お茶ツーリズムの坂野さん

ちょっとしたこと

先日ふと新聞を見ると、以前私の事務所に居てアシスタントをしてくれていた坂野真帆さんが記事になっていました。静岡で“お茶ツーリズム”のツアーを企画運営、好評だそうです。

地域資源を活かして、手の届く範囲のやり方で、個性ある交流おこしをする姿勢は、昔から貫かれているものです。「立派になったなあ」と感心しながらも、背中を押されたおもいでした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その記事は東京新聞4月30日朝刊の「この人」欄です。(写真)私より10歳下ですから、そうかこんな大人になったんだ、というのが第一印象でした。

年齢だけでなく、本当によくぞここまでこういった仕事を続けたなあ、と感心です。

私が静岡で取材と編集のプロダクションをやり、コンサルタント業務もそろそろ始めたころに真帆さんは現れたのでした。確か知り合いのお友達のということでの紹介でした。

今から、20年前のことです。押しの弱い、声の小さい、すぐ車に酔う人でした。おまけに眠り癖もあり、気候がいいと机でうつらうつら。電話は相手が切るまで切れません、したがって長電話ばかり。

「この業界は無理なのでは」と思っていました。真夏などは、食欲がなくなり、お母さんが作ってくれた、小さなおむすびをようやく食べる程度。いつも食欲全開の私には、「食欲がなくて、いい仕事はできません」とひとこと言いたい存在でした。

私は興奮性なので、いつもワアワア騒いでいますが、真帆さんはボソボソと誰かとしゃべっている、春ののどかな縁側タイプ。私のヒステリックな叫びなどはどこ吹く風で、皆さんとほにょほにょの柔らかな関係を作っていました。

では、本当に弱っぴいかというと、これが真帆さんはトライアスロンなどに出てしまう強人でもありました。水泳が得意なので、そのほかのことにもチャレンジして、よく、腕にマジックでマークを付けたまま、レースのあとの日に焼けた顔で事務所に現れたものです。

そして、お酒も飲むとなると、やたら長く飲める。ぐずぐず何か言いながら、「あら真帆、まだいた?!」みたいな感じ。出張先では後を彼女に任せて、私はさっさと寝てしまったものです。

まあ、こうして書いてみると、実はずいぶん私は彼女に助けられていたのでしょう。

地域づくりなんて、もちろんイケイケの分野は大事ですが、実はほとんどが「無理だよ~、大変だし、できないよ~」の世界です。そんなところのことを、すぐにはイケイケになれない人たちの気持ちを、同じ目線で彼女は受け止めることが出来たのでした。

「ヘルシー東遠まるかじり塾」という仕掛けが印象深いです。もちろんはるか昔の仕事ですが・・。

東の遠州地方、東遠の、広域の行政と地域づくりをやりたい市民たちが一緒になって、その地域を知り、そこの魅力を発見し、何かを仕掛けていこうという塾。

「人づくり」と、今でいう「着地型観光プログラム」を同時にやっていくような仕掛けでした。まあ、とにかく身近なフィールドに出て、いろんな人に会い、いろんなことをやりましたね。

この頃から、茶畑の景観や、お茶作りの文化的な魅力に彼女は目覚めていたように思います。

いい加減して彼女は独立。わたしの事務所が「ゆとり研究所」ですから、彼女にピタリとくる「そふと研究室」という名前をプレゼントしました。

そして、長い時間が過ぎます。その間に、真帆さんは、旅行業の免許も取り、会社組織にして自分が社長に収まり、着々と活動を重ねてきました。

「そふと研究室」のホームページにはこうあります。http://soft-labo.net/

『(株)そふと研究室は、地域の資源を見つけ、育て、活かし、守ることで、地域が力をつけていく“地域づくり”活動をお手伝いしています。

そして、そこで出会った魅力的なコト、モノ、場所などを紹介し、その魅力を生み出している人たちを応援するために、「旅行」というツールを選びました。

(株)そふと研究室の旅行を通して、訪れた地域にふれ、好きになり、応援する気持ちを持っていただけたらうれしいです。』―――と。いいじゃない!

彼女の作るツアーは「リベロツアー」http://soft-labo.net/modules/information/index.php?cid=6
の名で売り出されています。

“頂上を目指さない富士山ツアー”とか、先の“お茶ツーリズム”、例えば茶市場を覗く朝活のツーリズムなどなど、不思議なゆる~い雰囲気のものばかり。今までの観光とは全く違う視点のものばかり。

すこし前に電話した時「う~~~ん?相変わらずもうかりませんよ~~~」と、いつもの可愛い溜息をついていました。

でも、真帆ちゃん、こうして他の人がやれない、効率にあわない、でも楽しいことをちゃんと出来ているんだから偉いよ。女の仕事はこうでなきゃ。

少々先輩の私も、追いかけます。"