょうか?胸が痛みます。
最後のご奉公をと思っても手入れができずにいたら、一昨日、
伸び切った雪柳の枝が綺麗に刈られていました。私と同じ想いで、手入れをする人が出現したのかも?!
勝手花壇お手入れ人、後継者現る?!姿は見えねど、どなたかに引き継いで後を譲ったような気分で、少しうれしくなりました。
というわけで、長々とお引越ししますよ、という話題でした。
●写真は秋の「勝手花壇」"