6次産業化というけれど

お仕事で

ここ数年、商品開発といえば“六次産業”で、と皆さんが夢中になっています。しかしながら、そうそうすぐに商品開発などはできません。さらに、売るというところまでは・・・。先日、三重県津市にうかがって、その話をしました。

「即、味やパッケージの話になりがちですが、それ以前に考えることたくさんあるのでは?」と。現場の女性たちにわかりやすいガイドラインが必要です。
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津市の「榊原温泉口」という駅に降り立つと、のんびりとした田園風景が広がります。ここに温泉が?と思えるようなところですが、ここのお湯は清少納言が歌にうたったといわれ、美肌の名泉なのだそうです。

ああ、入りたい~~!という気持ちはこらえて会場へ、途中「この近くには紀貫之の墓もあるんです」などとご案内をうけ、ええ?とまた驚きました。

清少納言や紀貫之などの名が出てくる地での、6次産業化を目指す商品開発とは、どんな風になっているのだろうとワクワクしました。

今回の研修は、主催が三重県津農林水産事務所と津地域農業振興協議会、津地域農業改良普及センターのだんどりで私にお声がかかったのです。

会場の津市白山総合文化センターは、中庭もあるおしゃれで大きな立派な施設。こんな施設が東京にあったら利用するのに半年前から申し込み、しかも抽選でということになるでしょう。ある意味、地方の人はこういう部分では恵まれていますね。

「地域資源活用研修会」~訪れる人も、住んでいる人にも魅力ある地域づくり そこならではの売れる6次産品づくりとは~とパンフレットにはあります。

なので、本当は「こうすれば売れる」という話をすべきなのでしょうが、スローライフの話や、ものだけでなくコトも考えて物語を、資源は多様な視点で、みんなで考えよう、というメモで話しました。

私はパッケージデザインなどの専門家ではありません。マーケティングのプロでもなく、料理研究家でもないです。したがって、だからこそ言いたい、ということしか話せません。で、思うことは・・・。

これはどこでもそうですが、6次産業だとなると、それとばかりに「今は、バジルが人気らしい」「ピリ辛の味付けがウケルらしい」「おしゃれなビンが好まれるみたい」「ポップの文字は丸く書くんだって」「インターネット使えばどうにかなるんじゃない?」と、そういうことばかりに走りがちです。

それももちろん大事だけれども、なぜそれを作るのか?とか、そのものが買われたあと、どんな“旅”をするのだろうか?とか、使った人にどんな時間を渡せるのか、などもしっかりつかまえなくてはと思うわけです。

そうでないと、いろいろ作るたびに揺らぎ、お金をかけ、疲れ、やっぱり駄目だとなりがちです。6次化でヘトヘトに。そうやってしょんぼりしてしまうと、結局、農業や漁業、林業はしょんぼりした人達ばかりになってしまう。

そういうお母さんやお父さんの姿を見ていると、子どもたちはせつなく、やっぱり都会に出てお金を稼ごうとなってしまいます。

地域資源を加工し、商品にし、売り、また買っていただく。という流れは、さあ、即、というわけにはいきません。即席にしようとするから、しょんぼりするのです。

なんて講釈を話したわけですが、私の話よりもそのあとの品物の展示・試食・交流会が楽しかった!会場に、菊芋の漬物、あられ、ジャム、お寿司、おはぎ、パスタ、ニンジン酢、在来大豆、ポン菓子などなどがずら~り。

もちろん、結局、「これは美味しい」「少し味が濃い」「あら可愛いシールだね」「色が悪いのが気になって」「いくらで売ろう」「直売所で売れるかしら」などと、即物的な話にはなるのですが・・・。

同じ方向を目指すいくつかのグループが、特に女性のグループが、お互いの活動を知り、開発したものを知り、顔を合わせて、ワイワイ話す、このことが大事だなあとその様子でつくづく思ったわけです。

もちろん主催者の意図も、この“ネットワークづくり”だったのです。この日うまれた成果品は、近くの人たち同士の出会いでした。

そして、もっともっと今後、いろいろな立場の人が一緒に考えて、得意技を活かしていけば、私より少し先輩の女性たちが、何から何まで抱えてやろうとしなくても前に進むはずです。

そのあたりまで踏み込んだ、わかりやすいハンドブックや学びの場がもっと必要な段階ですね。

会場にふらりとやってきていた大学生のお嬢さん、きけば「ポン菓子」を知らないそうです。

「ポン菓子」と売っても、何だかわからない人がいる、そういう人にこそぜひ食べてほしい、と思ったら、どんな言葉で説明すればいいのでしょう?

朝ごはんをはぶきがちな若い人に、「シリアルとして、牛乳をかけてサクサク食べてね」と伝えれば、ポン菓子は朝ごはんに変わります。こういうきっかけが大事なわけです。

6次産業化とは、まず、多様な人の出合い交流から。人の繋がりの6次化を進めましょう。

美味しい素敵なものがたくさんの津市、この機会を活かして皆さん交流を続けましょうね。

美しい山並みや風景、清少納言や紀貫之の存在も、地域資源としての出番がでてくるかもしれません。がんばれ~~~~。